日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PF

(501)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 501 (5階)

[PF087] 児童の学校不適応感とself-control・情緒性との関連性

柴田利男1, 久保井健2 (1.北星学園大学, 2.しらかば台小学校)

キーワード:学校不適応感, 情緒性, 児童

目 的
児童の学校不適応に関わる要因の中で、コミュニケーション能力、社会性の低下が問題視されているが、これらに関連すると考えられるのが自己制御機能(self-control)である。また抑うつや不安など児童の情緒性の影響も考えられる。以上のことから本研究では、学校不適応の前兆としての学校不適応感に注目し、児童のself-controlと情緒性との関連について検討する。それを通して学校不適応の早期発見と適切な教育的配慮のための基礎的知見を得ることが本研究の目的である。
方 法
調査対象者
札幌市内の市立小学校に通う4年生28名(男子16名、女子12名)、5年生39名(男子22名、女子17名)、6年生26名(男子13名、女子13名)。
質問紙の構成
(1)基本的属性。
(2)児童のself-control尺度(庄司、1993)の全20項目、4件法。
(3)小学生用5因子性格検査(曽我、1999)から下位尺度のひとつである“情緒性”の全8項目、3件法。
(4)小学生用学校不適応感尺度(戸ヶ崎・秋山・嶋田・板、1997)の全15項目、4件法。
手続き
クラスごとに一斉回答で行った。回答後はただちに調査対象者自身に質問紙を封入させ提出させた。
結果と考察
(1)児童のself-control尺度の因子分析
因子分析(主因子法、バリマックス回転)の結果、 “自己抑制”、“自己犠牲”、“違反への抵抗”、“目標達成”、“誘惑への抵抗”の 5因子を抽出した。
(2)学校不適応感の分散分析
学年と性別を独立変数、学校不適応感の3因子(“友達との関係”、“先生との関係”、“学業場面”)を従属変数とする3×2の2要因分散分析を行った。
“友達との関係”においてはいずれの学年においても不適応感は比較的低かった。“学業場面”では4年生に比べて5年生と6年生の平均値が高く、学年が高くなると学業場面での不適応感が高くなる傾向がある。しかし“先生との関係”では逆の結果が得られ、4年生に比べて5年生と6年生の平均値が低く、学年が高くなると先生との関係における不適応感は低くなる傾向がある。
(3)self-control・情緒性の分散分析
学校不適応感と同様に3×2の2要因分散分析を行った。self-control では学年が高くなると“自己犠牲”と“目標達成”のself-controlが低くなることが示された。これは道徳的判断の基準が他律から自律へと移行することによる一時的な変化と考えることが出来る。情緒性については学年差、性差ともみられなかった。
(4)学校不適応感とself-control・情緒性の関連性
“先生との関係”では、4年生と5年生においてself-controlが高いと不適応感が高くなる傾向があることが示された。この結果は“友達との関係”と“学業場面”の相関とは逆の結果である。また最高年次において“先生との関係”の不適応感とself-controlの関連性がみられない点をどう考えるかは今後の課題である。情緒性では5年生においてのみ情緒性が高いと“友達との関係”と“学業場面”の不適応感が高く、“先生との関係”の不適応感が低くなる。4年生でも同じ傾向の相関係数が得られている。self-controlと同様に学年が高くなるにつれ関連性がなくなってしまうのかもしれない。
明確ではないが男女差も推測される。女子より男子の方が社会的促進に関わるself-contorolが適応的な人間関係を支えるようになるのであろう。
(5)今後の課題
児童期後期における対人関係の変化、および認知機能の変化が情緒性やself-controlに及ぼす影響をふまえて、学校不適応との関連性をとらえ直す必要がある。