[PF088] 高校生のキャリア教育に必要とされるソーシャルスキルのニーズ調査
キーワード:ソーシャルスキル, キャリア教育, 高校生
問 題 と 目 的
学校教育における児童・生徒の対人関係の問題の予防に,ソーシャルスキル・トレーニング (Social Skills Training; 以下,SST と表記) が効果をもたらすことが報告されている (渡辺・原田, 2007)。高等学校においても SST が導入されるようになり,その効果が報告されている (原田・渡辺, 2011)。しかし,高校生の発達段階に必要とされるスキルについての研究はいまだ少ない (原田, 2012)。
高等学校においては 2009 年の学習指導要領の改訂により,キャリア教育の重視の姿勢が示されている。その中でソーシャルスキルは人間関係形成・社会形成能力として,その涵養が求められている。これまで,小中学校の教員や保護者を対象として SST の標的スキルのニーズを調査し,発達段階によって必要とされる標的スキルの異なることが明らかになっている (藤枝・新井, 2008; 中台・金山・斉藤・新見, 2003)。しかし,キャリア教育の観点から標的スキルを調査した研究はまだない。本研究の目的は,キャリア教育の一環として実施される SST の標的スキルについて高等学校の教員と企業の人事担当者にニーズ調査を行い,高校生の発達段階に必要とされるスキルを明らかにすることである。
方 法
対象者: A 県公立高等学校教員 21 名。B 県公立高等学校教員 31 名。A 県中小企業団体中央会の 2014 年度版 新卒者就職応援企業カイドブックから無作為に抽出した 50 社うち回答のあった 33 社の担当者。
実施時期: 2014 年 4 月~5 月中旬。
実施方法: B 県高等学校の教員と A 県の企業担当者にはアンケートと実施内容についての説明,依頼書を郵送し,回答を求めた。B 県高等学校の教員の回収率は 42.47%,A 県の企業担当者の回収率は 66.00%であった。
質問紙: Goldstein, Sprafkin, Gershaw, & Klein (1980) の “若者のための社会的スキル” のスキルについて,高等学校の教員には “生徒にとって大切だと思うスキル”,企業担当者には “新入社員にとって大切だと思うスキル” として “非常に大切だと思う (7)” から “ぜんぜん大切だと思わない (1)” の 7 件法で回答を求めた。以下の 50 のスキルについて回答を求めた。聴く,会話を始める,会話を続ける,質問する,お礼を言う,自己紹介する,他人を紹介する,敬意を表す,助けを求める,参加する・仲間に入る,指示を与える,指示に従う,謝る,納得させる,自分の感情を知る,感情を表現する,他人の感情を理解する,他人の怒りに対処する,愛情表現する,恐れに対処する,自分を誉める,許可を求める,分け合う,他人を助ける,和解する,自己統制する,権利を主張する,いじめに対処する,他人とのトラブルに対処する,気力を保つ,不平を言う,苦情に応える,恥ずかしさに対処する,孤独感に対処する,疎外感に対処する,友人のために主張する,説得に対応する,失敗に対処する,矛盾した情報に対処する,非難に対処する,難しい会話に対処する,集団の圧力に対処する,何をするか決める,問題の原因が何か見つける,目標を設定する,自分の能力を知る,情報を集める,重要な問題から取り組む,決定を下す,課題に集中する。
結 果
高等学校の教員の回答
A 県立公立高等学校教員と B 県立公立高等学校の教員の回答を集計し,50 項目について重要度の平均点を算出した。スキルの重要度は上位から,お礼を言う,聴く,謝る,他人の感情を理解する,目標を設定する,何をするか決める,助けを求める,自己統制する,いじめに対処する,他人を助けるであった。
企業担当者の回答
企業担当者の回答の 50 項目について重要度の平均点を算出した。スキルの重要度は上位から,お礼を言う,聴く,目標を設定する,謝る,敬意を表す,質問する,気力を保つ,問題の原因が何か見つける,自己紹介する,参加する・仲間に入るであった。
考 察
高等学校の教員と企業担当者のいずれも重要度が高く評価されたスキルは,お礼を言う,聴く,謝る,目標を設定するであった。以上のスキルが高校生の発達段階に重要である可能性が示唆された。しかし,それ以外のスキルについては,高等学校教員と企業担当者のニーズが異なっていることが明らかになった。お礼を言う,謝るといった対人関係の調整に関わるスキルは,初歩的なスキルから高度なスキルへの移行を示しており,より社会的な存在としての高校生という発達段階に必要とされるスキルであると考えられる。
学校教育における児童・生徒の対人関係の問題の予防に,ソーシャルスキル・トレーニング (Social Skills Training; 以下,SST と表記) が効果をもたらすことが報告されている (渡辺・原田, 2007)。高等学校においても SST が導入されるようになり,その効果が報告されている (原田・渡辺, 2011)。しかし,高校生の発達段階に必要とされるスキルについての研究はいまだ少ない (原田, 2012)。
高等学校においては 2009 年の学習指導要領の改訂により,キャリア教育の重視の姿勢が示されている。その中でソーシャルスキルは人間関係形成・社会形成能力として,その涵養が求められている。これまで,小中学校の教員や保護者を対象として SST の標的スキルのニーズを調査し,発達段階によって必要とされる標的スキルの異なることが明らかになっている (藤枝・新井, 2008; 中台・金山・斉藤・新見, 2003)。しかし,キャリア教育の観点から標的スキルを調査した研究はまだない。本研究の目的は,キャリア教育の一環として実施される SST の標的スキルについて高等学校の教員と企業の人事担当者にニーズ調査を行い,高校生の発達段階に必要とされるスキルを明らかにすることである。
方 法
対象者: A 県公立高等学校教員 21 名。B 県公立高等学校教員 31 名。A 県中小企業団体中央会の 2014 年度版 新卒者就職応援企業カイドブックから無作為に抽出した 50 社うち回答のあった 33 社の担当者。
実施時期: 2014 年 4 月~5 月中旬。
実施方法: B 県高等学校の教員と A 県の企業担当者にはアンケートと実施内容についての説明,依頼書を郵送し,回答を求めた。B 県高等学校の教員の回収率は 42.47%,A 県の企業担当者の回収率は 66.00%であった。
質問紙: Goldstein, Sprafkin, Gershaw, & Klein (1980) の “若者のための社会的スキル” のスキルについて,高等学校の教員には “生徒にとって大切だと思うスキル”,企業担当者には “新入社員にとって大切だと思うスキル” として “非常に大切だと思う (7)” から “ぜんぜん大切だと思わない (1)” の 7 件法で回答を求めた。以下の 50 のスキルについて回答を求めた。聴く,会話を始める,会話を続ける,質問する,お礼を言う,自己紹介する,他人を紹介する,敬意を表す,助けを求める,参加する・仲間に入る,指示を与える,指示に従う,謝る,納得させる,自分の感情を知る,感情を表現する,他人の感情を理解する,他人の怒りに対処する,愛情表現する,恐れに対処する,自分を誉める,許可を求める,分け合う,他人を助ける,和解する,自己統制する,権利を主張する,いじめに対処する,他人とのトラブルに対処する,気力を保つ,不平を言う,苦情に応える,恥ずかしさに対処する,孤独感に対処する,疎外感に対処する,友人のために主張する,説得に対応する,失敗に対処する,矛盾した情報に対処する,非難に対処する,難しい会話に対処する,集団の圧力に対処する,何をするか決める,問題の原因が何か見つける,目標を設定する,自分の能力を知る,情報を集める,重要な問題から取り組む,決定を下す,課題に集中する。
結 果
高等学校の教員の回答
A 県立公立高等学校教員と B 県立公立高等学校の教員の回答を集計し,50 項目について重要度の平均点を算出した。スキルの重要度は上位から,お礼を言う,聴く,謝る,他人の感情を理解する,目標を設定する,何をするか決める,助けを求める,自己統制する,いじめに対処する,他人を助けるであった。
企業担当者の回答
企業担当者の回答の 50 項目について重要度の平均点を算出した。スキルの重要度は上位から,お礼を言う,聴く,目標を設定する,謝る,敬意を表す,質問する,気力を保つ,問題の原因が何か見つける,自己紹介する,参加する・仲間に入るであった。
考 察
高等学校の教員と企業担当者のいずれも重要度が高く評価されたスキルは,お礼を言う,聴く,謝る,目標を設定するであった。以上のスキルが高校生の発達段階に重要である可能性が示唆された。しかし,それ以外のスキルについては,高等学校教員と企業担当者のニーズが異なっていることが明らかになった。お礼を言う,謝るといった対人関係の調整に関わるスキルは,初歩的なスキルから高度なスキルへの移行を示しており,より社会的な存在としての高校生という発達段階に必要とされるスキルであると考えられる。