[PG047] 大学生における複数領域に対する動機づけ状態の測定および学習動機づけとの葛藤の検討
Keywords:動機づけ, 学習, 自己決定理論
問 題
複数の活動に対する動機づけ間の関連性は従来ほとんど扱われてこなかった。本研究では,大学生を対象に従事している活動を尋ね,自己決定理論(Ryan & Deci, 2000)に沿って活動間の関連,特に大学の勉強に対する学習動機づけに対しどのような影響を持つか検討する。
方 法
調査対象者 関東の大学生94名(男性28名,女性65名)。
調査内容 1.従事している主な活動および順位 学業以外の日頃行っている活動3つを尋ね,大学での勉強も含めた上で重要な順に順位をつけてもらった。2.各活動に対する動機づけ 速水他(1996)の動機づけ尺度から抜粋し使用した。各4項目,全16項目。大学の勉強も含めた4つの活動について個別に回答を求めた。3.学業へのスピルオーバー 学習活動以外の活動が学業に及ぼす影響について,家庭と仕事の両立に関するスピルオーバー研究を参考にしながら8項目を独自に作成した。1.であげられた各活動に対して個別に回答を求めた。
結果および考察
尺度構成 全ての活動を込みにした上で分析を行った。動機づけ尺度の信頼性はα=.73~.91であり,シンプレックス構造が確認された。学業へのスピルオーバー項目に対する因子分析の結果,「妨害的影響」(5項目,α=.71)と「促進的影響」(2項目,α=.58)に分かれた。
大学生が従事している活動 記述された活動を分類したところ,全記述368個の中で「趣味・娯楽」が最も多く(110個),次いで「アルバイト」(68個),「サークル・部活」(55個)となった。以後の分析では,10%以上の記述があった上記の3つの活動を取り上げた。
活動の種類と順位 活動の種類と順位の関連について検討したところ(Table 1),有意な連関が認められ(χ2(9)=31.65, p<.01),大学の勉強は他の活動に比べ順位が低いことが明らかとなった。
動機づけ尺度に対するクラスター分析 動機づけの4下位尺度(z得点)を使用してクラスター分析(K-means法)を行ったところ,「自律性高」(101),「内発のみ高」(100),「内発以外高」(69),「自律性低」(48)の4つのスタイルに分かれた。
活動の種類と動機づけスタイル 活動の種類と動機づけスタイルの関連を検討したところ(Table 2),有意な連関が認められ(χ2(9)=159.39, p<.01),大学の勉強は自律的動機づけ,特に内発的動機づけが低い場合が多いことが明らかとなった。
活動の種類と順位 活動の種類と優先順位の関連を検討したところ(Table 3),有意な連関が認められ(χ2(9)=40.06, p<.01),自律的な動機づけが高い活動ほど1位に選ばれやすく,自律的な動機づけが低い活動ほど順位が低いことが明らかとなった。
他の活動への動機づけと学習動機づけ 勉強以外の活動への動機づけが勉強に対してどのような影響を持つか,スピルオーバー得点を使用し検討した。その結果,妨害的影響に対し内発的調整からβ=.45**,取り入れ的調整からβ=.23**,促進的影響に対しても内発的調整からβ=.16*の影響がみられた。この結果から,内発的動機づけは勉強に対し妨害的な影響だけでなく促進的な影響をも導くことが明らかとなった。この一部は,内発的動機づけにより活動することでwell-beingが満たされ,学業に対しても前向きになれるものと推察される。
複数の活動に対する動機づけ間の関連性は従来ほとんど扱われてこなかった。本研究では,大学生を対象に従事している活動を尋ね,自己決定理論(Ryan & Deci, 2000)に沿って活動間の関連,特に大学の勉強に対する学習動機づけに対しどのような影響を持つか検討する。
方 法
調査対象者 関東の大学生94名(男性28名,女性65名)。
調査内容 1.従事している主な活動および順位 学業以外の日頃行っている活動3つを尋ね,大学での勉強も含めた上で重要な順に順位をつけてもらった。2.各活動に対する動機づけ 速水他(1996)の動機づけ尺度から抜粋し使用した。各4項目,全16項目。大学の勉強も含めた4つの活動について個別に回答を求めた。3.学業へのスピルオーバー 学習活動以外の活動が学業に及ぼす影響について,家庭と仕事の両立に関するスピルオーバー研究を参考にしながら8項目を独自に作成した。1.であげられた各活動に対して個別に回答を求めた。
結果および考察
尺度構成 全ての活動を込みにした上で分析を行った。動機づけ尺度の信頼性はα=.73~.91であり,シンプレックス構造が確認された。学業へのスピルオーバー項目に対する因子分析の結果,「妨害的影響」(5項目,α=.71)と「促進的影響」(2項目,α=.58)に分かれた。
大学生が従事している活動 記述された活動を分類したところ,全記述368個の中で「趣味・娯楽」が最も多く(110個),次いで「アルバイト」(68個),「サークル・部活」(55個)となった。以後の分析では,10%以上の記述があった上記の3つの活動を取り上げた。
活動の種類と順位 活動の種類と順位の関連について検討したところ(Table 1),有意な連関が認められ(χ2(9)=31.65, p<.01),大学の勉強は他の活動に比べ順位が低いことが明らかとなった。
動機づけ尺度に対するクラスター分析 動機づけの4下位尺度(z得点)を使用してクラスター分析(K-means法)を行ったところ,「自律性高」(101),「内発のみ高」(100),「内発以外高」(69),「自律性低」(48)の4つのスタイルに分かれた。
活動の種類と動機づけスタイル 活動の種類と動機づけスタイルの関連を検討したところ(Table 2),有意な連関が認められ(χ2(9)=159.39, p<.01),大学の勉強は自律的動機づけ,特に内発的動機づけが低い場合が多いことが明らかとなった。
活動の種類と順位 活動の種類と優先順位の関連を検討したところ(Table 3),有意な連関が認められ(χ2(9)=40.06, p<.01),自律的な動機づけが高い活動ほど1位に選ばれやすく,自律的な動機づけが低い活動ほど順位が低いことが明らかとなった。
他の活動への動機づけと学習動機づけ 勉強以外の活動への動機づけが勉強に対してどのような影響を持つか,スピルオーバー得点を使用し検討した。その結果,妨害的影響に対し内発的調整からβ=.45**,取り入れ的調整からβ=.23**,促進的影響に対しても内発的調整からβ=.16*の影響がみられた。この結果から,内発的動機づけは勉強に対し妨害的な影響だけでなく促進的な影響をも導くことが明らかとなった。この一部は,内発的動機づけにより活動することでwell-beingが満たされ,学業に対しても前向きになれるものと推察される。