The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 » ポスター発表 PF

ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PF030] 授業形式の違いによる学生の参加と授業評価

埋め込み型スライド授業に焦点を当てて

永井智 (立正大学)

Keywords:授業評価

【問題と目的】
授業実践においては,授業方法の効果や適切性の検討が不可欠である。大学の授業において,プレゼンテーションソフト等によるスライドの使用は,非常に一般的な手法の一つである (太田, 2004)。こうしたスライドを用いた授業の効果については,いくつかの調査報告例も存在するが (阿部, 2004; 福島, 2002; 太田, 2004, 2005),指標やデータの収集範囲が限られており,その知見は十分であるとは言い難い。
そこで本研究では,埋め込み型スライド授業と従来の板書に基づく授業を比較し,学生の参加と授業評価の検討を行うことを目的とする。
【方法】
対象授業 教職関連科目「青年期の教育心理学」
2008年度から2013年度までの6年分のデータを使用した (授業履修登録者合計661名,平均111.83±24.08)。この内,最初の4年が通常の板書型授業であり,2012・2013年度が埋め込み型スライド授業であった。
評価指標 ①出席カードへの記入文字数 毎回の授業で配布する出席カードへ任意に記入する質問や意見・感想の文字数を授業への参加の指標とした。②授業評価 毎回の出席カードにおいて,「授業への興味」「授業の理解」「授業のわかりやすさ」「授業の役立ち度」「情報量」について7件法で尋ねている。受講期間を通しての,各項目への各学生における平均値を授業評価の指標として使用した。なおこれらの指標は,データの信頼性を考慮し,出席回数が7割を上回る550名のデータのみを使用した。
【結果と考察】
出席状況との関連 まず,授業の形式と学生の出席状況の関連を検討するため,欠席回数が4回を上回る学生の数を算出し,χ2検定を行った結果,有意な関連が見られた (χ2 (1)=4.89 p<.05)。残差分析の結果,スライド型の授業では欠席数4回以上の学生比率が有意に少なく (12.9%),板書型の授業では欠席数4回以上の学生比率が有意に多かった (20.1%, 全てp<.05)。
授業への取り組みおよび授業評価との関連 感想カードへの記入文字数,授業評価の各項目および「興味」「理解」「わかりやすさ」「内容の役立ち度」の項目の合計値について,授業形式による平均値の差の検定を行った。その結果,全ての変数について有意な平均値差が見られ (t=2.81~7.18, d=.26~.66 全てp<.01),スライド型の授業の方が,板書型の授業に比べ,全ての変数の平均値が高かった (Table1)。
以上のことから,埋め込み型スライド授業は,板書のみの授業形式に比べ,出席率や出席カードへの文字の記入といった授業への参加度および,授業評価が高いことが示された。今後は異なる内容の授業での検討や,授業の成績といった学習成果の指標との関連を検討する必要があると考えられる。