[PF094] 中学生の社会的行動についての研究(98)
全体的自己価値と向社会的行動の共時的因果関係の検討
Keywords:中学生, 全体的自己価値, 向社会的行動
【目的】山本らの一連の研究では, 中学生の全体的自己価値の変化や,全体的自己価値の変化に影響を与えている要因について検討している。研究(89)では,向社会的行動と全体的自己価値との関連を横断的に検討した結果,中1では向社会的行動を多く行っているほど全体的自己価値が高かった (山本ら,2013)。研究(96)では,縦断データによる交差遅延効果モデルを用いて,全体的自己価値と向社会的行動の因果関係を検討した結果,男子の中2時点の向社会的行動が中3時点での全体的自己価値に影響していた(山本ら,2014)。本研究では,全体的自己価値と向社会的行動の因果関係について,共時的な因果関係がみられるのか,双方向の影響を,同時効果モデルを用いて検討する。
【方法】1.調査実施時期と調査協力者 調査は愛知県内の中学生と福島県内の中学生に実施した。調査実施時期は,中学1年:2002年9月中旬,中学2年:2003年9月下旬,中学3年:2004年9月下旬であった。今回の分析は,3時点すべての全項目に回答のあった愛知県の中学生347名(男子157名,女子190名)について行った。
2.調査内容 ①向社会的行動(6項目):困っている人を助けた,忘れ物をした人に自分の物を貸してあげたなど向社会的行動を,この3ケ月にどれくらいしたか,4段階評定(何度もあった~一度もなかった)でたずねた。②全体的自己価値(5項目):自分のことが好きであるなど自分をどのように評価しているかを6段階評定でたずねた。
【結果】1.全体的自己価値と向社会的行動の平均値及び標準偏差 全体的自己価値は,肯定的に評価しているほど高得点になるように合計点を算出した。向社会的行動は行動を多く行っているほど高得点になるよう合計点を算出した(Table1)。
2.全体的自己価値と向社会的行動の因果関係の検討 同時効果モデルを用いて(Fig.),全体的自己価値と向社会的行動の因果関係を検討した。
(1)男子 モデルの推定結果をTable2に示した。χ2=9.160(p=.329)であり,適合度の指標は, GFI=.981, AGFI=.951,CFI=.996,RMSEA=.030であり,十分な値であった。中2時点では,全体的自己価値が向社会的行動へ影響していたが,その逆の影響はみられなかった。しかし中3時点では,向社会的行動が全体的自己価値へ影響し,その逆の影響はみられなかった。
(2)女子 χ2=3.851(p=.921)であり,適合度の指標は,GFI=.993, AGFI=.984,CFI=1.000,RMSEA=.000であった。全体的自己価値の経年変化と向社会的行動の経年変化はみられたものの,全体的自己価値から向社会的行動への影響も,向社会的行動から全体的自己価値への影響も,いずれも有意なパスはみられなかった。
【考察】本研究の目的は,全体的自己価値と向社会的行動の共時的な因果関係を検討することであった。その結果,男子については,中2時点では全体的自己価値が向社会的行動へ影響し,中3時点では,向社会的行動が全体的自己価値へ影響していた。全体的自己価値が高いことで向社会的行動を行うことができ,向社会的行動を行うことによって自分自身に自信を持ち,全体的自己価値が高くなるといった循環的な影響がみられる可能性が示唆された。
【方法】1.調査実施時期と調査協力者 調査は愛知県内の中学生と福島県内の中学生に実施した。調査実施時期は,中学1年:2002年9月中旬,中学2年:2003年9月下旬,中学3年:2004年9月下旬であった。今回の分析は,3時点すべての全項目に回答のあった愛知県の中学生347名(男子157名,女子190名)について行った。
2.調査内容 ①向社会的行動(6項目):困っている人を助けた,忘れ物をした人に自分の物を貸してあげたなど向社会的行動を,この3ケ月にどれくらいしたか,4段階評定(何度もあった~一度もなかった)でたずねた。②全体的自己価値(5項目):自分のことが好きであるなど自分をどのように評価しているかを6段階評定でたずねた。
【結果】1.全体的自己価値と向社会的行動の平均値及び標準偏差 全体的自己価値は,肯定的に評価しているほど高得点になるように合計点を算出した。向社会的行動は行動を多く行っているほど高得点になるよう合計点を算出した(Table1)。
2.全体的自己価値と向社会的行動の因果関係の検討 同時効果モデルを用いて(Fig.),全体的自己価値と向社会的行動の因果関係を検討した。
(1)男子 モデルの推定結果をTable2に示した。χ2=9.160(p=.329)であり,適合度の指標は, GFI=.981, AGFI=.951,CFI=.996,RMSEA=.030であり,十分な値であった。中2時点では,全体的自己価値が向社会的行動へ影響していたが,その逆の影響はみられなかった。しかし中3時点では,向社会的行動が全体的自己価値へ影響し,その逆の影響はみられなかった。
(2)女子 χ2=3.851(p=.921)であり,適合度の指標は,GFI=.993, AGFI=.984,CFI=1.000,RMSEA=.000であった。全体的自己価値の経年変化と向社会的行動の経年変化はみられたものの,全体的自己価値から向社会的行動への影響も,向社会的行動から全体的自己価値への影響も,いずれも有意なパスはみられなかった。
【考察】本研究の目的は,全体的自己価値と向社会的行動の共時的な因果関係を検討することであった。その結果,男子については,中2時点では全体的自己価値が向社会的行動へ影響し,中3時点では,向社会的行動が全体的自己価値へ影響していた。全体的自己価値が高いことで向社会的行動を行うことができ,向社会的行動を行うことによって自分自身に自信を持ち,全体的自己価値が高くなるといった循環的な影響がみられる可能性が示唆された。