[PG042] 教員採用試験における教育心理学
2013年実施問題の分析を通して見えるもの
Keywords:教員採用試験, 教育心理学
1.はじめに
教員採用試験は教員として必要最低限の知識や技能をチェックする機会として機能していると考えられ,教員の「質保証」の観点からもその重要性は明らかであるといえよう。しかし,この教員採用試験については,多くの問題が指摘されており(例えば,布村・坂本(2010)),教員採用試験と教育心理学の関係については,教育心理学が自治体によってその数や内容がまちまちであることが指摘されている(竹内(2010))。そこで本研究では,現状の教員採用試験と教育心理学の関係を俯瞰し,その課題を明確にするという目的で,2014年夏に実施された教員採用試験の問題を分析し,教育心理学の知見がどのような形で問われているのかを調査した。
2.方法
【調査対象】2013年夏に48の自治体で実施された教員採用試験問題(教職教養筆記試験)を対象とした。
【分析方法】教育心理学の知見について出題されている問題を対象とし,そこで問われているキーワードの数を抽出した。ここでいうキーワードとは,理論名,現象名,人名である。従来の研究では,設問数を分析したものが多いが,ひとつの設問において複数の知識項目が問われていることが多いため,本研究ではキーワードレベルでの抽出とした。また,キーワードがどの分野からの出題かを分類した。分類項目は,教育心理学ハンドブック(教育心理学会編,2007)を参考にし,発達,性格,社会,教授学習,測定評価,臨床,障害,その他の8つとした。
3.結果と考察
3.1 出題されているキーワード数(出題項目数)について
出題項目数を0項目(出題なし),1~5項目,6~10項目,11~15項目,16~20項目,20項目以上のカテゴリーに分けて分析した(Table1)。教育心理学に関する出題がない自治体が9つあり,1~5項目出題している自治体が28と最も多かった。出題項目数が1~5の場合,設問数にすると,概ね1問ないし2問の出題である。
3.2 出題分野について
出題項目の分野を分析し,Table2のような結果がえられた。「教授学習」の分野が最も多く,「臨床」,「発達」と続いた。この3つの分野からの出題がほとんどを占めており,教育現場で必要な知識が中心に問われていることがわかった。「教授学習」の分野では,教育評価についての出題が多い他,ピグマリオン効果や,ハロー効果など,教師と児童生徒の間に起こる現象についての出題が多かった。「臨床」では,適応機制,心理検査,知能検査に関する出題が中心となっていた。「障害」の分野は13の出題があったが,すべて発達障害に関する問題であった。
参考文献
竹内利光 2010 教員採用試験の中の教育心理学 日本教育心理学会総会発表論文集(52),474.
日本教育心理学会(編) 2007 教育心理学ハンドブック 有斐閣
布村育子・坂本健一郎 2010 教員「採用」研究における分析視角の変化 埼玉学園大学紀要10,153-163.
教員採用試験は教員として必要最低限の知識や技能をチェックする機会として機能していると考えられ,教員の「質保証」の観点からもその重要性は明らかであるといえよう。しかし,この教員採用試験については,多くの問題が指摘されており(例えば,布村・坂本(2010)),教員採用試験と教育心理学の関係については,教育心理学が自治体によってその数や内容がまちまちであることが指摘されている(竹内(2010))。そこで本研究では,現状の教員採用試験と教育心理学の関係を俯瞰し,その課題を明確にするという目的で,2014年夏に実施された教員採用試験の問題を分析し,教育心理学の知見がどのような形で問われているのかを調査した。
2.方法
【調査対象】2013年夏に48の自治体で実施された教員採用試験問題(教職教養筆記試験)を対象とした。
【分析方法】教育心理学の知見について出題されている問題を対象とし,そこで問われているキーワードの数を抽出した。ここでいうキーワードとは,理論名,現象名,人名である。従来の研究では,設問数を分析したものが多いが,ひとつの設問において複数の知識項目が問われていることが多いため,本研究ではキーワードレベルでの抽出とした。また,キーワードがどの分野からの出題かを分類した。分類項目は,教育心理学ハンドブック(教育心理学会編,2007)を参考にし,発達,性格,社会,教授学習,測定評価,臨床,障害,その他の8つとした。
3.結果と考察
3.1 出題されているキーワード数(出題項目数)について
出題項目数を0項目(出題なし),1~5項目,6~10項目,11~15項目,16~20項目,20項目以上のカテゴリーに分けて分析した(Table1)。教育心理学に関する出題がない自治体が9つあり,1~5項目出題している自治体が28と最も多かった。出題項目数が1~5の場合,設問数にすると,概ね1問ないし2問の出題である。
3.2 出題分野について
出題項目の分野を分析し,Table2のような結果がえられた。「教授学習」の分野が最も多く,「臨床」,「発達」と続いた。この3つの分野からの出題がほとんどを占めており,教育現場で必要な知識が中心に問われていることがわかった。「教授学習」の分野では,教育評価についての出題が多い他,ピグマリオン効果や,ハロー効果など,教師と児童生徒の間に起こる現象についての出題が多かった。「臨床」では,適応機制,心理検査,知能検査に関する出題が中心となっていた。「障害」の分野は13の出題があったが,すべて発達障害に関する問題であった。
参考文献
竹内利光 2010 教員採用試験の中の教育心理学 日本教育心理学会総会発表論文集(52),474.
日本教育心理学会(編) 2007 教育心理学ハンドブック 有斐閣
布村育子・坂本健一郎 2010 教員「採用」研究における分析視角の変化 埼玉学園大学紀要10,153-163.