The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(501)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PG088] 保育の質が幼児の発達に与える影響(2)

4歳から小1までの科学的思考の発達に関する縦断的検討

箕輪潤子1, 野口隆子2, 秋田喜代美3, 鈴木正敏4, 無藤隆5, 上田敏丈6, 小田豊7, 門田理世8, 森暢子9, 中坪史典10, 芦田宏11, 宇佐美慧12 (1.川村学園女子大学, 2.十文字学園女子大学, 3.東京大学, 4.兵庫教育大学, 5.白梅学園大学, 6.名古屋市立大学, 7.聖徳大学, 8.西南学院大学, 9.香蘭短期大学, 10.広島大学, 11.兵庫県立大学, 12.筑波大学)

Keywords:科学的思考の発達, 縦断研究, 保育の質

研究の目的
上田他(2013,2014)は全国的な追跡調査を実施し,4歳児・5歳児の科学的思考の発達と幼児が通う園の保育の質との関連を明らかにした。本研究では,4歳児・5歳児・小学校1年生の科学的思考の発達と幼児が通う園の保育の質との関連について, 「生命科学」の回答を対象に,(1) 回答の内容が質的にどのように変化していくのか (2)回答の内容の園による差異を検討する。
方法
1)調査時期及び協力者: 2012年1月~3月,2013年2月~3月,2014年1月~3月に東京・愛知・兵庫・広島・福岡の幼稚園・保育所計17園で調査を実施(第1コーホート4歳児計410人,5歳児計427人)。そのうち, 3時点の縦断調査が可能だった子どものうち1地域4園の出身の計48人(男児21人,女児27人)。
2)調査方法:科学的思考調査として,波多野・稲垣(1991)を参考に生命科学領域の4課題を作成した。さらに独自に地球科学・物理化学を4題ずつ作成し,写真を見て回答する12項目の独自リーズニング課題とした(5歳児時に2課題追加,小1時に8課題削除・6課題追加)。回答は無回答0点,何らかのリーズニングがあるもの1点,科学的リーズニングがあるが間違っているもの2点,正解3点として得点化した。
3) 分析方法:本研究では,4歳から小1までの同一課題の中から, 生命科学の1課題(「このお花(タンポポ)はどうしたら生えてくると思うかな?」)の回答を内容別に分類し,回答の質がどのように変化したかを検討する。また,各時点において,園ごとの回答の内容に質的な特徴があるかを検討する。なお,生命科学分野については、保育の中で子どもが飼育・栽培等の経験をしていると考えられると共に園により経験の違いがあると考え選択した。
結果と考察
1. 4歳児・5歳児・小1の回答内容の変化
どの年時でも「綿毛が飛んで・種を植える」という植物が生える上で必要な条件, 「雨が降ったら・水をあげたら」という生えた植物が育つために必要な条件が挙げられていた。
4歳児 - 5歳児の変化は,4歳児時点で22名の子どもが無回答であったが,5歳児時点ではそのうち10名が「生える条件」へと,3名が「育つ条件」へと回答が変化している。 5歳児-小1の変化は,5歳児に無回答だった子どものうち3名は小1になると,3名が「生える条件」へと,1名が「育つ条件」へと回答が変化している。「育つ条件」を回答していた子ども15名のうち8名が「生える条件」へと回答が変化しているが,2名が「その他」へと変化している。「生える条件」を回答していた18名のうち2名の回答が「育つ条件」へと,2名が「その他」へと変化している。小1の「その他」の回答には「春になったら」という4歳児・5歳児時点では見られなかった回答を4名がしている。
4歳児から5歳児にかけては, 5歳児における植物を育てる経験が無回答の減少につながっている(上田ら,2014)と考えられるが,5歳児から小1にかけては「生える」という言葉を理解できるようになっていることが「育つ条件」から「生える条件」への回答の変化につながっていると考えられる。
2. 園間の比較検討
4歳児では全ての園で「無回答」が最も多い(N園 5,38.5% ; O園 7,43.8% ; P園 5,62.5% ; Q園 5,45.5%)が,園によって回答に特徴が見られる。
N園では,4歳児から5歳児にかけて「生える条件」を回答した子どもの数が2(15.4%)から8(61.5%)へと急激に増加している。O園では,他の園に比べて4歳児時点で「生える条件」を回答した子どもの数が多い(O園 5,31.3% ; N園 2,15.4% ;P園 1,12.5% ; Q園 2,18.2%)。5歳児・小1と年齢があがるごとに「生える条件」を回答している子どもが増加し,小1時点でも11(68.8%)と他の園出身の子どもよりも多い(N園 7,53.8% ;P園 2,25.0% ; Q園 4,36.4%)。P園では,小1の時点で「その他」の回答をした子どもが最も多く(3,37.5%),5歳児時点で「生える条件」「育つ条件」を回答していた子どもの回答が「その他」または「無回答」へと変化している。Q園では,4歳児と5歳児の時点で他の園に比べて「育つ条件」を回答している子どもが多くみられ(4歳児 4,36.4% 5 45.5%)。,5歳児では「生える条件」を回答した子どもはいなかった。
今後の課題
他地域と他の課題(地球科学・物理化学)についても4歳児・5歳児・小1の回答の差異を検討する。また,保育の質との関連についても検討する。
*一連発表(1)(2)は,平成23-27年度文部科学省科学研究費基盤研究(A)「保育・教育の質が幼児・児童の発達に与える影響の検討(研究代表者:秋田喜代美 課題番号23243079)」の研究の一環として行われているものの一部である。