[PF074] 心理学のレポート作成において学生は何を重視するのか
Keywords:達成目標, 真正な評価, コンピテンシー
1.問題と目的
現代の教育においては, 知識や技能といった学習内容の習得と, これらを活用し課題を解決するための学問固有の考え方や高次な能力をともに身につけることが求められる。学習内容を習得することを通して, 学問固有の考え方や高次な能力を身につけるためには, 学習内容によらない一般的な目標を設定し, その目標に準拠して繰り返し授業を行う必要があると考える。
本研究は, 大学の心理学科の専門科目であり, 心理学の論文の書き方を学ぶ授業(心理学研究法)に焦点を当てる。その授業の今後の指針とするために, まず, 授業を担当する教員に調査を行い, 授業の目標を再検討する。それをもとに, 従来の学生が重要と考えているのか, 達成できていると考えているのかを比較検討する。
2.方法
(1)教員に対する調査
協力者 心理学研究法を担当する教員5名に対し, 2014年3月に, 個別に調査を行った。
調査項目 従来の評価基準等を参考に45項目作成し、実施した。項目は7件法であった。
(2)学生に対する調査
協力者 心理学研究法を過去に受講した学部生48名に対し, 2014年5月に集団で行った。
調査項目 教員に対する調査で使用した45項目について, 重要度が高いと思われる17項目を心理学論文を書くときの目標として選定した。ただし, 分かりにくいとの指摘があった4項目についてはワ―ディングを変更して使用した。さらに, 各項目の関連性により,17項目を以下の5つの領域に分類した。
キー概念(2項目):「文章の論旨が明確に書かれている」など全体に関わる領域
文章構成(5項目):「論文に書くべき内容について分かっている」など, 段落構成や論文の書式に関わる領域
先行研究(4項目):「引用や出典の仕方が正確である」など, 先行研究の扱いに関する領域
科学性(4項目):「追試研究ができる情報を盛り込んでいる」など, 研究方法とデータの扱い方に関する領域
表現(2項目):誤字・脱字や文法的な誤りがあるかなどに関する領域
調査内容 上記の17項目に関して, 「重要だと感じているか」と「自分ができていると感じているか」をそれぞれ7件法で尋ねた。
3.結果
教員, 学生にともに尋ねた17項目を分析対象とした。教員に関して, 領域ごとに平均点を算出し教員の重要度とした。学生に関しては, 回答に不備があったものを除いた46名を分析対象とした。「重要だと感じているか」と「自分ができていると感じているか」のそれぞれについて,領域ごとに平均点を算出し,学生の重要度および学生の達成度とした(表1)。
教員の重要度と学生の重要度の比較
教員の重要度と学生の重要度について, 対応のないt検定を行った。その結果, 「先行研究」の領域においてのみ有意な差が見られた(t(49)= 2.06, p < .05)。
教員の重要度と学生の達成の比較
教員の重要度と学生の達成度について, 対応のないt検定を行った。その結果, 「キー概念(t(49)= 4.67, p < .001)」, 「文章構成(t(49)= 3.07, p < .01)」, 「先行研究(t(49)= 2.38, p < .05)」, 「科学性(t(49)= 3.35, p < .01)」の領域において有意な差が見られた。「表現」に関しては, 有意な差は見られなかった(t(49)= 1.03, n.s.)。
4.考察
学生の考える重要度に関して,全般的に教員との差は見られず, 重要であると認識していると考えられる。しかし, 学生の考える達成度に関しては, 重要であると考えている一方で, 十分に達成しているとは考えていないことが示唆された。
現代の教育においては, 知識や技能といった学習内容の習得と, これらを活用し課題を解決するための学問固有の考え方や高次な能力をともに身につけることが求められる。学習内容を習得することを通して, 学問固有の考え方や高次な能力を身につけるためには, 学習内容によらない一般的な目標を設定し, その目標に準拠して繰り返し授業を行う必要があると考える。
本研究は, 大学の心理学科の専門科目であり, 心理学の論文の書き方を学ぶ授業(心理学研究法)に焦点を当てる。その授業の今後の指針とするために, まず, 授業を担当する教員に調査を行い, 授業の目標を再検討する。それをもとに, 従来の学生が重要と考えているのか, 達成できていると考えているのかを比較検討する。
2.方法
(1)教員に対する調査
協力者 心理学研究法を担当する教員5名に対し, 2014年3月に, 個別に調査を行った。
調査項目 従来の評価基準等を参考に45項目作成し、実施した。項目は7件法であった。
(2)学生に対する調査
協力者 心理学研究法を過去に受講した学部生48名に対し, 2014年5月に集団で行った。
調査項目 教員に対する調査で使用した45項目について, 重要度が高いと思われる17項目を心理学論文を書くときの目標として選定した。ただし, 分かりにくいとの指摘があった4項目についてはワ―ディングを変更して使用した。さらに, 各項目の関連性により,17項目を以下の5つの領域に分類した。
キー概念(2項目):「文章の論旨が明確に書かれている」など全体に関わる領域
文章構成(5項目):「論文に書くべき内容について分かっている」など, 段落構成や論文の書式に関わる領域
先行研究(4項目):「引用や出典の仕方が正確である」など, 先行研究の扱いに関する領域
科学性(4項目):「追試研究ができる情報を盛り込んでいる」など, 研究方法とデータの扱い方に関する領域
表現(2項目):誤字・脱字や文法的な誤りがあるかなどに関する領域
調査内容 上記の17項目に関して, 「重要だと感じているか」と「自分ができていると感じているか」をそれぞれ7件法で尋ねた。
3.結果
教員, 学生にともに尋ねた17項目を分析対象とした。教員に関して, 領域ごとに平均点を算出し教員の重要度とした。学生に関しては, 回答に不備があったものを除いた46名を分析対象とした。「重要だと感じているか」と「自分ができていると感じているか」のそれぞれについて,領域ごとに平均点を算出し,学生の重要度および学生の達成度とした(表1)。
教員の重要度と学生の重要度の比較
教員の重要度と学生の重要度について, 対応のないt検定を行った。その結果, 「先行研究」の領域においてのみ有意な差が見られた(t(49)= 2.06, p < .05)。
教員の重要度と学生の達成の比較
教員の重要度と学生の達成度について, 対応のないt検定を行った。その結果, 「キー概念(t(49)= 4.67, p < .001)」, 「文章構成(t(49)= 3.07, p < .01)」, 「先行研究(t(49)= 2.38, p < .05)」, 「科学性(t(49)= 3.35, p < .01)」の領域において有意な差が見られた。「表現」に関しては, 有意な差は見られなかった(t(49)= 1.03, n.s.)。
4.考察
学生の考える重要度に関して,全般的に教員との差は見られず, 重要であると認識していると考えられる。しかし, 学生の考える達成度に関しては, 重要であると考えている一方で, 十分に達成しているとは考えていないことが示唆された。