[PG008] 教授活動の反復経験が教職課程大学生に与える影響(2)
同一内容の模擬授業の繰り返しによるリフレクションの変化
Keywords:教員養成, 授業経験, リフレクション
Tohyama, Asada, Yoshida & Nisihara (2013)は生理的指標である心拍のR-R Intervalから算出されるリラクセーション率(RLX:Polar Pro Trainer?)とビデオを授業者が授業をリフレクションのキュー(きっかけ)として使用できる可能性を示した。また,遠山・吉田・西原 (2012, 2013)は模擬授業の経験に積み重ねでRLXの変動やリフレクションの内容が変化し,教員としての微視的な発達が示されることを明らかにした。ただし,これらは同じ内容を教える授業を繰り返した経験を扱っていない。だが教員として授業を担当する際,同じ内容を複数回教える中で試行錯誤し教員としての力量を高めていくことも考えられる。そこで本研究では,教職課程を履修している大学生が同一の内容を扱う模擬授業を2回繰り返し,それぞれの授業をリフレクションで振り返る際の内容の変化を検討し,同じ内容を繰り返し教える経験が教職課程の大学生の教師としての力量形成に与える影響を検討する。
方 法
実験に協力したのはN県内の大学の教職課程に所属し,中学校の保健体育の教員になることを志望している大学生男子3名であった。実験協力者は2012年11月から12月にかけて,同一内容の模擬授業(10分間)を2回連続で行った。彼らはこの実験に参加する以前に一度だけ模擬授業をした経験があった。授業の様子はビデオで撮影され,授業時の心拍(R-R interval)は心拍計で記録された。なお,1回目と2回目の間に授業者本人,教職科目を担当する大学教員,生徒役を演じた教職志望の大学生の中で,授業の感想や改善に関する意見交換が行われた。2014年2月に授業者にインタビューを行った。授業者はまず自身の2回繰り返した模擬授業のうち1回目の模擬授業のビデオを見て,自分が行った授業を想起した後,R-R intervalより算出されたRLXのグラフと照らし合わせながら,再度ビデオの授業を見て,授業を行う際の心理的作業負荷の変動を意識しながら,リフレクションを行った。大学教職課程の教員がインタビュアーとしてリフレクションに参加し,心理的作業負荷の変動要因について報告を求めた。1回目の模擬授業のリフレクションに関するインタビューが終了した後,10分の休憩を取り,その後同様の手続きで2回目の模擬授業のリフレクションに関するインタビューを行った。インタビューの様子はビデオカメラで撮影され,分析された。
結果と考察
インタビューで語られた内容について,内容ごとに以下の4つのカテゴリーに分類した。そのカテゴリーは,(1) 授業者自身の個人的な気分や不安等の心的な状態または教師役割に関連しない行動などに関する「個人的反応」 (2) 授業の内容,進行に関連する教師としての行動や意志決定に関する「教授行動」 (3) 生徒の反応や理解,内面的な変化を含めた,生徒の学びに関する「生徒理解」 (4) 授業者の体の動きに関連する「身体活動」であった。繰り返し行った2回の授業のそれぞれについてリフレクションを行った際に語られた内容の単位ごとに分類したところ,3人の実験協力者のリフレクションにおいて,「教授行動」に関する内容が多い事が共通して示された。一方で「生徒理解」の言及は多くは見られず,生徒の思考を想定しながらの授業設計には至っていないことが示唆された。また,「個人的反応」として個人的な苦手意識も多く示された。繰り返しによるリフレクションの量的な差異は明確でなかったが,質的な差異として3人の実験協力者が共通して「2回目はリラックスしてできたが,上手く授業できた訳ではない」と述べていた。
Table 1 各カテゴリーの出現回数
本研究は平成26年度より科学研究費補助金(基盤研究(C))課題番号23650339)の交付を受けて行っている
方 法
実験に協力したのはN県内の大学の教職課程に所属し,中学校の保健体育の教員になることを志望している大学生男子3名であった。実験協力者は2012年11月から12月にかけて,同一内容の模擬授業(10分間)を2回連続で行った。彼らはこの実験に参加する以前に一度だけ模擬授業をした経験があった。授業の様子はビデオで撮影され,授業時の心拍(R-R interval)は心拍計で記録された。なお,1回目と2回目の間に授業者本人,教職科目を担当する大学教員,生徒役を演じた教職志望の大学生の中で,授業の感想や改善に関する意見交換が行われた。2014年2月に授業者にインタビューを行った。授業者はまず自身の2回繰り返した模擬授業のうち1回目の模擬授業のビデオを見て,自分が行った授業を想起した後,R-R intervalより算出されたRLXのグラフと照らし合わせながら,再度ビデオの授業を見て,授業を行う際の心理的作業負荷の変動を意識しながら,リフレクションを行った。大学教職課程の教員がインタビュアーとしてリフレクションに参加し,心理的作業負荷の変動要因について報告を求めた。1回目の模擬授業のリフレクションに関するインタビューが終了した後,10分の休憩を取り,その後同様の手続きで2回目の模擬授業のリフレクションに関するインタビューを行った。インタビューの様子はビデオカメラで撮影され,分析された。
結果と考察
インタビューで語られた内容について,内容ごとに以下の4つのカテゴリーに分類した。そのカテゴリーは,(1) 授業者自身の個人的な気分や不安等の心的な状態または教師役割に関連しない行動などに関する「個人的反応」 (2) 授業の内容,進行に関連する教師としての行動や意志決定に関する「教授行動」 (3) 生徒の反応や理解,内面的な変化を含めた,生徒の学びに関する「生徒理解」 (4) 授業者の体の動きに関連する「身体活動」であった。繰り返し行った2回の授業のそれぞれについてリフレクションを行った際に語られた内容の単位ごとに分類したところ,3人の実験協力者のリフレクションにおいて,「教授行動」に関する内容が多い事が共通して示された。一方で「生徒理解」の言及は多くは見られず,生徒の思考を想定しながらの授業設計には至っていないことが示唆された。また,「個人的反応」として個人的な苦手意識も多く示された。繰り返しによるリフレクションの量的な差異は明確でなかったが,質的な差異として3人の実験協力者が共通して「2回目はリラックスしてできたが,上手く授業できた訳ではない」と述べていた。
Table 1 各カテゴリーの出現回数
本研究は平成26年度より科学研究費補助金(基盤研究(C))課題番号23650339)の交付を受けて行っている