日本教育心理学会第56回総会

講演情報

ポスター発表 » ポスター発表 PF

ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PF036] 小学校高学年における学習方略と知能及び動機づけの関連

宮本友弘1, 相良順子1 (聖徳大学)

キーワード:学習方略, 知能, 動機づけ

目 的
学習方略の使用が小学校高学年の学業成績(国語,算数)を促進すること,そして,学習方略の使用は,達成目標や原因帰属等の動機づけに関わる要因によって規定されることが明らかにされている(佐藤・新井,1998;佐藤,2002)。
学力向上にとって,学習方略の使用改善が有効であることが示唆されるが,その有効性を高めるには,動機づけといった態度的側面だけでなく,知性的側面や人格的側面についても検討されてしかるべきであろう。本研究では,知性的側面として知能に着目し,学習方略との関連性について探索する。
方 法
調査対象 私立小学校5年生96名(男子48名,女子48名),6年生77名(男子32名,女子45名)。
調査時期 2014年3月。
質問紙 ①学習方略使用 佐藤・新井(1998)の開発した尺度のうち,佐藤 (2002)において学業成績との関連が認められたプランニング方略(勉強するときは,さいしょに計画を立ててからはじめる等)と作業方略(勉強で大切なところは,くりかえし声に出しておぼえる等)の2つの下位尺度を使用した。各6項目,5件法。②学習動機づけ 竹村・小林(2008)が自己決定理論に基づいて作成した尺度を使用した。内的調整,同一化調整,取入調整,外的調整の4因子,各4項目,4件法。
知能の指標 協力校が毎年4月に実施している教研式新学年別知能検査サポートの結果(全国基準による偏差値)を使用した。
学業成績の指標 協力校が毎年2月に実施している教研式標準学力検査NRTのうち,国語と算数の結果(全国基準による偏差値)を使用した。
手続き クラスごとに担任が質問紙を配布,回収した。
結 果
プランニング方略,作業方略の各尺度得点について,性別×学年による分散分析を行ったところ,有意な主効果,交互作用はみられなかった。
両尺度得点と,国語,算数,知能の各偏差値,動機づけの下位尺度得点との相関係数を求めた結果,表1の通り,プランニング方略,作業方略ともに同様の傾向を示した。国語と算数とは有意な正の相関,知能とは有意な負の相関を示した。また,動機づけについては,内発調整,同一化調整とは有意な正の相関,外的調整とは有意な負の相関を示し,取入れ調整とは有意な相関は認められなかった。
考 察
先行研究と同様に,プランニング方略と作業方略の使用は,国語と算数の学業成績を促進することが示唆された。知能は両方略の使用とは関連性がないことから,学習方略の使用の規定要因ではない可能性が高い。一方,両方略の使用は,動機づけの自律性が高くなるにつれ促進される可能性が示唆された。動機づけといった態度的側面の育成が,学力向上にとって有効であることがあらためて明らかになった。

引用文献
佐藤純・新井邦二郎(1998).学習方略の使用と達成目標及び原因帰属との関係 筑波大学心理学研究,20,115-124.
佐藤純(2002).小学生における学習方略使用と学業成績の関係 筑波大学発達臨床心理学研究 14, 61-67.
竹村明子・小林稔(2008).小学生における親子関係と学習への動機づけの相関分析 琉球大学教育学部紀要 3,215-224.