日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PG

(501)

2014年11月9日(日) 10:00 〜 12:00 501 (5階)

[PG082] 保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究Ⅱ

保育実習ⅠとⅡの比較から

小川圭子1, 鎌田陽世2 (1.四天王寺大学, 2.和光学園)

キーワード:保育実習, 感情体験, 半構造化面接

Ⅰ 調査の目的
「保育所実習において学生が抱く感情についての調査研究Ⅰ」では,保育所実習に参加した学生の印象に残った場面での感情体験について検討した。その結果,学生は「子どもとの日常的な関わり」の中で最もポジティブな感情を抱く割合が高く,初めての実習で大きな動機付けとなっていることが窺われた。そこで本研究では,縦断的調査によって,実習経験が学生の感情体験にどのような変化をもたらすかについて検討した。
Ⅱ 調査の方法
(1)調査対象:保育実習Ⅰ(2013年8月下旬から9月上旬)および,保育実習Ⅱ(2014年2月)の双方に2週間ずつ参加した大学2年生女子15名。
(2)調査期間:保育実習Ⅰは2013年10月,保育実習Ⅱは2014年3月に実施。
(3) 調査手続き:半構造化面接により,1人につき約20分の聞き取り調査を実施した。この面接によって保育実習Ⅰでは195件,保育実習Ⅱでは168件のエピソードを得た。
Ⅲ 結果と考察
調査研究Ⅰと同様の手順で,半構造化面接によって得られたエピソードがどの項目に当てはまるかを,2名の研究者によって評定・分類した。
その結果, 2度目の実習経験となる保育実習Ⅱでは,「d.実習生としての在り方」が17%から25%へと増加した。小松ら(2006)は,基礎看護実習において学生が抱く感情の傾向を分析し,学修が進むに従い自己への振り返りが多くなり,己の未熟さ・不甲斐なさに関する不快感情を募らせる学生が増加する傾向にあることを示した。保育実習においても,実習経験を積むことによって,体調や時間の管理についての意識が高まったり,自分なりの課題や問題点を自覚するようになったりしたために,「d.実習生としての在り方」が,ネガティブな感情に結びつくエピソードとして語られるようになったのではないかと考えられた。
また,保育実習Ⅰ・保育実習Ⅱともに,ポジティブな感情については「c.特定の場面での子どもとの関わり」が,最も大きな割合をしめていたが,61%から49%と減少していた。一方,「a.保育士の指導や態度」について保育実習Ⅰと保育実習Ⅱを比較すると,ネガティブな感情では23%から14%に減少していたが,ポジティブな感情では逆に,15%から21%に上昇していた。これは,学修が進むにつれ,保育士の指導などを自己の保育の質の向上につながることとして,肯定的に捉えられるようになったためではないかと推察された。