[PG021] 中学生の学級編成前後における学級生活満足感の変化と不登校傾向
Keywords:不登校傾向, 学級生活満足感, 学級編成
目的
中学生の学級生活満足感は,不登校傾向の増減に関与する(五十嵐・萩原, 2009)が,年度が替わり,クラス替え後の状況に踏み込んだ追跡調査は報告されていない。旧学級での状況が新年度の登校意欲にまで関与するか,新学級の状況にのみ左右されるのかを明らかにすることは,学級経営を基礎にした不登校の予防的支援を行うために重要である。そこで,本研究ではこの点を検討する。
方法
【対象者】2つの公立中学校,1~2年生,440名(男子196名, 女子244名)。いずれの対象者についても,新年度にクラス替えが実施されたことを確認している。【調査内容】学級満足感:河村(1999a; 1999b)を用いた。「承認感」「被侵害感」の計20項目。5件法。不登校傾向:五十嵐(2012)を用いた。「全般的な登校意欲の喪失傾向」「享楽的活動の優先傾向」「心理的な不調傾向」の計12項目。4件法。【調査時期と手続】2013年1月~3月(Time1),4月~5月(Time2)に,各学級で学級担任が一斉に実施し,その場で回収された。
結果
(1)承認感の変化と不登校傾向との関連
まず,承認感の平均値(Time1:M=34.19,Time2:M=34.65)を基準として対象者を高低群分け(HLと表記)し,Time2における不登校傾向について,これらの群分けを要因とする二要因分散分析を行った。その結果,全般的な登校意欲の喪失傾向で交互作用が有意(F[1/439]=3.90, p<.05)であり,心理的な不調傾向はTime2の主効果が有意(F[1/439]=8.63, p<.01)であった。
(2)被侵害感の変化と不登校傾向との関連
同様に,被侵害感の平均値(Time1:M=19.80,Time2:M=18.74)を基準として対象者を高低群分け(hlと表記)し,Time2における不登校傾向について,これらの群分けを要因とする二要因分散分析を行った。その結果,全般的な登校意欲の喪失傾向でTime1(F[1/439]=4.81, p<.05),Time2(F[1/
439]=17.42, p<. 001),心理的な不調傾向でTime1(F[1/439]=23.05, p<.001),Time2(F[1/439] =41.96, p<.001)の主効果が有意であった。
(3)承認感と被侵害感の組合せの変化と不登校傾向との関連
上記から対象者を4群分けしたうえで,Time2における不登校傾向について,各時期における群分けを要因とする二要因分散分析を実施した。なお,対象者数が10名未満の群については,分析から除外した。また,多重比較はTukey法で行った。その結果,全般的な登校意欲の喪失傾向でTime2(F[3/429]=5.01, p<.01),享楽的活動の優先傾向でTime2(F[3/429] =2.85, p<.05),心理的な不調傾向でTime1(F[3/429]=4.37, p<.01),Time2(F[3/429]=
14.26, p<.001)の主効果が有意であった。
考察
学級編成後の,なんとなく登校したくない傾向は,特にその時点の学級の被侵害感の高さに関与し,学級編成後の心理的な不調を伴う不登校傾向は,特に新旧いずれの学級でも被侵害感の高さと関与する可能性が示唆された。よって,被害感は当該時点での全般的登校意欲を低下させ,長期的には精神症状を伴う不登校に結びつく可能性がある。一方,学級編成後の遊びを優先させたい傾向は,その時点の学級で居心地が悪い場合に低下することが示された。対人関係の自己効力感低下が関連する可能性があり,詳細な検討が必要である。
*本研究は,科研費(23730610)の助成を受けた。
中学生の学級生活満足感は,不登校傾向の増減に関与する(五十嵐・萩原, 2009)が,年度が替わり,クラス替え後の状況に踏み込んだ追跡調査は報告されていない。旧学級での状況が新年度の登校意欲にまで関与するか,新学級の状況にのみ左右されるのかを明らかにすることは,学級経営を基礎にした不登校の予防的支援を行うために重要である。そこで,本研究ではこの点を検討する。
方法
【対象者】2つの公立中学校,1~2年生,440名(男子196名, 女子244名)。いずれの対象者についても,新年度にクラス替えが実施されたことを確認している。【調査内容】学級満足感:河村(1999a; 1999b)を用いた。「承認感」「被侵害感」の計20項目。5件法。不登校傾向:五十嵐(2012)を用いた。「全般的な登校意欲の喪失傾向」「享楽的活動の優先傾向」「心理的な不調傾向」の計12項目。4件法。【調査時期と手続】2013年1月~3月(Time1),4月~5月(Time2)に,各学級で学級担任が一斉に実施し,その場で回収された。
結果
(1)承認感の変化と不登校傾向との関連
まず,承認感の平均値(Time1:M=34.19,Time2:M=34.65)を基準として対象者を高低群分け(HLと表記)し,Time2における不登校傾向について,これらの群分けを要因とする二要因分散分析を行った。その結果,全般的な登校意欲の喪失傾向で交互作用が有意(F[1/439]=3.90, p<.05)であり,心理的な不調傾向はTime2の主効果が有意(F[1/439]=8.63, p<.01)であった。
(2)被侵害感の変化と不登校傾向との関連
同様に,被侵害感の平均値(Time1:M=19.80,Time2:M=18.74)を基準として対象者を高低群分け(hlと表記)し,Time2における不登校傾向について,これらの群分けを要因とする二要因分散分析を行った。その結果,全般的な登校意欲の喪失傾向でTime1(F[1/439]=4.81, p<.05),Time2(F[1/
439]=17.42, p<. 001),心理的な不調傾向でTime1(F[1/439]=23.05, p<.001),Time2(F[1/439] =41.96, p<.001)の主効果が有意であった。
(3)承認感と被侵害感の組合せの変化と不登校傾向との関連
上記から対象者を4群分けしたうえで,Time2における不登校傾向について,各時期における群分けを要因とする二要因分散分析を実施した。なお,対象者数が10名未満の群については,分析から除外した。また,多重比較はTukey法で行った。その結果,全般的な登校意欲の喪失傾向でTime2(F[3/429]=5.01, p<.01),享楽的活動の優先傾向でTime2(F[3/429] =2.85, p<.05),心理的な不調傾向でTime1(F[3/429]=4.37, p<.01),Time2(F[3/429]=
14.26, p<.001)の主効果が有意であった。
考察
学級編成後の,なんとなく登校したくない傾向は,特にその時点の学級の被侵害感の高さに関与し,学級編成後の心理的な不調を伴う不登校傾向は,特に新旧いずれの学級でも被侵害感の高さと関与する可能性が示唆された。よって,被害感は当該時点での全般的登校意欲を低下させ,長期的には精神症状を伴う不登校に結びつく可能性がある。一方,学級編成後の遊びを優先させたい傾向は,その時点の学級で居心地が悪い場合に低下することが示された。対人関係の自己効力感低下が関連する可能性があり,詳細な検討が必要である。
*本研究は,科研費(23730610)の助成を受けた。