日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PG034] 児童生徒の学校満足感に関する研究

所属感と自己肯定感との関連から

猿渡功 (鹿児島県総合教育センター)

キーワード:所属感, 自己肯定感, 学校回避感情

【問題と目的】
不登校を減らすためには,「新たな不登校を生まない」取組が必要とされている(国立教育政策研究所,2012)。吉川・高橋(2014)は,中学生と高校生の学校生活の満足感を形成する要因を検討し,学校嫌いの感情得点の違いにより,自己や他者への信頼感や自尊感情が影響を与えていることを指摘している。そこで,本研究では,小学生,中学生,高校生を対象とし,学校満足感の要因を明らかにするとともに,学校回避感情(病気でもないのに,学校に行きたくないと思う感情)と,所属感(学級の一員としてよかったと思う)及び自己肯定感の関連について検討した。

【方法】
調査対象者:鹿児島県内の公立小学校55校(5年生3,085人),公立中学校30校(2年生:2,651人),公立高等学校14校(2年生:2,836人)合計99校,8,572人であった。
手続き:平成25年8月~10月に「学校生活に関する調査」(学校満足感,自己有用感,所属感,休み時間の過ごし方,学校回避感情,学校回避行動,自己肯定感)の7項目について4件法による質問紙法で実施し,学校満足感の理由,学校回避感情の理由,学校を休まないための対応,相談相手の4項目については,多肢選択法で実施した。

【結果と考察】
1 学校生活への満足感
学校生活が「とても楽しい・わりと楽しい」と回答した割合は,高い(小学生:92.1%,中学生:87.9%,高校生:87.1%)。その理由として,「友達・先生・授業・学校行事・放課後・その他」の中から2つを挙げさせると,「友達」の存在を多く挙げている(小学生:90.4%,中学生:93.1%,高校生:92.5%)。さらに,中高校生は,「部活動など放課後の活動」に満足感を高くもっていることが分かった(中学生:47.6%,高校生:44.7%)。一方,学校回避感情の理由としても「友達」も挙がっている(小学生:33.8%,中学生:27.6%,高校生:15.9%)。つまり,友人関係は,学校生活が楽しく感じられる大きな要因であるとともに,ひとたびうまくいかなくなると,学校へ行きたくない要因に変化するものであると推察される。学校回避感情の中で最も高い理由は,「何となく」であり(小学生:40.8%,中学生:58.8%,高校生:64.9%),いじめや進学への不安といった具体的なものではなく,学校への漠然としたネガティブな感情が大きいことが伺える。学校回避感情を抱きながらも多くの児童生徒は,学校を休まずに行っていること(小学生:85.9%,中学生:82.7%,高校生81.7%)を踏まえると,「これがあるから学校に行きたい」と思える魅力ある学校づくりが一層求められていることとも関連しよう。そのための留意すべき点の一つとして「授業」がある。学校校回避感情の理由として,「授業」は(小学生:24.0%,中学生:30.7%,高校生:37.2%)となっており,授業における達成感や充実感を如何に高めていくかが学校への満足感を高めるための視点となる可能性が示唆された。
2 所属感と自己肯定感と学校回避感情との関連
学級への所属感と自己肯定感との間に,正の有意な相関が得られ(r=.27,p<.01),学級への所属感が高い児童生徒は,自己肯定感が高いことが示唆される。また,所属感と自己肯定感についてそれぞれ学校回避感情とのクロス集計を行った結果,所属感,自己肯定感が高いと,学校回避感情が低いことが分かった(Χ2(1)=487.8,p<.01,Χ2(1)=675.6,p<.01)。つまり,児童生徒の学級への所属意識が高まることで,自己肯定感も高まり,その結果,学校回避感情が低められることが示唆された。
以上の結果から,自分が学級の一員として受け容れられているという感覚は,自分のことが好きである感情を肯定し,学校へ向かおうとする感情を強めていくことに繋がる要因となることが推察される。