The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PF060] 体験的な学びによる学生の変化

peace poem projectを通じて

渡邉はるか (目白大学)

Keywords:体験, 主体性, 達成感

問題・目的
ベネッセ総合教育研究所(2012)の「大学生の学習・生活実態調査」によると,近年,学生参加型であるアクティブラーニング型の授業が増えていることが報告されている。教育の現場では,学生の主体的な学びを重視する傾向が強まっている。
一方,同調査によると,学生生活について「学生の自主性に任せる」より「大学の教員が指導・支援するほうがよい」と考える学生が15.3%(2008年調査)から30.0%(2012年調査)に増えたことが指摘されており,受け身の姿勢が強まっていることが危惧される。
筆者の所属する学科では「現場性」「身体性」「感性」を重視しており,学生自らが様々な課題と向き合い,自分の力で解決していくプロセスを大切にした教育活動を行っている。授業での取り組みの他,学科行事として全学生・教員が参加し,共に創りあげる体験に取り組んでいる。
2013年度は「Peace Poem Project-平和・文化・ことばを考える-」というテーマで学科公開講座を行った。1年生を中心に実行委員を募り,企画立案から運営までを行った。公開講座は3部構成とし,①詩の朗読,②パネルトーク,③詩のワークショップを実施した。本報告では,1年生が中心に取り組んだ平和の詩の朗読発表に焦点を当てる。はじめは教員から与えられた課題として取り組む中で見られた学生の意識の変化を分析する。この分析により,学生を主体的な学習者に育てる為の方策を検討する一助としたい。
方法
【対象】1年生の学生50名(事前と事後の2回のデータが揃った者を分析対象とした)。
【調査内容】独自のアンケートを作成し,関心や達成感について5段階評価で測定した。
事前アンケート:①Peace Poem Project(以下PPP)への関心②PPPの意義理解③PPPの達成感(予測)
事後アンケート:①PPPへの関心②PPPの意義理解③PPPの達成感(実評価)④自由記述(感想)
【調査時期】第1回目(事前):2013年10月初旬
第2回目(事後):2013年11月末
結果と考察
【取り組み】4月に告知,7月末から9月にかけて実行委員会で準備,10月から活動を始動した。学生には,「平和」について考え,詩を1篇選び,舞台で発表することを目標として自主的に練習するように指示した。当初,学生の中では「やらされている」という感覚が強く,「実施する意味がわからない」という批判の声があがった。そこで学生の声を聴き,一人ひとりの思いを受け止めながら,企画側の意図を伝えた。またメンバーで話し合い,各自がそれぞれの意義を見出すように促した。さらに本番までに全体リハーサルを3回行い,実行委員や教員からのコメントや相互評価をもとに各グループで改善を重ねてもらった。取り組みの結果,「最初から嫌だと逃げるのではなく,やってみる中で学ぶものがあることが見えてきた」「はじめは強制的にやらされていると感じていたが,自身の取り組み方しだいで気持ちにも変化が出てきた」等の感想が出てきた。学生は揺らぎ,迷う中で,他者及び自己との対話を重ね,深い思考をすることで変化していった。
【アンケート比較】PPPへの関心,意義理解,達成感について事前と事後の比較結果を,Table.1に示した。PPPへの関心は,事前と事後で有意差が見られた( t=-3.927,df=49,p<.001 )。PPPの意義理解は,事前と事後で有意差が見られた(t=-5.480,df=49,p<.05)。達成感については事前の期待と事後の実際の評価では有意差が見られた(t=-2.049,df=49,p<.001)。

活動を通して,PPPへの関心,意義理解に高まりが見られ,最終的には当初予想した以上の達成感を得ることができた。学生の感想を分析すると,共に学ぶ仲間の存在が,より良い発表を目指すという向上心に影響した。また学習者と教授者が対話を重ね,創造のプロセスに共に参加していくことで,モチベーションを高めることもできた。学生は,この体験的な学びを振り返ることで自身の変化に気づいた。これが自己効力感を向上させ,他の活動への意欲につながると考える。最後に主体的な学習者を育成する一つに,心を揺さぶるような体験を重ね、深めることが大切だと考える。