The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PG013] 中学校生活に関する期待感について

小学6年生を対象とした質問紙調査から

小倉正義1, 和田邦美1 (鳴門教育大学)

Keywords:小中移行期, 期待感, 適応

【問題と目的】
小学校を卒業し中学校に入学することは,児童生徒にとって様々な期待や不安を伴う環境移行の一つである(南ら,2011など)。そして,中学校生活への適応を考えるうえで,この児童生徒の不安や期待について研究することは重要であると考えられる。この中学校生活への不安や期待は,地域や学校の状況によっても変わってくると思われる。
そこで本研究では,この小学校から中学校への移行期に小学6年生が抱く中学校生活への期待感について,地域や学校の差にも着目して検討することを目的とする。地域や学校の差としては,具体的には一つの小学校から一つの中学校(以下,一小一中と表記する)に行く地域と,複数の小学校から一つの中学校(以下,複小一中と表記する)に行く地域で期待感の違いと,6年生の学級が一つの学級(単級)の小学校とその他の小学校での期待感の違いを検討する。

【方法】
調査時期 2014年2月
調査対象 A県内の小学校9校の小学6年生711名に質問紙調査を実施し,回答に不備等がみられた10名を除いた701名(男子358名,女子338名,不明5名)を分析対象とした。
質問紙の内容 中学校生活への期待感に関する12項目に対して,「はい」「どちらかというと,はい」「どちらかというと,いいえ」「いいえ」の4件法で回答を求めた。この12項目は,第2発表者が,本研究とは異なる調査対象に質問紙調査を行い,作成したものである。

【結果と考察】
最初に,中学校生活への期待感12項目それぞれの平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示す。その結果,「制服を着るのが楽しみだ」,「部活動で 先ぱいに教えてもらうことが楽しみだ」といった項目の平均値が高く,「学期ごとの大きな試験(テスト)が楽しみだ」「中学校の成績(せいせき)が楽しみだ」など,勉強に関する項目の平均値が低いことが示唆された。
次に,性差を検討するために,項目ごとにt検定を行った。その結果,「制服を着るのが楽しみだ」(t(694) = 2.85,p < .01,男子<女子),「学期ごとの大きな試験(テスト)が楽しみだ」(t(694) = 3.00,p < .01,男子>女子),「中学校の成績(せいせき)が楽しみだ」(t(694) = 3.94,p < .01,
男子>女子)で有意差がみられた。このことから男子よりも女子の方が制服を楽しみにしているものが多く,勉強は全体的に期待感が高くないことを合わせて考えると,男子よりも女子の方が楽しみにしていないことが示唆された。
さらに,地域差を検討するために,まず独立変数を地域差(一小一中と複小一中)として,t検定を行った。その結果,「たくさんの先生と出会えることが楽しみだ」(t(699) = 2.82, p < .01,一小一中<複小一中),「相談(そうだん)できる先生を見つけたい」(t(699) = 3.16,p < .01,一小一中<複小一中)で有意差がみられた。このことから,一つの小学校から一つの中学校に進学する児童よりも,複数の小学校から一つの中学校に進学する児童の方が,先生に対する期待が高いと考えられた。また,単級の小学校か否かを独立変数としてt検定を行った結果,「部活動で先輩に教えてもらうことが楽しみだ」(t(699) = 2.79, p < .01,単級<その他),「部活動で先生の指導を受けられることが楽しみだ」(t(699) = 2.41, p < .05,単級<その他),「上級生にいろいろなことを教えてもらうのが楽しみだ」(t(699) = 2.04, p < .01,単級<その他)で有意差がみられた。このことから,単級の学校よりも,その他の学校のほうが部活動や上級生に関する期待が高いことがうかがわれた。上記の結果から,地域や学校によって児童が中学校生活に抱く期待感に若干の違いがあることが明らかになった。