日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PG024] 高校生におけるソーシャルスキル教育がメンタルヘルスに及ぼす効果

茅野眞起子1, 岡安孝弘2 (1.東京都立新宿山吹高等学校, 2.明治大学)

キーワード:ソーシャルスキル教育, メンタルヘルス

目 的
児童生徒の人間関係上のトラブルから引き起される問題の改善を図ろうとすることを目的とした行動療法的介入方法のひとつにソーシャルスキル・トレーニング(SST)がある。近年では,学校不適応や問題行動を予防しようとする立場が重視されるようになり,学級を1つの単位とした集団SSTの有効性が検証されてきた。高年齢の生徒に対する集団SSTでは,対人不安のマネジメントや対人的ストレス状況におけるコーピングスキルの習得など,認知行動的な要素を含めた介入も,習得したソーシャルスキルを実行を促進する上で重要であると考えられる。そこで本実践研究では,不登校を経験した生徒が多く入学する高校において,従来のSSTでよく行われてきたアサーション・トレーニングに,認知行動療法的観点から不安やストレスをマネジメントするためのトレーニングを加えたソーシャルスキル教育プログラムを実践し,その効果について検討した。

方 法
対象者
東京都内のA高校の新入生189名(男子100名,女子89名)を対象として,プログラムを実践し,実施前と実施後の2回の効果判定調査に有効回答をした106名(1年生男子48名,1年生女子47名,2年生男子9名,2年生女子2名)を分析対象とした。
実施時期・手続き
2013年4月から7月までの4回,毎月1回40分,各ホームルームの時間にプログラムを実施した。相談室担当教員が授業を行い,各担任は補助に付いた。
実施内容
第1回:ガイダンス・仲間作り
第2回:不安のマネジメント
第3回:アサーション・トレーニング
第4回:ストレスマネジメント
プログラムの効果判定指標
(1)ソーシャルスキル尺度:戸ヶ崎ら(1997)
(2)対人恐怖心性尺度:堀井・小川(1996)
(3)自尊感情尺度:山本ら(1982)
(4)パブリックヘルス・リサーチセンター・ストレスインベントリー高校生版(PSI):坂野ら(2007)

結果と考察
Table 1は,介入の効果について検討するために,ソーシャルスキル尺度,対人恐怖心性尺度,自尊感情尺度,PSIのストレス反応尺度の介入前後の得点変化を下位尺度ごとに示したものである。
その結果,ストレス反応尺度の「抑うつ・不安」および「無気力」において有意に得点が減少しており,介入による改善効果が認められた。その他,ソーシャルスキルや対人恐怖心性,自尊感情においても若干の改善が認められてはいるが,統計的に有意な変化ではなかった。すなわち,今回の介入では,ソーシャルスキルや対人恐怖心性、自尊感情に対する自己評価には直接的に大きな変化は及ぼしていないものの,それらに対する教育を通して,精神的健康度の改善には寄与している可能性があったものと考えられる。
さらに,介入効果が認められたストレス反応に影響を及ぼす要因について検討するために重回帰分析を行った。その結果,介入を通して「関係維持スキル」や「集団に溶け込めない悩み」「目が気になる悩み」「自分を統制できない悩み」といった対人恐怖心性,さらに「自尊感情」が改善した生徒ほど,ストレス反応が改善している傾向にあることが示された。