[PH005] 道徳授業を利用した社会的スキル教育の実践
小学1年生を対象として
キーワード:小学校, 社会的スキル, 道徳教育
■問題と目的■ 本研究の目的は小学1年生を対象として,道徳の授業および教材を利用した社会的スキル教育(Social Skills Education : 以下SSE)が児童の社会的スキルに及ぼす影響を検討することである。
これまでのSSEに関する研究では,主に友達との葛藤やトラブルの場面を想定し,その際に用いるスキルについてふれられることが少なくない(吉田ら,2012)。しかし,小学校低学年が対象となると,なかなか場面が想像しづらかったり,意欲をもってSSEに取り組むことが難しかったりすることが考えられる。そこで本研究では,道徳の授業で学習した場面や登場人物を用いてSSEを実施する。
本研究では,吉田ら(2008)と同様,小学生を対象にSSEの効果を検討するが,その際に,初期の社会的スキルの程度に注目する。具体的には,SSEの効果が全ての児童に対して効果を持つのか,それとも社会的スキルが不足している児童に対して効果を持つのかという点である。その理由として,学級全体を分析対象として集団SSTの効果を検討した場合,天井効果が生じ,効果の判定が困難な場合がある(藤枝ら,2001)ことが指摘されている。そのため,介入前の社会的スキルの高さに着目することでこの問題に対応する。
■方法■ 対象児童 小学1年生109名(男子57名,女子52名)。実施時期 質問紙調査,SSEを含め,2013年1月下旬から2月上旬。標的スキル SSEを実施する児童の状況および担任教師の意見から,「友達の気持ちを考える(共感)」「あたたかい言葉かけ」を標的スキルとした。SSEの概要 SSEは1コマ45分として,1週間に1コマ,全部で4コマ実施した。そのうち1,3コマで道徳の授業,2,4コマにSSEを行った。道徳の授業で取り上げた教材は1コマ目が「二わのことり」,3コマ目が「はしの上のおおかみ」だった(Table 1)。いずれも内容項目は2-(3)「友達と仲よくし,助け合う」(二わのことり),2-(2)「幼い人や高齢者など身近にいる人に温かい心で接し,親切にする」(はしの上のおおかみ)であり,SSEと関連のある教材である。使用尺度 江村ら(2002)の小学生用社会的スキル尺度29項目より「仲間強化」因子10項目を4件法で回答を求めた。
■結果と考察■ 介入前・介入後の2回の質問紙調査に回答した児童82名(男子44名,女子38名)の分析を行った。本研究ではSSEの効果が全ての児童に対して効果を持つのか,それとも社会的スキルが不足している児童に対して効果を持つのかという点を検討するために,まず,介入前の社会的スキル尺度平均得点の中央値を算出(Me = 3.10)し,中央値折半法により介入前の社会的スキル得点の低群・高群に分類した。次に,社会的スキル得点を従属変数とし,介入前のスキルの高さ(2:低・高),測定時期(2:介入前・介入後)を独立変数とした2要因分散分析を実施した。その結果,群の主効果(F (1, 80) = 133.28, p <.01),測定時期の主効果(F (1, 80) = 15.87, p <.01),群と測定時期の交互作用(F (1, 80) = 11.60, p <.01)が有意であった(Figure 1)。以上のことから,介入前に社会的スキルの不足している児童に対してSSEの効果がみられたことが示唆された。
■引用文献■ ○江村ら(2002). 日本カウンセリング学会第35回大会発表論文集, 94.○藤枝ら(2001). 教育心理学研究, 49, 107-117.○吉田ら(2008). 日本グループ・ダイナミックス学会第55回大会発表論文集, 110-111.○吉田ら(2012). 応用教育心理学研究, 28, 31-39.
これまでのSSEに関する研究では,主に友達との葛藤やトラブルの場面を想定し,その際に用いるスキルについてふれられることが少なくない(吉田ら,2012)。しかし,小学校低学年が対象となると,なかなか場面が想像しづらかったり,意欲をもってSSEに取り組むことが難しかったりすることが考えられる。そこで本研究では,道徳の授業で学習した場面や登場人物を用いてSSEを実施する。
本研究では,吉田ら(2008)と同様,小学生を対象にSSEの効果を検討するが,その際に,初期の社会的スキルの程度に注目する。具体的には,SSEの効果が全ての児童に対して効果を持つのか,それとも社会的スキルが不足している児童に対して効果を持つのかという点である。その理由として,学級全体を分析対象として集団SSTの効果を検討した場合,天井効果が生じ,効果の判定が困難な場合がある(藤枝ら,2001)ことが指摘されている。そのため,介入前の社会的スキルの高さに着目することでこの問題に対応する。
■方法■ 対象児童 小学1年生109名(男子57名,女子52名)。実施時期 質問紙調査,SSEを含め,2013年1月下旬から2月上旬。標的スキル SSEを実施する児童の状況および担任教師の意見から,「友達の気持ちを考える(共感)」「あたたかい言葉かけ」を標的スキルとした。SSEの概要 SSEは1コマ45分として,1週間に1コマ,全部で4コマ実施した。そのうち1,3コマで道徳の授業,2,4コマにSSEを行った。道徳の授業で取り上げた教材は1コマ目が「二わのことり」,3コマ目が「はしの上のおおかみ」だった(Table 1)。いずれも内容項目は2-(3)「友達と仲よくし,助け合う」(二わのことり),2-(2)「幼い人や高齢者など身近にいる人に温かい心で接し,親切にする」(はしの上のおおかみ)であり,SSEと関連のある教材である。使用尺度 江村ら(2002)の小学生用社会的スキル尺度29項目より「仲間強化」因子10項目を4件法で回答を求めた。
■結果と考察■ 介入前・介入後の2回の質問紙調査に回答した児童82名(男子44名,女子38名)の分析を行った。本研究ではSSEの効果が全ての児童に対して効果を持つのか,それとも社会的スキルが不足している児童に対して効果を持つのかという点を検討するために,まず,介入前の社会的スキル尺度平均得点の中央値を算出(Me = 3.10)し,中央値折半法により介入前の社会的スキル得点の低群・高群に分類した。次に,社会的スキル得点を従属変数とし,介入前のスキルの高さ(2:低・高),測定時期(2:介入前・介入後)を独立変数とした2要因分散分析を実施した。その結果,群の主効果(F (1, 80) = 133.28, p <.01),測定時期の主効果(F (1, 80) = 15.87, p <.01),群と測定時期の交互作用(F (1, 80) = 11.60, p <.01)が有意であった(Figure 1)。以上のことから,介入前に社会的スキルの不足している児童に対してSSEの効果がみられたことが示唆された。
■引用文献■ ○江村ら(2002). 日本カウンセリング学会第35回大会発表論文集, 94.○藤枝ら(2001). 教育心理学研究, 49, 107-117.○吉田ら(2008). 日本グループ・ダイナミックス学会第55回大会発表論文集, 110-111.○吉田ら(2012). 応用教育心理学研究, 28, 31-39.