[PG089] 保育専攻学生のジェンダー別保育への態度
Keywords:ジェンダー, 保育観, 性役割
目 的
保育所の整備が進められているが,保育士数は男性2.77%,女性97.23%と偏っている(平成22年国勢調査より)。この現状が「子育ては女性が担う」という潜在カリキュラムとなり,男女共同参画を担う保育所が逆にジェンダー別に子どもを育てる場となる可能性がある。よって,保育士のジェンダーに対する意識が重要となる。本研究では,保育専攻の学生のジェンダー観,ジェンダー別保育への態度を,他専攻の学生と比較,検討した。
方 法
保育専攻の短期大学女子学生159名(年齢M=19.10, SD=0.76),保育・教育以外を専攻する人文系四年制大学女子学生79名(年齢M=19.14, SD=1.16)を対象とし,質問紙調査を行った。
1. 希望の働き方 結婚・出産後希望する働き方を,「勤続」「専業主婦」「専業主婦後に正規雇用」「専業主婦後に非正規雇用」「結婚・出産しないのでいずれもあてはまらない」から選ぶよう求めた。
2. 予想する働き方 結婚・出産後実際にとるであろう働き方を,1.と同じ選択肢から選ばせた。
3. ジェンダー別保育への態度(青野, 2012) 「物的環境」3項目,「働きかけ」3項目,5件法。得点が高い程ジェンダー別保育を望ましいとする。
4. 平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)(鈴木, 1994) 5件法。
結 果
希望・予想の働き方のうち,選択する者が4名(1.69%),5名(2.11%)と少なかった「結婚・出産しない」は以降の分析から除外した。希望する働き方は保育専攻では「専業主婦→非正規雇用」が最も多かったが(65名, 41.1%),他専攻は「勤続」が最多であり(29名, 36.7%),有意に異なっていた(χ2(3)=13.99, p<.01)。しかし予想する働き方は違いがなく(χ2(3)=1.91, n.s.),「専業主婦→非正規雇用」がいずれも最多であった(保育専攻75名, 47.5%; 他専攻31名, 39.2%)。以降は,希望の働き方の得点を調整し,得点が高いほど性別役割分業に沿った働き方となるようにした。
ジェンダー別保育への態度について保育専攻,他専攻で得点が異なるかt検定を行ったところ,「物的環境」は保育専攻が低く(保育専攻M=5.85, SD=2.24; 他専攻M=6.86, SD=2.25; t(232)=3.22, p<.001),「働きかけ」は有意差が見られなかった(保育専攻M=5.72, SD=1.99; 他専攻M=5.76, SD=1.81; t(235)=0.17, n.s.)。
SESRA-S得点は専攻による差が見られなかった(保育専攻M=52.75, SD=6.51; 他専攻M=53.26, SD=7.43; t(235)=0.54, n.s.)。
ジェンダー別保育への態度と,希望の働き方およびSESRA-Sの相関係数を算出した。保育専攻では,「物的環境」に有意な相関は見られず,「働きかけ」にSESRA-Sとの負の相関があった(r=-.22, p<.01)。他専攻では,「物的環境」とSESRA-Sに負の相関(r=-.34, p<.01),「物的環境」と希望の働き方に正の相関(r=.38, p<.001),「働きかけ」とSESRA-Sに負の相関があった(r=-.23, p<.05)。
考 察
保育専攻の学生は従来の女性役割に沿った将来を希望していた。しかしそれはジェンダー別保育への態度に関連せず,むしろジェンダー別に与える物品やその色を変えるような物的環境については他専攻学生より否定的態度を有していた。また,性役割態度は他専攻と変わらなかった。
引用文献
青野篤子 (2012). ジェンダー・フリー保育─次世代育成のヒント─ 多賀出版
鈴木淳子 (1994). 平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)の作成 心理学研究, 65, 34-41.
保育所の整備が進められているが,保育士数は男性2.77%,女性97.23%と偏っている(平成22年国勢調査より)。この現状が「子育ては女性が担う」という潜在カリキュラムとなり,男女共同参画を担う保育所が逆にジェンダー別に子どもを育てる場となる可能性がある。よって,保育士のジェンダーに対する意識が重要となる。本研究では,保育専攻の学生のジェンダー観,ジェンダー別保育への態度を,他専攻の学生と比較,検討した。
方 法
保育専攻の短期大学女子学生159名(年齢M=19.10, SD=0.76),保育・教育以外を専攻する人文系四年制大学女子学生79名(年齢M=19.14, SD=1.16)を対象とし,質問紙調査を行った。
1. 希望の働き方 結婚・出産後希望する働き方を,「勤続」「専業主婦」「専業主婦後に正規雇用」「専業主婦後に非正規雇用」「結婚・出産しないのでいずれもあてはまらない」から選ぶよう求めた。
2. 予想する働き方 結婚・出産後実際にとるであろう働き方を,1.と同じ選択肢から選ばせた。
3. ジェンダー別保育への態度(青野, 2012) 「物的環境」3項目,「働きかけ」3項目,5件法。得点が高い程ジェンダー別保育を望ましいとする。
4. 平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)(鈴木, 1994) 5件法。
結 果
希望・予想の働き方のうち,選択する者が4名(1.69%),5名(2.11%)と少なかった「結婚・出産しない」は以降の分析から除外した。希望する働き方は保育専攻では「専業主婦→非正規雇用」が最も多かったが(65名, 41.1%),他専攻は「勤続」が最多であり(29名, 36.7%),有意に異なっていた(χ2(3)=13.99, p<.01)。しかし予想する働き方は違いがなく(χ2(3)=1.91, n.s.),「専業主婦→非正規雇用」がいずれも最多であった(保育専攻75名, 47.5%; 他専攻31名, 39.2%)。以降は,希望の働き方の得点を調整し,得点が高いほど性別役割分業に沿った働き方となるようにした。
ジェンダー別保育への態度について保育専攻,他専攻で得点が異なるかt検定を行ったところ,「物的環境」は保育専攻が低く(保育専攻M=5.85, SD=2.24; 他専攻M=6.86, SD=2.25; t(232)=3.22, p<.001),「働きかけ」は有意差が見られなかった(保育専攻M=5.72, SD=1.99; 他専攻M=5.76, SD=1.81; t(235)=0.17, n.s.)。
SESRA-S得点は専攻による差が見られなかった(保育専攻M=52.75, SD=6.51; 他専攻M=53.26, SD=7.43; t(235)=0.54, n.s.)。
ジェンダー別保育への態度と,希望の働き方およびSESRA-Sの相関係数を算出した。保育専攻では,「物的環境」に有意な相関は見られず,「働きかけ」にSESRA-Sとの負の相関があった(r=-.22, p<.01)。他専攻では,「物的環境」とSESRA-Sに負の相関(r=-.34, p<.01),「物的環境」と希望の働き方に正の相関(r=.38, p<.001),「働きかけ」とSESRA-Sに負の相関があった(r=-.23, p<.05)。
考 察
保育専攻の学生は従来の女性役割に沿った将来を希望していた。しかしそれはジェンダー別保育への態度に関連せず,むしろジェンダー別に与える物品やその色を変えるような物的環境については他専攻学生より否定的態度を有していた。また,性役割態度は他専攻と変わらなかった。
引用文献
青野篤子 (2012). ジェンダー・フリー保育─次世代育成のヒント─ 多賀出版
鈴木淳子 (1994). 平等主義的性役割態度スケール短縮版(SESRA-S)の作成 心理学研究, 65, 34-41.