日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PF035] 小学校高学年における「得意なこと」と学力

相良順子1, 宮本友弘1 (聖徳大学)

キーワード:得意なこと, 学力, 小学校高学年

小学生の高学年では,学校や趣味などにおいて「得意なこと」が明確になり始める。友人と比較して自分は何が優れているのかを正確に認識し,それに対して自信をもつようになる。「得意なこと」の研究は,主に体育や算数といった教科においてその教科に対する興味・関心と成績との関係を検討したものが多い。しかし,子どもが認識する「得意なこと」と学力,およびコンピテンスという心理的概念との関連を検討した研究は見当たらない。本稿は,「得意なこと」と学力,コンピテンスとの関連を検討した。

方法
調査対象:私立小学5年生74名(男子34名,女子40名),6年生86名(男子40名,女子46名)。調査実施日:2013年3月
質問項目:①「得意なこと」文章の読み書き,計算を含め,工作や折り紙,パソコンなど日常生活の中で子どもが得意と感じる17項目。読み書き,計算以外の項目は,小学校の教員に確認して選定した。3件法で回答を求めた。②児童用コンピテンス尺度(桜井,1992): 4つの下位尺度のうち,学習コンピテンス(以下,学習),社会コンピテンス(以下,社会)を分析に使用した。各10項目,4件法。学力の指標: 協力校が毎年2月に実施してきた教研式標準学力検査NRTの結果(全国基準による偏差値)を使用した。
手続き クラスごとに担任が質問紙を配布,回収した。

結果と考察
1.「得意なこと」の分類
17項目のうち,読み書きと計算の2項目を除く15項目に対し,因子分析(主因子・プロマックス回転)を行い,3因子構造になっていることを確認した。それぞれの因子を構成する項目から,第1因子を生活系,第2因子を運動系,第3因子を工作系と命名した。まんがや絵,虫取り,テレビゲームは負荷量が少ないため削除(表1の*)した。
2.「得意なこと」の男女差
各因子を構成する項目の合計を下位尺度得点として,男女差についてt検定を行った。その結果,生活系は女子の方が(t=8.75),工作系は男子の方が(t=4.57)有意に得点が高かった。運動系は男女差はみられなかった(表2参照)。
3.「得意なこと」の領域と学力とコンピテンスとの関連
男女別に「得意なこと」と国語と算数の学力偏差値との相関を算出したところ,男子においては,運動系(r=.265)と工作系(r=.330)と算数とにに正の相関が,女子では生活系と国語にr=-.302,算数とr=-.243という負の相関がみられた。さらに,男子は運動系と学習コンピテンス(r=.311),社会コンピテンス(r=.463)と,女子は生活系と社会コンピテンスとに有意な相関(r=.265)がみられた。女子にとって生活系が「得意」であることは,成績が振るわないことを補い,友人関係での自信を表す社会的コンピテンスを高めることにつながっていることが示唆される。