The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 5階ラウンジ (5階)

[PH010] 心の減災教育プログラムの効果測定に関する研究(6)

呼吸法の利用頻度による検討

吉武久美1, 窪田由紀2, 鈴木美樹江3, 坪井裕子4, 松本真理子2, 森田美弥子2 (1.名古屋大学大学院, 2.名古屋大学, 3.金城学院大学, 4.人間環境大学)

Keywords:心の減災, 教育プログラム

問題と目的
 我々は,東日本大震災後,災害時に生じる心理的被害を減らし,さらに,日常的な心の健康を増進させることを目的として,心理教育プログラムを開発した。本プログラムは3部からなり,1)10秒呼吸法の効果を体験させ,2)ストレスに対処するための認知の修正を学び,3)他者と助け合い信頼関係の大切さを体験的に理解する構成になっている。本研究では,2),3)のプログラムの実施前・直後および2ヵ月後(フォローアップ)に行った効果測定を検討する。これにより本プログラムにおける成果及び今後の課題を明らかにする。
方法
【調査対象】A県内のB小学校5年生130名(118名),6年生168名(140名)。計3回の調査のすべてに回答した( )内の258名を分析した。実施方法については,窪田ら(2014)を参照。
結果と考察
 実施前調査で「日常生活での10秒呼吸法の利用と利用経験回数」に回答することを求めた。この項目から,呼吸法を「利用していない」「利用しても1回」とした児童を利用頻度低群,「複数回利用した」児童を利用頻度高群に群分けした(利用頻度低/高5年生37/81名・6年生65/75名)。実際
に10秒呼吸法を利用している頻度によって,プログラム効果が異なるのかを検討するため,利用頻度高低とプログラム(実施前-実施後-フォローアップ)を独立変数とした分散分析を行った(Table1)。
その結果,プログラム実施の主効果は自尊感情以外で見られたが,有意傾向にとどまった。また,利用頻度の主効果がすべての変数で見られ,10秒呼吸法の利用頻度が高い児童の方が低い児童よりも対人的信頼感,優しい言葉かけ,認知の修正,自尊感情が有意に高いことが明らかとなった。いずれにおいても交互作用は認められなかった。
石川ら(2013)では,10秒呼吸法を行うと落ち着くという思い(呼吸法対処効力感)の効果と,日常の呼吸法利用がこの対処効力感を高める可能性が示された。今回の調査からも10秒呼吸法による一定の効果が認められた。実際の生活に10秒呼吸法を取り入れることが児童にポジティブな影響を与えており,簡単なリラックス法の積極的利用がプログラムの効果を高めている可能性がある。しかし,10秒呼吸法の利用が,プログラムの実施効果の維持に与える影響は見出されておらず,プログラム実施後の児童への働きかけなどを今後検討する必要がある。
「本研究は日本学術振興会科学研究費挑戦的萌芽研究(No.24653193),基盤研究(B)(No.25285191),名古屋大学平成25年度地域貢献事業の助成を受けた。」