The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF

(501)

Sat. Nov 8, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 501 (5階)

[PF092] 学生を対象とした保育者省察尺度の構造的妥当性の検討(2)

音山若穂1, 利根川智子2, 三浦主博3, 織田栄子4, 井上孝之5 (1.群馬大学, 2.東北福祉大学, 3.東北生活文化大学短期大学部, 4.聖霊女子短期大学, 5.岩手県立大学)

Keywords:保育者省察尺度, 対話型アプローチ, 保育者養成

問題 保育者養成において保育実践の省察力の育成は重要な課題である。和田ら(2010)はホールシステムアプローチを保育現場や保育士養成の学びに適用することを提案し,この一手法であるワールドカフェについては実習指導を始めとした養成教育に取り入れる試みがなされている(例えば利根川ら,2011)。ホールシステムアプローチは全参加者がじっくりとテーマに沿った話し合いを重ね,気づきや洞察を深めるという点に特徴があり,実践の効果を検証するためには,話し合いの終了後に保育の省察力を簡便に評価できる指標が求められていた。保育者の省察尺度の一つに杉村ら(2009)の尺度が挙げられるが,保育士を対象とした信頼性・妥当性は確認されているものの,養成課程の学生を対象とした検証は行われていない。もとより学生と現職者とでは省察の内容も深さも異なっていることが予測される。前報告(音山ら,2013)では杉村ら (2006)の尺度を用いて学生を対象に調査し分析したが,改訂版である杉村ら(2009)の尺度については未検証であった。そこで本研究では,杉村ら(2009)の尺度を用いて学生を対象にカフェの前後において調査し,探索的因子分析によって項目間の構造を探ることとした。
方法 1)対象:関東・東北の保育者養成校5大学・短大の2年生430名(a)。うち2校285名はカフェ実施後にも測定を行なった(b)。
2)指標 杉村ら(2009)の36項目。「保育者自身に関する省察」,「子どもに関する省察」,「他者をとおした省察」いずれも12項目の3下位尺度で構成される。「次の項目について,あなたはこれまでの保育(実習)を振り返ってどのくらい意識しましたか。あてはまると思うところに○印をつけてください」という設問にそれぞれ「1:全くない」~「5:いつもあった」の5段階で評定を求めた。
3)手続き (a)授業中に調査票を配布し,その場で記入・回収した(カフェ未実施)。(b)実習指導の一環のワールドカフェを行い,終了後に調査票を配布しその場で記入・回収した(カフェ実施後)。
結果 1)カフェ未実施群の探索的因子分析
杉村ら(2009)に従い,下位尺度ごとに主因子法,2因子モデル,直接オブリミン回転による探索的因子分析を行った。①「保育者自身に関する省察」では杉村らと同様に「自己考慮」と「自己注意」に相当する項目とに分けられたが,「保育者としての信念について考える」は「自己考慮」,「子どもと話した後,自分の言い方が適切かどうか考える」「子どもに何か言う前に,自分の言動の影響を考える」の2項目は「自己注意」との関連が大であり杉村らとは異なる結果となった。②「子どもに関する省察」ではおおむね杉村らと同様の結果が得られ,「子ども分析」「子ども察知」に分けられた。③「他者を通した省察」においては杉村らと同様「他者情報利用」「他者情報収集」とに分けられたが,「教科書や子育てに関する雑誌・本などを読み,自分の保育観に照らし合わせることがある」は「情報利用」との関連が大であった。
2)カフェ実施後の探索的因子分析
①「保育者自身に関する省察」は「自己考慮」と「自己注意」とに分けられたが,「保育者としての信念について考える」は「自己考慮」,「子どもと話した後,自分の言い方が適切かどうか考える」は「自己注意」との関連が大であった。②「子どもに関する省察」では「子ども分析」「子ども察知」に分けられたが,「子どもと話した後,子どもがどのように受け止めたかを考える」が「子ども察知」に含まれた。③「他者を通した省察」においては「他者情報利用」「他者情報収集」とに分けられたが,「教科書や子育てに関する雑誌・本などを読み,自分の保育観に照らし合わせることがある」は「情報利用」との関連が大であった。
考察 以上の結果はいずれも,おおむね杉村ら(2009)に一致しており,また,旧版である杉村ら(2006)との共通項目を用いて分析した結果(音山ら,2013)ともほぼ一致するものであった。“保育者としての信念”に関する項目など,一部項目の位置づけは異なるものの,学生を対象としたデータにおいても杉村らの概念妥当性が示唆されたと言えるだろう。今回用いた尺度では「他者を通した省察」において,情報収集的な側面と,得た情報を自己の保育の省察に利用する側面とが明確に区別できる点が,対話による気づきや洞察を確認する上で有用であると思われる。
文献 杉村伸一郎・朴信永・若林紀乃(2009) 保育における省察の構造。幼年教育研究年報, 5-14。
本研究は平成25年度日本学術振興会科学研究費(学術研究助成基金助成金)基盤研究(C)24500887助成を受けた。