日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PF067] 大学生における動機づけ調整プロフィールとエンゲージメントの関連

梅本貴豊1, 伊藤崇達2, 田中健史朗3 (1.名古屋大学, 2.京都教育大学, 3.名古屋大学・日本学術振興会)

キーワード:動機づけ調整プロフィール, 行動的エンゲージメント, 感情的エンゲージメント

問題と目的
効果的に学習を進めるためには,自身の学習を調整することが必要になる。自己調整学習において,この学習の調整に関して重要な役割を果たすのが,動機づけの調整に関する「動機づけ調整方略」と認知・行動の調整に関する「メタ認知的方略」である(篠ケ谷, 2012; Wolters & Taylor, 2012)。
現実の学習では学習方略は同時に用いられうるため(梅本, 印刷中),複合的な観点から方略使用を捉える必要がある。しかしながら, 2つの調整方略の使用を複合的に扱った研究はこれまでみられない。そこで,本研究では,動機づけ調整方略とメタ認知的方略から「動機づけ調整プロフィール」を作成し,近年注目される学習の指標である行動的・感情的エンゲージメント(Skinner et al., 2009)との関連を検討する。
方 法
手続き 2014年4月,4つの県にある計5つの大学の大学生計236名(男性92名,女性133名,不明11名;平均年齢19.96,標準偏差1.40)に,質問紙調査を行った。分析には,欠測値のみられなかった213名のデータを用いた。
質問紙(5件法) (1)動機づけ調整方略:梅本(2013)の項目を修正して用いた。下位尺度として,自律的調整方略(21項目),協同方略(13項目),成績重視方略(3項目)が含まれた。(2)メタ認知的方略:梅本(2013)の6項目を用いた。(3)行動的エンゲージメント:梅本・田中(2012)の「学習の取り組み」4項目を用いた。(4)感情的エンゲージメント:Skinner et al.(2009)のEmotional Engagementを翻訳した5項目を用いた。
結果と考察
先行研究に従い,下位尺度を構成した(αは.77から.95)。次に,動機づけ調整方略とメタ認知的方略の標準化得点を用いて,階層的クラスター分析(ward法,平方ユークリッド距離)を行った。その結果,4つの解釈可能なクラスターが得られた。4つのクラスターを独立変数,各調整方略の下位尺度得点を従属変数とした一要因分散分析の結果から,それぞれのクラスターを,低メタ認知/自律的調整,高調整,高成績/低協同,低成績重視と命名した(Table 1)。
次に,4つのプロフィールを独立変数,エンゲージメントを従属変数とした一要因分散分析を行った(Table 1)。その結果,行動的エンゲージメントに関しては,低成績重視プロフィールが最も高い値を示した。成績を意識した動機づけの調整に頼らず,メタ認知的方略を用いながら自律的,または協同によって動機づけを効果的に調整することで,より積極的な学習行動が促されると考えられる。
感情的エンゲージメントに関しては,高調整と低成績重視プロフィールが高い値を示した。複数の動機づけ調整を,メタ認知的方略によって効果的に使い分けることが,「楽しさ,興味,没頭」といった学習に対する積極的な感情を促すと考えられる。
今後は,縦断的な調査による検討や,方略間のより詳細な調整プロセスについての検討が必要である。また,対象者を変え,プロフィールの安定性についても検討することが必要である。