The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF

(501)

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 501 (5階)

[PF076] 地域在住高齢者の達成動機が与える作業参加の状況や健康関連QOLへの影響の検討

佐野伸之 (吉備国際大学)

Keywords:達成動機, リハビリテーション, 地域在住高齢者

1.研究の目的
達成動機とは,自分にとって価値のある目標をやり遂げようとする意欲である.リハビリテーションではこの達成動機の強さによって,自発的な行動やその持続に関わり,結果として社会参加や幸福感などの生活の質(以下,QOL)にも影響を与える重要な概念である.本研究の目的は,地域で暮らし,リハビリテーションサービスを利用する高齢者の達成動機が,大事な作業への参加や健康関連QOLにどれ程影響を与えるのかを明らかにすることであった.
2.方法
【対象者】デイサービスを利用する地域在住高齢者204名(平均年齢75.8±8.9).
【調査用紙】①SAMR:達成動機を評価でき,2因子10項目からなる尺度.
②SOPI:大事な作業への参加状況(以下,作業参加)を評価でき,3因子9項目からなる尺度.
③SF-8:健康関連QOLを評価でき,8因子8項目からなる尺度.
【分析】SAMR,SOPI,SF-8の各因子・項目の相関をポリコリック相関分析で確認した.SAMRの因子構造は探索的因子分析で確認した.また,達成動機は作業参加や健康関連QOLへ正の影響を与えるという研究仮説に基づき,達成動機から作業参加や健康関連QOLへパスを引く構造方程式モデリングの多重指標モデルを用いて分析を行った.適合度はCFI0.9以上,RMSEA0.08未満,モデル間の比較はAICを参考にした.
3.結果
ポリコリック相関分析では,SAMRはSOPIのレジャー,生産的活動,セルフケアの因子と弱い相関(0.23~0.37)が示され,SF-8とは全体的健康感,活力と弱い相関(0.25,0.24)が示された.SOPIはSF-8の全ての因子と中等度から弱い相関(0.20~0.49)が示された.
SAMRの探索的因子分析では,SAMRの項目8,9が2因子に寄与していた.そのため,構造方程式モデリングの分析では,SAMRの2因子の誤差変数に共分散を設定した.その結果,標準化係数は達成動機から健康関連QOLが0.2,達成動機から社会参加が0.7,社会参加から健康関連QOLが0.47であり,達成動機の健康関連QOLへの間接効果は0.33であった(Table 1,CFI=0.961,RMSEA=0.075).
4.考察
本研究で明らかとなった知見は,第1に達成動機は社会参加全般へ影響を示す,第2に達成動機は特定のQOLとの関連が強い,第3にクライエントの達成動機と作業参加に支援することでより幸福感を高めることができる点であった.
その理由は,地域在住高齢者の達成動機は社会参加の3因子全てに関連し,健康関連QOLとは精神的健康へ影響の強い2因子に影響し,包括的な幸福感ではなく,活力や生きがいなどの特有のQOLと関連が強いことが示唆された.また,達成動機は健康関連QOLへの直接効果より,社会参加を介した間接効果により強い影響があることが明らかとなった.そのため,リハビリテーションの支援では,単に達成動機の維持・向上だけでなく,クライエントの大事な作業への参加を支援することで幸福感や生きがいを高めるより効果的な介入を行うことができると考えられた.