The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PF037] 小学校高学年における児童向け科学教育プログラムGEMSを用いた科学的な思考力の育成に関する実践研究

鴨川光 (公益社団法人日本環境教育フォーラム)

Keywords:GEMS, 科学的な思考力, 体験学習

問題と目的
PISAなどの学力調査の結果から,日本の児童は,知識は豊富であるが概念的理解や科学的な説明を行う力が相対的に低いことが示されている。そこで,本研究では,児童向け科学教育プログラムGEMS(Great Explorations in Math and Science)を用いて児童の科学的な思考を養うことを目指す。GEMSは,カリフォルニア大学で研究開発された直接体験型カリキュラムで,児童がグループで試行錯誤しながら問題解決を目指せるようにプログラムが構成されている。
本研究では,小学校5,6年生を対象にGEMSを5日間連続で実施することで,児童のメタ認知が促され,科学的な思考力が高まるという仮説を検証した。
方法
調査概要 5日間連続の実践を2回行い,事前・事後調査によって活動の効果を検討した。また,実践のおよそ1カ月半後に郵送による把持調査を行った。調査には、1)「理科の観察・実験活動におけるメタ認知を問う質問紙【小学生用】(木下ら,2007;理科メタ認知使用度尺)」と,2)自由記述による意識調査を用いた。
調査対象 一般公募によって小学5,6年生を募った。2回の実践を合わせて38名の参加があった。
実施者 筆者がメインの指導者を担当した。また,心理学を専攻する学生が各日3ないし4名ずつティーチング・アシスタントとして参加し,実験の安全管理と児童への介入を行った。
プログラム 与えられた課題に対して、子どもたち自身が実験をデザインし、問題解決をする活動を行った。GEMSの指導者手引きにしたがい、児童のメタ認知を促すよう「オープンエンドな質問」を用いて児童に介入を行った。
結果と考察
観察・実験場面におけるメタ認知使用度の変化
事前・事後・把持調査における,理科メタ認知使用度尺の平均値を比較した結果,事前<把持<事後の順に平均値が高くなっていることがわかった。次に,1要因分散分析を行ったところ,事前‐事後で有意差を示したのは,「今までに習ったことを思い出しながら、予想を立てるようにしている(F(38)=8.325,p<.001)」といった観察・実験を行う前段階と中段階においてメタ認知を使用できたという項目であった(Table1)。
観察・実験場面における科学的な思考力の変化
児童の自由記述をKJ法によって分類したところ,「科学的な思考力」に関する記述が事前<事後<把持の順に多くなっていた。事後調査では「計画」「予想」といった実験の前段階で使用する方略についての記述が多く,把持調査では「目標設定」「活用」など,方略を使用するための思考スキルが出現した。このことから、実践を通して児童の科学的な思考力が高まっただけでなく、実践終了後もさらに思考が発展していることが示された。
これらの結果から,GEMSの構造と手法によって児童のメタ認知が促され,科学的な思考にも影響を及ぼしていることが示唆された。GEMSでは,指導者から投げられる質問に回答したり、グループで話し合いやワークシートへの「書く」作業を行ったりすることで思考が外在化される機会が多い。これによって、児童が自分の見方や考え方をメタ的に捉えやすくなったと考えられる。また,学習サイクルによって予想や計画をくり返し練習することができスキルが定着しやすいと考えられる。