[PF028] 種子植物の特徴に関する誤概念の修正教授法の効果の検証
先行オーガナイザー教授法との比較による検討
Keywords:誤概念, 先行オーガナイザー, 教授法
問 題 と 目 的
学習者は日常の経験から独自に非科学的な誤った概念を形成することがあり,その概念を誤概念という(鈴木,2008)。本研究では「花が咲く植物は種が出来る」という科学的概念において,有竹・蒔田(2008)の誤概念修正に対応した教授法と,一般的な教授法である,学習情報に先立って提示する先行オーガナイザー(Ausubel & Robinson,1969)を用いた教授法を比較し,誤概念に対応した教授法の優位性を検討した。
実 験 1
方法
実験参加者と実験構成 参加者は大学生56名。群別で異なる文章の読解(3分間)後,事後テストを実施した(問題1と問題2の2分×2回)。
文章による群分け 参加者を4群に分けた。枠組み群では植物の分類について説明し,枠組み+位置づけ群ではそれに科学的概念を適切に位置づける文章を加えた (有竹・蒔田(2008)でこの2群を比較した結果,枠組み+位置づけ群の方の成績が良かった)。先行オーガナイザー群では分類枠組みを意識させる文章(動物の分類)を提示した。統制群では無関係な日本茶についての文章(日本茶検定委員会,2008)を提示した。
事後テスト 問題1と2共に植物16項目(種子植物14種類:ヒマワリ,サツマイモ,シクラメン,ハス,ヒヤシンス,ジャガイモ,ホウレンソウ,アサガオ,レモン,イチョウ,クローバ,マツ,ススキ,イネ,胞子で増える植物2種類:ツクシ,ゼンマイ)それぞれに回答を求めた。項目は正答を1点とした16点満点で採点した。問題1は「種子で増える植物」・「胞子で増える植物」・「わからない」,問題2は種が「出来る」・「出来ない」・「わからない」の3択で回答を求めた。事後テストは有竹・蒔田(2008)と一部の表現を変更した以外は同じ問題である。
結 果 と 考 察
項目全体得点について被験者間1要因分散分析した結果,問題1(F(3,52)=0.62, n.s.),問題2 F(3,52)=0.36, n.s.)共に主効果が有意にならなかった。項目の難易度による影響を除外するため,項目をランダム要因として,教授法の違いを被験者内要因とする1要因分散分析の結果,問題1(F(3,45)=1.96, n.s.),問題2(F(3,45)=1.69, n.s.)共に主効果が有意にはならなかった。この理由として,先行オーガナイザーの内容が誤概念修正に効果的でなかったことが示唆された。
実 験 2
目 的
先行オーガナイザーの意味を明確にするために分類枠組みの文章を追加した教授法の効果の検証。
方 法
実験参加者と実験構成 参加者は大学生58名。手続きと事後テストも同様 (文章読解時間は6分間)。
文章による群分け 枠組み群は植物の例,枠組み+先行オーガナイザー群は枠組みについての文章を追加。枠組み+位置づけ群と統制群の内容は実験1と同じ。
結 果 と 考 察
表1に各問題の平均値を表示する。項目全体得点について被験者間1要因分散分析した結果,問題1(F(3,52)=0.62, n.s.),問題2 F(3,52)=0.36, n.s.)共に主効果が有意にならなかった。項目をランダム要因として,教授法の違いを被験者内要因とする1要因分散分析の結果,問題1(F(3,15)=4.24,p<.05),問題2(F(3,15)=9.04,p<.05)共に主効果が見られ,枠組み群,枠組み+位置づけ群,枠組み+先行オーガナイザー群>統制群になった。よって,先行オーガナイザーの説明が参加者の誤概念の修正を支えた可能性が考えられる。
表1 実験2の各問題の平均値(Max=16)
総 合 考 察
実験2で枠組み+位置づけ群,枠組み+先行オーガナイザー群が統制群よりも有意に成績が高かった。植物の分類を意識させる先行オーガナイザーが有竹・蒔田(2008)の教授法とほぼ同等の効果を及ぼすことがみられた。しかし3群で共通の枠組みの記述による影響は考慮すべきである。加えて,本研究では有竹・蒔田(2008)の教授法が先行オーガナイザー教授法と比べて有効かは不明だった。今後の課題に,先行オーガナイザーで科学的概念の何を意識させるかによって修正効果が変化するかを検討していくことが挙げられる。
学習者は日常の経験から独自に非科学的な誤った概念を形成することがあり,その概念を誤概念という(鈴木,2008)。本研究では「花が咲く植物は種が出来る」という科学的概念において,有竹・蒔田(2008)の誤概念修正に対応した教授法と,一般的な教授法である,学習情報に先立って提示する先行オーガナイザー(Ausubel & Robinson,1969)を用いた教授法を比較し,誤概念に対応した教授法の優位性を検討した。
実 験 1
方法
実験参加者と実験構成 参加者は大学生56名。群別で異なる文章の読解(3分間)後,事後テストを実施した(問題1と問題2の2分×2回)。
文章による群分け 参加者を4群に分けた。枠組み群では植物の分類について説明し,枠組み+位置づけ群ではそれに科学的概念を適切に位置づける文章を加えた (有竹・蒔田(2008)でこの2群を比較した結果,枠組み+位置づけ群の方の成績が良かった)。先行オーガナイザー群では分類枠組みを意識させる文章(動物の分類)を提示した。統制群では無関係な日本茶についての文章(日本茶検定委員会,2008)を提示した。
事後テスト 問題1と2共に植物16項目(種子植物14種類:ヒマワリ,サツマイモ,シクラメン,ハス,ヒヤシンス,ジャガイモ,ホウレンソウ,アサガオ,レモン,イチョウ,クローバ,マツ,ススキ,イネ,胞子で増える植物2種類:ツクシ,ゼンマイ)それぞれに回答を求めた。項目は正答を1点とした16点満点で採点した。問題1は「種子で増える植物」・「胞子で増える植物」・「わからない」,問題2は種が「出来る」・「出来ない」・「わからない」の3択で回答を求めた。事後テストは有竹・蒔田(2008)と一部の表現を変更した以外は同じ問題である。
結 果 と 考 察
項目全体得点について被験者間1要因分散分析した結果,問題1(F(3,52)=0.62, n.s.),問題2 F(3,52)=0.36, n.s.)共に主効果が有意にならなかった。項目の難易度による影響を除外するため,項目をランダム要因として,教授法の違いを被験者内要因とする1要因分散分析の結果,問題1(F(3,45)=1.96, n.s.),問題2(F(3,45)=1.69, n.s.)共に主効果が有意にはならなかった。この理由として,先行オーガナイザーの内容が誤概念修正に効果的でなかったことが示唆された。
実 験 2
目 的
先行オーガナイザーの意味を明確にするために分類枠組みの文章を追加した教授法の効果の検証。
方 法
実験参加者と実験構成 参加者は大学生58名。手続きと事後テストも同様 (文章読解時間は6分間)。
文章による群分け 枠組み群は植物の例,枠組み+先行オーガナイザー群は枠組みについての文章を追加。枠組み+位置づけ群と統制群の内容は実験1と同じ。
結 果 と 考 察
表1に各問題の平均値を表示する。項目全体得点について被験者間1要因分散分析した結果,問題1(F(3,52)=0.62, n.s.),問題2 F(3,52)=0.36, n.s.)共に主効果が有意にならなかった。項目をランダム要因として,教授法の違いを被験者内要因とする1要因分散分析の結果,問題1(F(3,15)=4.24,p<.05),問題2(F(3,15)=9.04,p<.05)共に主効果が見られ,枠組み群,枠組み+位置づけ群,枠組み+先行オーガナイザー群>統制群になった。よって,先行オーガナイザーの説明が参加者の誤概念の修正を支えた可能性が考えられる。
表1 実験2の各問題の平均値(Max=16)
総 合 考 察
実験2で枠組み+位置づけ群,枠組み+先行オーガナイザー群が統制群よりも有意に成績が高かった。植物の分類を意識させる先行オーガナイザーが有竹・蒔田(2008)の教授法とほぼ同等の効果を及ぼすことがみられた。しかし3群で共通の枠組みの記述による影響は考慮すべきである。加えて,本研究では有竹・蒔田(2008)の教授法が先行オーガナイザー教授法と比べて有効かは不明だった。今後の課題に,先行オーガナイザーで科学的概念の何を意識させるかによって修正効果が変化するかを検討していくことが挙げられる。