[PG010] 教育現場におけるQOLと教師が求める援助(2)
教師QOLと被援助志向性,情緒的消耗感との関連
Keywords:QOL, 教師援助
問題と目的
教育現場において,教師のバーンアウトは大きな問題であり,文部科学省(2012)によってもメンタルヘルスの問題が指摘されている。著者らは研究1で小学校教師のQOLを測定するための尺度を構成した。これは,日常の職務内容だけでなく,人間関係や職務環境などを含めた教師としての職業生活の側面をポジティブな観点から検討し,教師援助に活かすためのものである。
本研究では、教師QOLと被援助志向性,情緒的消耗感との関連について検討する。これは,教師の精神的健康の維持に有効となるとともに、専門的援助者(カウンセラーやソーシャルワーカーなど)による教員への支援体制構築にも寄与すると考える。
方法
1)調査時期および調査対象 :研究(1)を参照。
2)調査内容
①教師QOL:研究(1)の教師QOL尺度を参照。
②被援助志向性:
田村・石隈(2001),田村・石隈(2006)を参考に若干の改変を加え,「児童に対する私の教育的活動(保護者対応等を含む)について,他者からの適切な助言がほしい」「児童に対する私の教育的活動(保護者対応等を含む)について,一緒に対処してくれる人がほしい」など5項目を設定した。
③情緒的消耗感:
Maslach & Jackson(1981),伊藤(2000)を参考に情緒的消耗感を測定する項目,「体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある」,「こんな仕事もうやめたいと思うことがある」など5項目を設定した。
②については5段階評定(5.そう思う~1.そう思わない),③は4段階評定(4.あてはまる~1.あてはまらない)で回答をそれぞれ求めた。
結果と考察
1)被援助志向性及び情緒的消耗感項目について:
被援助志向性の5項目と情緒的消耗感の5項目についてそれぞれ主成分分析を行った。その結果,両者とも尺度の1因子性が確認された。被援助志向性項目の主成分負荷量は,.88~.71であった。
また,第一主成分による説明率が68.3%,クロンバックのα係数が.88となった。
一方,情緒的消耗感の主成分負荷量は,.88~.79であった.説明率は69.0%,α係数は.89となった。
そこで,被援助志向性および情緒的消耗感の項目については一次元の尺度として使用できると考えた。
2)教師QOLの各下位尺度と被援助志向性,情緒的消耗感との関連について:
教師QOLの4下位尺度と被援助志向性および情緒的消耗感との関連について,ピアソンの相関係数を算出した(Table1)。その結果,教師QOLのすべての下位尺度と,情緒的消耗感との間に有意な負の相関がみられた。
“教師適性領域”は「事務処理をうまくこなしている」,「学校行事をうまくこなしている」,「勤務とプライベートの時間をバランス良くとっている」などといった日々の職務をうまくこなしていくという内容を含んでおり,教師の職務の多忙感が情緒的消耗感を高めているとする小橋(2013)の指摘に合致する結果となった。
また,“協働や連携”は「職員会議やその他教員同士の打ち合わせ等での情報交換ができている」,「保護者や地域住民と協力し合える」といった同僚教師や学校関係者との人間関係に関する項目を含んでおり,職場の人間関係などがストレッサーとなって情緒的消耗感が生起するとの指摘(Brookings, Bolton, Brown&McEvoy,1985)を間接的に支持するものと考えられる。
他方,被援助志向性と教師QOLの関連について有意な相関が見られなかった。Bullard(2010)は教師の被援向性は高いとはいえないと報告している。教師QOLが低下しても援助要請を行わないことは,援助者(カウンセラーやソーシャルワーカーなど)とのチーム援助を一層難しくし、状況を悪化させると予想される。水野・中林・佐藤(2011)は,教育現場でのチーム援助について,協働的な学校雰囲気が重要であると指摘している。今後、教師が援助を求めやすい状況について検討していくことが必要と考える。
本研究では,教師QOLと情緒的消耗感との間に関連性があり,教師QOLを高めることが情緒的消耗感を低減させる可能性が考察された。今後,教師QOLの各下位尺度がどのように情緒的消耗感に影響を与えているのか詳細に検討する必要があると考える。
教育現場において,教師のバーンアウトは大きな問題であり,文部科学省(2012)によってもメンタルヘルスの問題が指摘されている。著者らは研究1で小学校教師のQOLを測定するための尺度を構成した。これは,日常の職務内容だけでなく,人間関係や職務環境などを含めた教師としての職業生活の側面をポジティブな観点から検討し,教師援助に活かすためのものである。
本研究では、教師QOLと被援助志向性,情緒的消耗感との関連について検討する。これは,教師の精神的健康の維持に有効となるとともに、専門的援助者(カウンセラーやソーシャルワーカーなど)による教員への支援体制構築にも寄与すると考える。
方法
1)調査時期および調査対象 :研究(1)を参照。
2)調査内容
①教師QOL:研究(1)の教師QOL尺度を参照。
②被援助志向性:
田村・石隈(2001),田村・石隈(2006)を参考に若干の改変を加え,「児童に対する私の教育的活動(保護者対応等を含む)について,他者からの適切な助言がほしい」「児童に対する私の教育的活動(保護者対応等を含む)について,一緒に対処してくれる人がほしい」など5項目を設定した。
③情緒的消耗感:
Maslach & Jackson(1981),伊藤(2000)を参考に情緒的消耗感を測定する項目,「体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある」,「こんな仕事もうやめたいと思うことがある」など5項目を設定した。
②については5段階評定(5.そう思う~1.そう思わない),③は4段階評定(4.あてはまる~1.あてはまらない)で回答をそれぞれ求めた。
結果と考察
1)被援助志向性及び情緒的消耗感項目について:
被援助志向性の5項目と情緒的消耗感の5項目についてそれぞれ主成分分析を行った。その結果,両者とも尺度の1因子性が確認された。被援助志向性項目の主成分負荷量は,.88~.71であった。
また,第一主成分による説明率が68.3%,クロンバックのα係数が.88となった。
一方,情緒的消耗感の主成分負荷量は,.88~.79であった.説明率は69.0%,α係数は.89となった。
そこで,被援助志向性および情緒的消耗感の項目については一次元の尺度として使用できると考えた。
2)教師QOLの各下位尺度と被援助志向性,情緒的消耗感との関連について:
教師QOLの4下位尺度と被援助志向性および情緒的消耗感との関連について,ピアソンの相関係数を算出した(Table1)。その結果,教師QOLのすべての下位尺度と,情緒的消耗感との間に有意な負の相関がみられた。
“教師適性領域”は「事務処理をうまくこなしている」,「学校行事をうまくこなしている」,「勤務とプライベートの時間をバランス良くとっている」などといった日々の職務をうまくこなしていくという内容を含んでおり,教師の職務の多忙感が情緒的消耗感を高めているとする小橋(2013)の指摘に合致する結果となった。
また,“協働や連携”は「職員会議やその他教員同士の打ち合わせ等での情報交換ができている」,「保護者や地域住民と協力し合える」といった同僚教師や学校関係者との人間関係に関する項目を含んでおり,職場の人間関係などがストレッサーとなって情緒的消耗感が生起するとの指摘(Brookings, Bolton, Brown&McEvoy,1985)を間接的に支持するものと考えられる。
他方,被援助志向性と教師QOLの関連について有意な相関が見られなかった。Bullard(2010)は教師の被援向性は高いとはいえないと報告している。教師QOLが低下しても援助要請を行わないことは,援助者(カウンセラーやソーシャルワーカーなど)とのチーム援助を一層難しくし、状況を悪化させると予想される。水野・中林・佐藤(2011)は,教育現場でのチーム援助について,協働的な学校雰囲気が重要であると指摘している。今後、教師が援助を求めやすい状況について検討していくことが必要と考える。
本研究では,教師QOLと情緒的消耗感との間に関連性があり,教師QOLを高めることが情緒的消耗感を低減させる可能性が考察された。今後,教師QOLの各下位尺度がどのように情緒的消耗感に影響を与えているのか詳細に検討する必要があると考える。