The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PF069] 指尖脈波は心の指標となりうるか

生体信号のカオス探究

岡林春雄 (山梨大学)

Keywords:指尖脈波, カオス, 最大リアプノフ指数

人間のような生きているシステム―生体―は、常にダイナミックに変動する生体信号を発信している。生活行動のようなマクロな動き、心臓や血圧変動等の動き、細胞の分子レベルの動きまで、すべて複雑に変動している。さらに、生物学の分野では、1980年代半ば頃から、心拍変動や脳波などの生体信号がカオスではないかという報告が相次いだ。カオスとは、予測できない複雑な現象であるが、ランダムという意味ではなく、カオスの振る舞いは決定論的な法則にしたがうものである。
本研究では、人間の生体信号である指尖脈波が生きている証、心の指標となりうるか、どのような場面で生きている特徴が出てきやすいのかを含めて、人間関係が良好な人、良好でない人を比較しながら検討したい。

<方法>
被験者: 大学生 42人 (心理検査POMS:Profile of Mood States において良好な心理状態を示す「氷山型」13人、ネガティブ感情が強い「逆氷山型」14人、「中間型」15人)
指尖脈波: 加算作業場面、安静場面、問題解決場面、会話場面の4場面で、それぞれ3分間、利き手と逆の第3指からLyspect(カオテック)を使用し、脈波を測定した。

<結果と考察>
指尖脈波のカオスの指標となる最大リアプノフ指数(LLE)について見ておきたい。
(A)全体としての場面における違い
カオスに向けて、会話場面でもっとも活発な動きがあることがわかる。加算作業のように同じことの繰り返しでは、動きが少なくなる。
(B)Moodとのかかわりから 1.問題解決場面において5%水準で有意差が見出された(F(2, 41)=3.616)。「中間型」群(M=6.03)、「氷山型」群(M=5.03)>「逆氷山型」群(M=4.90)
2.会話場面において5%水準で有意差が見出された(F(2, 41)=3.329)。「中間型」群(M=6.70)、「氷山型」群(M=6.16)>「逆氷山型」群(M=5.65)
が見出された。
さらに、指尖脈波の動きを示すアトラクタをターケンスの埋め込み定理に基づき図示したところ、人間関係が良好な被験者(例えば被験者28-図1:POMS「氷山型」であり観察でも良好)のアトラクタは、良好でない被験者(例えば被験者36-図2:POMS「逆氷山型」であり観察でも良好でない)のアトラクタより、明らかに伸びやかな形状をもっていた。

<まとめ>
本研究から、人間は会話場面のような対人場面で生きているという特徴を明らかに示すということがわかった。ある程度ストレスがかかる対人場面で、その人の特徴が指尖脈波の最大リアプノフ指数ならびにアトラクタの振る舞いを図示することによって表現できることが示唆された。