The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(501)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PG084] 保育者が研究者との実践研究に継続参加する要因の検討

上山瑠津子1, 境愛一郎1, 伊藤優1, 浦上萌1 (広島大学大学院)

Keywords:連携, 保育者, 研究者

【目的】近年,保育者と研究者が共同して実践研究を行う取り組みは増え,両者にとって多くの意義があることが示されている (無藤・森下・齋藤・高濱, 2007)。これまで筆者らは,保育者の専門性向上に寄与する大学研究者の役割について検討を行ってきた (中坪ら, 2012,2013;大野ら, 2012)。その結果,保育者が実践研究を通して,日常の課題を分析的に検討する視点を獲得するといった肯定的な側面が示された一方,保育者と研究者では実践研究の成果への認識に差異があることが明らかにされ,共同して研究を行う困難さも同時に存在することが示された。このように実践研究への参加は,保育者にとって容易ではない側面がある。しかしながら,保育者の中には継続的に研究者と共同して実践研究を行う者も存在する。保育者の自発的な実践研究を促すには,継続的な実践研究への参加が必要であると考えられる。これまでに筆者らの研究も含め,このような継続的な実践研究への参加が促される要因については明らかになっておらず,共同した実践研究における大学研究者の具体的な支援を見直すためにも検討する必要がある。
そこで,本研究では,実践研究連携事業に継続的に参加してきた保育者の継続参加につながった要因を明らかにすることを目的とする。
【方法】 対象データ 保育者3名に対して行った半構造化インタビューである。対象保育者らは,大学研究者側と私立幼稚園連盟が共同して過去3期に渡って行ってきた実践研究支援事業 (以下,事業) に継続的に参加した。参加回数と属性についてはTable 1に示す。インタビューでは,①実践研究に参加した経緯,②今回の実践研究を通して印象に残ったこと,③前回の実践研究参加と比べてうまくいったこと,または難しかったこと等について質問を行った。
分析方法 保育者の発言に潜在する事業への継続参加の要因を捉えるため,データを段階的に言い換え,掘り下げる手法であるSCAT (大谷,2011)を用いて分析を行った。導き出された理論記述をもとに事業継続参加の要因について明らかにした。
【結果と考察】分析の結果,対象者が事業に継続参加した要因は,経験や園文化からくる保育者に共通する要因と3名の保育者にとって過去の事業参加が成功体験となった保育者個別の要因の2点に分けられた。
(1) 保育経験や園文化からくる継続要因
外部交流への期待 私立園の特性として自園以外の関係者と交流の機会が持ちにくい中,他園の保育者も参加する事業は,保育に関する情報交換ができたりする場として位置づけられていた。
保育者として成長願望 経験年数が15年以上のA・B保育者は,自分自身の保育者としての現状について,子どもの見方や対等が固定化することへの抵抗感を感じていた。そのため,研究者との事業に継続参加することで,新しい視点を得られ,自分自身へ変化を与えることを期待していた。
(2) 各保育者の成功体験からくる継続要因
3名の保育者は,事業参加を通して,それぞれ異なる参加価値を見いだしていた (Table 2)。
A保育者は,KJ法を用いた実践研究を通して,これまで知らなかった方法を習得したことで,新たな方向から保育を見直すことができたと述べていた。B保育者は,明確に何かを得たというよりも,同じ保育について検討しているものの、保育者と視点の異なる研究者との実践研究の中で刺激を得られたことへの良さを実感している。C保育者は,事業参加する前には,同僚の忙しさや苦悩する姿から,マイナスイメージが先行し,できるかどうかという不安を持っていた。上司の勧めをきっかけとして参加したが、研究を最後までやり遂げた達成感を得られたことで、事業への継続参加への動機となっていることが示された。
【今後の課題】実践研究を通して保育者の専門性の向上を検討する上で,個々の保育者の実践研究への参加目的や参加を通しての期待を考慮した,支援体制作りを行っていく必要があるだろう。