[PG049] 大学生の学びの質と自己効力感との関係の検討
学びの質に関する探索的研究(1)
Keywords:自律的学習, 学習動機, 学習方略
問題と目的
大学全入時代を迎え,学習者,とりわけ大学生の学びの質が問われている。高校生の頃までに自律的な学習習慣が身につかず,自律的学習が困難な学生が増えているともいわれている。本研究では,大学生の学ぶ意欲および学び方の傾向を彼らの自己効力感とあわせて測定し,両者の関係を検討することをとおして,大学生の学びの質とその問題点を考察する。将来的には,大学生を自律的な学習者へと導く教育方法の開発へと結びつけることを研究目的とする。
方法
研究協力者 大学2年生対象の「教育心理学」の受講者102名が研究協力者となった。この中には,3年生と4年生がそれぞれ3名含まれていた。
測定尺度と手続き 上記授業(半期15回)のうち5回にわたって行われた学習領域の授業の最終回に,学習者としての自己を省察する時間を設定して,学習時の行動尺度,特性的自己効力感尺度(成田ら,1995),学ぶ意欲と学び方の傾向尺度の順に実施した。その後,これらの尺度の評価方法を教授した。尺度の実施と評価方法の教授に要した時間は,全体でおよそ40分間であった。
結果および考察
学習時の行動尺度は,話す,聞く,書く,関心・態度の各下位尺度から成ることから,下位尺度別の平均値と標準偏差を算出し,Table1に示した。
各下位尺度について3項目あり,4段階評定のため,評定値は4~12に分布することから,平均評定値の満点に対する比率は高い順に,「聞く」70.7%,「書く」70.3%,「話す」63.3%,「関心・態度」54.7%となった。下位尺度を要因とする1要因分散分析の結果,主効果が有意となり(F(3,303)=37.533, p<.001),授業を聞き,ノートをとることに専心し,自ら考え,表明することはあまりせず,関心・態度は高くないという,やや受動的な学習者としての傾向がうかがえた。
学ぶ意欲と学び方の傾向尺度のうち,学ぶ意欲を測定する部分は,追求重視,向上重視,活用重視(ここまでは,学習内容重視),勝敗重視,関係重視,褒賞重視(これらは,他者・条件重視)の各下位尺度,学び方を測る部分は,関連・発展,確認・改善,練習・記憶の各下位尺度から,それぞれ成ることから,下位尺度別の平均値と標準偏差を算出し,Table2に示した。
前述の学習時の行動尺度と同様,評定値は4~12に分布することから,平均評定値の満点に対する比率は高い順に,「追求重視」77.3%,「活用重視」73.4%,「褒賞重視」69.8%「向上重視」68.5%,「勝敗重視」62.8%,「関係重視」60.1%となった。
特性的自己効力感尺度の平均値は67.61,標準偏差は11.695となった。この尺度は23項目であり,5段階評定のため,評定値は23~115に分布することから,平均評定値の満点に対する比率は58.8%となり,やや低い。自己効力感と学習時の行動との相関係数は,「話す」.405,「聞く」.276,「書く」.398,「関心・態度」.413となり,いずれも統計学上有意であった。自己効力感と学ぶ意欲との相関係数は,追求重視.339,向上重視.310,活用重視.275(統計学上有意)となり,学習内容重視の傾向との間に相関が認められた一方,他者・条件重視(勝敗重視,関係重視,褒賞重視)の傾向との間の相関係数は低く,統計学上有意とならなかった。本研究の結果,自己効力感が低く,他者・条件重視の傾向の高い学生も相当数存在することから,対応策の必要性が明らかとなった。
大学全入時代を迎え,学習者,とりわけ大学生の学びの質が問われている。高校生の頃までに自律的な学習習慣が身につかず,自律的学習が困難な学生が増えているともいわれている。本研究では,大学生の学ぶ意欲および学び方の傾向を彼らの自己効力感とあわせて測定し,両者の関係を検討することをとおして,大学生の学びの質とその問題点を考察する。将来的には,大学生を自律的な学習者へと導く教育方法の開発へと結びつけることを研究目的とする。
方法
研究協力者 大学2年生対象の「教育心理学」の受講者102名が研究協力者となった。この中には,3年生と4年生がそれぞれ3名含まれていた。
測定尺度と手続き 上記授業(半期15回)のうち5回にわたって行われた学習領域の授業の最終回に,学習者としての自己を省察する時間を設定して,学習時の行動尺度,特性的自己効力感尺度(成田ら,1995),学ぶ意欲と学び方の傾向尺度の順に実施した。その後,これらの尺度の評価方法を教授した。尺度の実施と評価方法の教授に要した時間は,全体でおよそ40分間であった。
結果および考察
学習時の行動尺度は,話す,聞く,書く,関心・態度の各下位尺度から成ることから,下位尺度別の平均値と標準偏差を算出し,Table1に示した。
各下位尺度について3項目あり,4段階評定のため,評定値は4~12に分布することから,平均評定値の満点に対する比率は高い順に,「聞く」70.7%,「書く」70.3%,「話す」63.3%,「関心・態度」54.7%となった。下位尺度を要因とする1要因分散分析の結果,主効果が有意となり(F(3,303)=37.533, p<.001),授業を聞き,ノートをとることに専心し,自ら考え,表明することはあまりせず,関心・態度は高くないという,やや受動的な学習者としての傾向がうかがえた。
学ぶ意欲と学び方の傾向尺度のうち,学ぶ意欲を測定する部分は,追求重視,向上重視,活用重視(ここまでは,学習内容重視),勝敗重視,関係重視,褒賞重視(これらは,他者・条件重視)の各下位尺度,学び方を測る部分は,関連・発展,確認・改善,練習・記憶の各下位尺度から,それぞれ成ることから,下位尺度別の平均値と標準偏差を算出し,Table2に示した。
前述の学習時の行動尺度と同様,評定値は4~12に分布することから,平均評定値の満点に対する比率は高い順に,「追求重視」77.3%,「活用重視」73.4%,「褒賞重視」69.8%「向上重視」68.5%,「勝敗重視」62.8%,「関係重視」60.1%となった。
特性的自己効力感尺度の平均値は67.61,標準偏差は11.695となった。この尺度は23項目であり,5段階評定のため,評定値は23~115に分布することから,平均評定値の満点に対する比率は58.8%となり,やや低い。自己効力感と学習時の行動との相関係数は,「話す」.405,「聞く」.276,「書く」.398,「関心・態度」.413となり,いずれも統計学上有意であった。自己効力感と学ぶ意欲との相関係数は,追求重視.339,向上重視.310,活用重視.275(統計学上有意)となり,学習内容重視の傾向との間に相関が認められた一方,他者・条件重視(勝敗重視,関係重視,褒賞重視)の傾向との間の相関係数は低く,統計学上有意とならなかった。本研究の結果,自己効力感が低く,他者・条件重視の傾向の高い学生も相当数存在することから,対応策の必要性が明らかとなった。