The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PG020] 中学校教師のユーモア態度尺度の作成

河村昭博1, 河村茂雄2 (1.早稲田大学大学院, 2.早稲田大学)

Keywords:教師の指導行動, ユーモア表出, 中学生

【問題と目的】
近年,学校現場の問題の中で,教師の指導行動の在り方,より広い意味で捉えた場合の教師のコミュニケーション力が問われている。文部科学省(2008)の提言では, 「教員の中には, 児童等の心を理解する能力や意欲に欠け,学級経営や生徒指導を適切に行うことができない者等が存在することも事実である。」と指摘されている。
一方,児童生徒個々の意欲が高く,学級集団も親和的でまとまっている学級は,学級内が明るく笑いがたえないことが指摘されている(河村, 2012)。このような状態は児童生徒同士の関係性の相互作用の結果である面と,担任する教師の指導行動や態度の面,つまり,教師のコミュニケーション力,その中でも教師の意識下にユーモアがあることが影響していると考えられる。
「明るくて活気のあるクラスとはいったいどのようなものなのか?」,その指標をかかげ言及している先行研究は少ない。教師の勢力資源の「明朗性」(河村,1997)を踏まえ,「明るくて活発なクラス」とは,傍観者の感覚的・印象的なものでしかとらえられないものであり,ある教師の明朗性やその影響力が,どれだけのものであるかの判断は非常に難しい。そこで明朗性の中に含まれる「ユーモア」を取り上げ,学級経営はもとより,生徒・児童たちの学習意欲にどのように関与し,また喚起できているものなのか,面白くない先生,周りの空気を読めない先生とは,どのようなタイプの先生なのかを検証することは,意味があると考えられる。
ユーモアについては塚脇・深田・樋口(2011)が面白さや可笑しさを生起させる刺激を刺す概念として定義しているが,教師がユーモアを持って生徒に接する場合に生徒の学習意欲を高める側面があると考えられる。この点については検討されていない。
さらに,ユーモアを測定する尺度は,社会人に向けてのものはあるが,学校現場に摘要できるような尺度は未だ見られない。そのため,本研究では学校現場で適用できる尺度の開発を行うことが目的である。
【方法】
調査時期 2013年6月に調査を実施した。
調査対象 首都圏の公立中学生1校435名(男子223, 女子212名)を調査の対象とした。
測定用具 生徒が教師のユーモアに対して日頃どのような態度をいだいているかを測定するために,上野(1993)と宮戸・上野(1996)が開発したユーモア態度尺度を参考に教育心理学関係の教員2名と大学院生5名と検討し一部文言を中学生用に変更し作成した。24項目,5件法で回答を求めた。
【結果】
因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行ったところ,3因子構造であることが確認された。第Ⅰ因子は,「先生はみんなを笑わせるようなことを言うことがある。」などの項目が高い負荷を示し,「遊戯的ユーモア」の因子と解釈した。第2因子は「先生はみんなに悪口に近い笑い話をすることがある」などの項目が高い負荷を示し,「攻撃的ユーモアの因子と解釈した。 第3因子は「先生はみんなを励ますために笑わせてくれることがある」などの項目が高い負荷を示し,「支援的ユーモア」の因子と解釈した。したがって,上野(1993)と宮戸・上野(1996)と同様の「遊戯的ユーモア」,「攻撃的ユーモア」,「支援的ユーモア」の3因子構造となった。各下位尺度の信頼性係数を算出したところ「遊戯的ユーモア」がα=.945,「攻撃的ユーモア」がα=.952,「支援的ユーモア」がα=.920であった。このことから,中学生用に改変した「ユーモア態度尺度」の3つの因子の下位尺度は,ある程度の内的整合性があることが確認された。
【考察】
中学生用に改変したユーモア態度尺度は「遊戯的ユーモア」,「攻撃的ユーモア」,「支援的ユーモア」の3因子18項目からなることが示され, その信頼性が確認された。このことから中学生のユーモア態度は遊戯的側面と攻撃的側面,支援的側面からなっていることが考えられる。
キーワード:教師の指導行動、ユーモア表出, 中学生