[PF042] 心理系グループワークと食育を用いたグループワークの教育効果と可能性
対人関係能力を高める授業を行うには
Keywords:グループワーク, 対人関係能力, 教育効果
目 的
生徒のコミュニケーション能力や社会志向性を高めるために,中等教育においてアサーショントレーニングや構成的エンカウンターグループなどが用いられている。しかし不登校になる大学生の中に他者との関係をうまく築けないことが原因と思われるケースが見られる。筆者らは大学生に心と体の系統的健康教育を行ってきたが1)2),本研究では,心理系の講義と食育の講義について,その教育効果と差異を分析し,対人関係能力を高める教育の内容を検討することを目的とした。
方 法
筆者らがコーディネートしている共通教育特設プログラム「健康・自己管理」の科目群のうち,2日間の集中講義で行った心理系の健康論実践C(以下C),健康論実践E(以下E),食育の健康論実践D(以下D)の2013年度データを分析に用いた。Cは8月に,座学の後,他己紹介,ブラインドウォーク,コラージュ,チーム課題などを行い,Eは2月に,座学の後,伝言ゲーム,コンセンサス実習,ロールプレイなどを行った。授業の初回と最終回に質問紙を配布・回収して収集し,習得目標とする自己管理能力および対人関係能力がどのように変化したかを分析した。調査項目は1 健康への関心等,2 自己管理スキル尺度,3 アサーション度尺度,4 社会的スキル尺度,5 個人志向性・社会志向性尺度であった。
結 果
有効回答数はCが11,Dが23,Eが17で合計51であった。
1)教育前の得点の比較
心理系のCとEはすべての項目で有意差がなかった。DとC・Eでt検定を行った結果,自己管理尺度(t (48)=2.651, p <.05),社会的スキル尺度(t (42.864)=2.604, p <.05)においてDが有意に得点が高かった。
2)教育前後の得点の変化の比較
対応のあるt検定を行った。Cでは,N=10であるが,1-10グループの一員として行動していることが多い,アサーション度尺度,社会的スキル尺度で教育後に有意に得点が上昇した。Eでは,1-6グループワークに関心がある(t (16)=-3.631, p <.01),1-7ふだんから他者に関心をもっている(t (16)=-2.864, p <.05),1-9人と話すのが楽しい(t (15)=-3.478, p <.01),社会的スキル尺度(t (16)=-3.015, p <.01),社会志向性P尺度(t (15)=-2.498, p <.05)で教育後に有意に得点が上昇し,社会志向性N尺度(t (15)=2.150, p <.05)が低下した。食育のDは1-1健康に関することに関心がある(t (22)=-2.577, p <.05),1-2ふだん自分の生活習慣について考えている(t (22)=-2.206, p <.05),1-6(t (22)=-2.418, p <.05),1-8人と一緒にいると楽しい(t (22)=-3.140, p <.01),1-10(t (22)=-2.1526, p <.05),社会的スキル尺度(t (22)=-3.281, p <.01)で教育後に有意に得点が上昇した。
考 察
心理系のCとEで教育前の得点に有意差がなく,食育のDとは最初から有意差があったことは,心理系に興味をもつ群と食育に興味をもつ群が異なることを示唆している。教育前後の得点の変化が心理系と食育で違うのは,教育目標に沿った形で教育効果が出たことを示唆している。3科目とも社会的スキル尺度の上昇が見られたことは,グループワークという講義形式が社会的スキルを高める可能性を示しているが,苦手意識をもつ人たちにいかに参加してもらうかが課題である。
引用文献
1)足立由美,吉川弘明他.保健管理センターによる健康教育2-集中講義の教育効果-. CAMPUS HEALTH 2010;47(1);308-309.
2)足立由美,吉川弘明.大学生を対象とした心と体の系統的健康教育-新入生に対する導入教育から課外教育まで-.日本教育心理学会総会発表論文集.2010, (52) 633.
生徒のコミュニケーション能力や社会志向性を高めるために,中等教育においてアサーショントレーニングや構成的エンカウンターグループなどが用いられている。しかし不登校になる大学生の中に他者との関係をうまく築けないことが原因と思われるケースが見られる。筆者らは大学生に心と体の系統的健康教育を行ってきたが1)2),本研究では,心理系の講義と食育の講義について,その教育効果と差異を分析し,対人関係能力を高める教育の内容を検討することを目的とした。
方 法
筆者らがコーディネートしている共通教育特設プログラム「健康・自己管理」の科目群のうち,2日間の集中講義で行った心理系の健康論実践C(以下C),健康論実践E(以下E),食育の健康論実践D(以下D)の2013年度データを分析に用いた。Cは8月に,座学の後,他己紹介,ブラインドウォーク,コラージュ,チーム課題などを行い,Eは2月に,座学の後,伝言ゲーム,コンセンサス実習,ロールプレイなどを行った。授業の初回と最終回に質問紙を配布・回収して収集し,習得目標とする自己管理能力および対人関係能力がどのように変化したかを分析した。調査項目は1 健康への関心等,2 自己管理スキル尺度,3 アサーション度尺度,4 社会的スキル尺度,5 個人志向性・社会志向性尺度であった。
結 果
有効回答数はCが11,Dが23,Eが17で合計51であった。
1)教育前の得点の比較
心理系のCとEはすべての項目で有意差がなかった。DとC・Eでt検定を行った結果,自己管理尺度(t (48)=2.651, p <.05),社会的スキル尺度(t (42.864)=2.604, p <.05)においてDが有意に得点が高かった。
2)教育前後の得点の変化の比較
対応のあるt検定を行った。Cでは,N=10であるが,1-10グループの一員として行動していることが多い,アサーション度尺度,社会的スキル尺度で教育後に有意に得点が上昇した。Eでは,1-6グループワークに関心がある(t (16)=-3.631, p <.01),1-7ふだんから他者に関心をもっている(t (16)=-2.864, p <.05),1-9人と話すのが楽しい(t (15)=-3.478, p <.01),社会的スキル尺度(t (16)=-3.015, p <.01),社会志向性P尺度(t (15)=-2.498, p <.05)で教育後に有意に得点が上昇し,社会志向性N尺度(t (15)=2.150, p <.05)が低下した。食育のDは1-1健康に関することに関心がある(t (22)=-2.577, p <.05),1-2ふだん自分の生活習慣について考えている(t (22)=-2.206, p <.05),1-6(t (22)=-2.418, p <.05),1-8人と一緒にいると楽しい(t (22)=-3.140, p <.01),1-10(t (22)=-2.1526, p <.05),社会的スキル尺度(t (22)=-3.281, p <.01)で教育後に有意に得点が上昇した。
考 察
心理系のCとEで教育前の得点に有意差がなく,食育のDとは最初から有意差があったことは,心理系に興味をもつ群と食育に興味をもつ群が異なることを示唆している。教育前後の得点の変化が心理系と食育で違うのは,教育目標に沿った形で教育効果が出たことを示唆している。3科目とも社会的スキル尺度の上昇が見られたことは,グループワークという講義形式が社会的スキルを高める可能性を示しているが,苦手意識をもつ人たちにいかに参加してもらうかが課題である。
引用文献
1)足立由美,吉川弘明他.保健管理センターによる健康教育2-集中講義の教育効果-. CAMPUS HEALTH 2010;47(1);308-309.
2)足立由美,吉川弘明.大学生を対象とした心と体の系統的健康教育-新入生に対する導入教育から課外教育まで-.日本教育心理学会総会発表論文集.2010, (52) 633.