日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PG

(501)

2014年11月9日(日) 10:00 〜 12:00 501 (5階)

[PG072] 認知スタイルの違いが感情的情報処理に与える影響の検討

感情的修飾句付加名詞の偶発再生課題を用いて

新田寛子1, 宮崎拓弥2 (1.北海道教育大学大学院旭川校, 2.北海道教育大学)

キーワード:認知スタイル, イメージ

本研究では,語の再生に焦点をあてて認知スタイルと学習成績の関連を検証する。一般的に,視覚型では情報処理に視覚イメージを用いる傾向があるとされている一方,言語型では言語的手がかりを用いる傾向があるとされている。加えて,視覚型では感情的な報告がされやすいことも示されている。これらを考え合わせると,具体的で感情的な刺激を評定させ,偶発再生課題を課すような状況を設定すると,イメージと感情の影響から視覚型と言語型の成績に差がみられると予想される。そこで,本研究では感情的修飾句付加名詞を用いて,偶発再生課題を行うこととした。また,従来の認知スタイルの分類に加え,神経心理学的研究から報告されている視覚情報処理の違いに基づいた新たな認知スタイルの分類も考慮した(e.g., Kozhevnikov, Kosslyn & Shephard, 2005)。
方法
実験参加者 207名の大学生が実験に参加した(平均年齢は19.6歳,SD = 3.4)。
材料 認知スタイルを測定する3種類の質問紙①Verbalizer-Visualizer Questionnaire(以下,VVQ;Richardson, 1977);15項目,2件法②Style Of Processing(以下,SOP;Terry, Michael & Susan, 1985);22項目,4件法③日本語版OSIQ(以下,J-OSIQ;Kawahara & Mastuoka, 2011);30項目,5件法,を用いた。偶発再生課題では,19語からなる3種類のリストが用いられた。そのうち,ポジティブ・ネガティブ条件では統制条件の語に感情的修飾句を付加したリストが用いられた。
手続き 実験は集団で行われた。偶発再生課題では語の感情価評定を全参加者が終了後,3分間のフィラー課題を挟み,語の自由再生が求められた。
結果
実験参加者は,各尺度得点の中央値により分類された。各認知スタイルの分類と感情価が偶発再生課題成績に与える影響を検討するために,得点ごとに認知スタイル×感情価条件(統制・ポジティブ・ネガティブ)の2要因分散分析を行った。その結果,SOP得点とJ-OSIQのspatial得点では,認知スタイルの主効果が有意であった。SOP得点では認知スタイルの有意傾向が見られ,視覚型が言語型よりも成績が高かった(F(1, 96) = 2.89 p < .10)。spatial得点では低群が高群よりも成績が有意に高かった(F(1, 97) = 4.05, p < .05)。
考察
本実験では,認知スタイルの違いより感情的情報処理が異なることを積極的に示す結果は得られなかった。しかしながら,SOPによる分類では群間に差がみられ,VVQによる分類では差がみられなかったことから,SOPの方が認知スタイルの違いを鋭敏に測定できることが示唆された。一方で,spatial得点による分類で差がみられたことについては,今後より詳細な検討が必要であると考えられる。