[PH004] 小学生版友人グループ尺度の作成
Keywords:小学生, 友人, グループ
【問題と目的】
近年,子ども達の友人関係の一つの形態であるグループは,①学校を基盤として形成され,②メンバーの流動性が少なく,③小規模化しており,④グループの境界が明瞭かつ固定的(藤田・伊藤・坂口,1996)になってきていることが指摘されている。
これまでグループへの所属率や構成メンバーの人数など,様々な実態調査は行われているものの,グループそのものの状態を捉えようとする研究は非常に少ない。唯一,吉原・藤生(2012)は高校生の認知するグループの状態を明らかにしており,グループには“支援”“良好さ”“居場所”などの肯定的な側面と“不和”“同調”“閉鎖”などの否定的な側面を抽出している。
本研究では,明らかにされてこなかった小学生の友人グループの状態について検討するために,グループに対する認識や特徴を捉える質問紙を作成し,グループの実態を把握することを目的とする。
【方 法】
調査対象 公立小学校の児童438名(男子221名,女子217名)である。
測定用具 ①グループの状態尺度;予備調査で得られた40項目について4件法(「1:まったくあてはまらない」から「4:とてもあてはまる」)により回答を求めた。②親和動機尺度(杉浦,2000);人と深く知り合いたいなどの「親和傾向」と誰からも嫌われたくないなどの「拒否不安」の2因子からなる。評定は「5:とてもそう思う」から「1:ぜんぜんそう思わない」までの4件法である。
【結 果】
グループの状態尺度の因子分析結果
最尤法・Promax回転による因子分析を行った。因子負荷量が.40に満たない項目を削除し,再度因子分析を行った。固有値の推移と解釈可能性から4因子解を採択した。各因子4項目ずつの16項目を最終的に採択した。第1因子は「なにか失敗をしたときにはグループの友達どうしで励ましあう」などの項目が高い負荷を示し,「支援性」の因子と解釈した。第2因子は「グループの友達の好きなことや得意なことについて知っている」などの項目が高い負荷を示し,「開示性」の因子と解釈した。第3因子は「グループの友達とは昼休みや放課後に一緒に過ごしたり遊んだりする」などの項目が高い負荷を示し,「親密性」の因子と解釈した。第4因子は「グループの中でもめごとがある」などの項目が高い負荷を示し,「相互侵害」の因子と解釈した。各下位尺度のCronbachのα係数は,「支援性」がα=.819,「開示性」がα=.826,「親密性」がα=.740,「相互侵害」がα=.737であった。確認的因子分析を行った結果,GFI=.917,AGFI=.885,RMSEA=.069であり,適合度は概ね満足できる値であった。
グループの状態尺度の4つの下位因子と親和動機尺度(杉浦,2000)との関連を検討するために,相関係数を算出した。親和傾向と支援性に有意な中程度の正の相関(r=.446)が見られた。したがって,個人の人と良好な関係を築きたいという欲求とグループ内の友人関係に支援性に関連性が見られることが明らかになった。
【考 察】
本研究では,児童のグループの状態尺度を作成し,尺度の信頼性が確認された。親和動機尺度(杉浦,2000)の下位尺度間に正の相関が見られた。グループ内の良好な人間関係は,友人関係同様,自己概念の形成や精神的安定といった内的適応に果たす役割の重要度が大きい(岡田,1993,1995;丹野・松井,2006)と考えられる。
キーワード:小学生,友人,グループ
近年,子ども達の友人関係の一つの形態であるグループは,①学校を基盤として形成され,②メンバーの流動性が少なく,③小規模化しており,④グループの境界が明瞭かつ固定的(藤田・伊藤・坂口,1996)になってきていることが指摘されている。
これまでグループへの所属率や構成メンバーの人数など,様々な実態調査は行われているものの,グループそのものの状態を捉えようとする研究は非常に少ない。唯一,吉原・藤生(2012)は高校生の認知するグループの状態を明らかにしており,グループには“支援”“良好さ”“居場所”などの肯定的な側面と“不和”“同調”“閉鎖”などの否定的な側面を抽出している。
本研究では,明らかにされてこなかった小学生の友人グループの状態について検討するために,グループに対する認識や特徴を捉える質問紙を作成し,グループの実態を把握することを目的とする。
【方 法】
調査対象 公立小学校の児童438名(男子221名,女子217名)である。
測定用具 ①グループの状態尺度;予備調査で得られた40項目について4件法(「1:まったくあてはまらない」から「4:とてもあてはまる」)により回答を求めた。②親和動機尺度(杉浦,2000);人と深く知り合いたいなどの「親和傾向」と誰からも嫌われたくないなどの「拒否不安」の2因子からなる。評定は「5:とてもそう思う」から「1:ぜんぜんそう思わない」までの4件法である。
【結 果】
グループの状態尺度の因子分析結果
最尤法・Promax回転による因子分析を行った。因子負荷量が.40に満たない項目を削除し,再度因子分析を行った。固有値の推移と解釈可能性から4因子解を採択した。各因子4項目ずつの16項目を最終的に採択した。第1因子は「なにか失敗をしたときにはグループの友達どうしで励ましあう」などの項目が高い負荷を示し,「支援性」の因子と解釈した。第2因子は「グループの友達の好きなことや得意なことについて知っている」などの項目が高い負荷を示し,「開示性」の因子と解釈した。第3因子は「グループの友達とは昼休みや放課後に一緒に過ごしたり遊んだりする」などの項目が高い負荷を示し,「親密性」の因子と解釈した。第4因子は「グループの中でもめごとがある」などの項目が高い負荷を示し,「相互侵害」の因子と解釈した。各下位尺度のCronbachのα係数は,「支援性」がα=.819,「開示性」がα=.826,「親密性」がα=.740,「相互侵害」がα=.737であった。確認的因子分析を行った結果,GFI=.917,AGFI=.885,RMSEA=.069であり,適合度は概ね満足できる値であった。
グループの状態尺度の4つの下位因子と親和動機尺度(杉浦,2000)との関連を検討するために,相関係数を算出した。親和傾向と支援性に有意な中程度の正の相関(r=.446)が見られた。したがって,個人の人と良好な関係を築きたいという欲求とグループ内の友人関係に支援性に関連性が見られることが明らかになった。
【考 察】
本研究では,児童のグループの状態尺度を作成し,尺度の信頼性が確認された。親和動機尺度(杉浦,2000)の下位尺度間に正の相関が見られた。グループ内の良好な人間関係は,友人関係同様,自己概念の形成や精神的安定といった内的適応に果たす役割の重要度が大きい(岡田,1993,1995;丹野・松井,2006)と考えられる。
キーワード:小学生,友人,グループ