日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PF049] 青年群,中年群,高齢者群の生涯発達過程における発達特性の認知

奥田裕紀 (金城大学)

キーワード:多軸同心円スケール, 生涯発達, 認知

Ⅰ.目 的
従来,多軸同心円スケールを用いて,生涯発達過程における諸特性の認知を検討した研究は,青年群・高齢者群のものが多く,中年期の人達の認知に関して利用可能なデータは限られていた。本研究の目的は,40歳代の人達に対して,多軸同心円スケールによる6評定項目の評定を求め,青年群,高齢者群と比較することであった。
Ⅱ.方 法
(1) 研究参加者:全部で150人であり,50人ずつ青年群(18~22歳),中年群(40~49歳),高齢者群(65~79歳)に分けられた。
(2) 多軸同心円スケール:本研究で用いた多軸同心円スケールは,6つの同心円が示され,各同心円に内側から1,0.8,0.6,0.4,0.2,0と表示されたものであった。同心円スケール上には,0度の位置から12の軸が均等に配置されており,各軸の外側には,0度の軸から0歳,5歳,10歳,20歳,30歳,40歳,50歳,60歳,70歳,80歳,90歳,100歳の年齢が,この順番に表示されていた。各研究参加者は,同心円の中心に表示されたことに対して各軸端に示されているものが,あてはまる・近いと思う程度が大きいほど,各軸上の1と示された(最も内側の)同心円に近いところに,×印をつけて評定することを求められた。
(3)評定項目:本研究では,まず現在の自分と多軸同心円スケールの各軸に表示された評定対象年齢の自分とが近い(変化が少ない,類似性・連続性が高い)と思う程度の評定求めた(以下。現在近さ評定とする)。また,“生活に満足している自分”,“幸福な自分”,“健康に自信を持っている自分”,“希望をもっている自分”,“意欲的な自分”にあてはまる・近いと思う程度についても評定を求めた。以下,各項目に関する評定を,満足評定,幸福評定,健康評定,希望評定,意欲評定とする。
Ⅲ.結果および考察
年齢群(3)×評定項目(6)×評定対象年齢(12)の3元配置分散分析の結果,年齢群,評定項目および評定対象年齢の主効果,交互作用は全て有意であった(p<0.01)。また,希望評定・意欲評定における年齢群×年齢の単純交互作用も有意であった(p<0.01)。すなわち,希望評定・意欲評定に関して,中年群,青年群,高齢者群の間で,評定対象年齢による評定平均値の変化のパターンは,有意に異なることが示された。
希望評定については,青年群,中年群,高齢者群の評定平均値の最高値は,各々10歳,20歳,40歳で示された。意欲評定については,3群の評定平均値の最高値は,各々5歳,20歳,40歳で示された。青年群・高齢者群では,希望評定,意欲評定は,幼児~児童期で評定平均値が最高となった。一方,高齢者群では,社会的活動が活発な時期(それを可能にする諸機能・健康状態が維持されている時期)の評定平均値が最も高かった。従って,活発な社会的活動と希望・意欲をもっていたという認知が,関連をもつ可能性も考えられよう。
このような,3年齢群間の生涯発達過程に関する認知の差異が,年齢差による認知の変化なのか,出生コホートの相違等によるものか,それらの複合的な影響によるものかが問題となろう。