日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PG044] オノマトぺを活用した鑑賞シートによる鑑賞文作成の効果

関口洋美 (大分県立芸術文化短期大学)

キーワード:オノマトぺ, 鑑賞

目 的
関口(2013a)では、鑑賞の授業に使用する鑑賞シートに感性評価を用い、その評価語としてオノマトペを用いることを提案し、選出されたオノマトペについて報告した。さらに関口(2013b)では、その鑑賞シートを実際の美術の授業で使用してもらい、子どもたちが鑑賞シートを使用した様子などを報告した。これらの研究の最終的な目的は、鑑賞授業において最も子どもたちが苦手とするであろう鑑賞文の作成を助けることである。そこで、本報告では何もない状態で作成した鑑賞文と、オノマトペの感性評価を経てから作成した鑑賞文とを比較し、鑑賞シートが鑑賞文の作成に効果があるのかを明らかにすることを目的とする。

方 法
協力者:成田市立遠山中学校1・2年生、197名。
授業日:2013年11月の美術の授業。
鑑賞作品:伊藤若冲の「群鶏図」または、写楽の「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」。なお、「群鶏図」を鑑賞した生徒は161名、「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」を鑑賞した生徒は36名であった。
鑑賞シート:鑑賞シートは以下のような構成からなる。
・第一印象から感想を書く(鑑賞文①)
・オノマトペによる感性評価(にぎやかさ・スリル・明るさ・すごさ・いらだち・やわらかさ・しずけさの7因子の得点を算出する)
・感性評価語意外に感じたことを書く
・感想を書く(鑑賞文②)
・鑑賞文①と鑑賞文②を比較する
授業の流れ:まず、各自の持っている資料集および大型テレビに映し出した作品を鑑賞した。そのあと、第一印象から感想を10分ほどで書かせた(鑑賞文①)。次に、オノマトペの感性評価を5分ほどで完成させた。続けて他に感じたことを記入させ、それらを踏まえての感想を10分から15分ほどで書かせた(鑑賞文②)。最後に、教師からの簡単な解説や生徒たちの感想を聞いたあと、鑑賞文①と鑑賞文②の比較を5分ほどで書かせた。以上の流れは、筆者が観察した2013年11月25日の3時間目に実施された授業のものであるが、他の授業も同様の流れで行われた。
結果と考察
本鑑賞シートが、鑑賞文の作成に効果があるかを確かめるため、鑑賞文①と鑑賞文②の文字数を比較した。その結果、鑑賞文①の文字数の平均は103.98、標準偏差は43.33であり、鑑賞文②の文字数の平均は、14574標準偏差は7278であった。対応のあるt検定の結果、鑑賞文②の文字数が有意に多かった(t(196)=9.37, p < .01)。鑑賞時間の長さや、手順の要因など考慮すべき点はあるが、本鑑賞シートが鑑賞文の作成に対し、ある程度の効果があると考えられる結果となった。
引 用
関口洋美 2013a 「芸術鑑賞に用いるオノマトペを活用した感性評価用紙の開発」 日本教育心理学会第55回総会
関口洋美 2013b 「感性評価シートを利用した鑑賞授業―オノマトペを活用した感性評価シートの効果―」 日本心理学会第77回大会
※本研究は、平成23~25年度科学研究費助成事業(基盤研究(C))(課題番号23520201)の補助を受けた