[PH016] 被災経験と養護教諭の資質の関係に関する研究
キーワード:養護教諭の資質, 被災, カウンセリング態度
問題と目的
佐藤・井上・小松代・浅川(2013)によれば,養護教諭の有する資質には,「教師の社交性」,「カウンセリング態度の涵養」,「児童生徒への指示・指導」,「準備へのきまじめさ」,「受容‐共感的態度」が含まれるとされる。2011年3月に東日本各地域は,激甚の災害に見舞われた。本研究では,この被災が養護教諭の資質に及ぼす影響を検討することを主たる目的とした。
方法
被災地及び非被災地の学校に勤務する養護教諭119名が本研究に参加した(被災地79名,非被災地40名)。佐藤他(2013年)で用いられた養護教諭資質尺度が用いられ,その5つの下位領域ごとの得点が整理された。反応は4件法により,フェイスシートにおいて,勤務地や被災の有無,そして勤務年数などが尋ねられた。
結果 及び 考察
養護教諭資質尺度の5下位尺度別の被災の有無による平均得点と標準偏差をTable1に示した。
「カウンセリング態度の涵養」得点について
この表に基づき,各下位尺度得点について,2(被災の有無)×3(養護教諭経験年数)の2要因分散分析を行ったところ,カウンセリング態度の涵養得点において,経験年数の主効果が有意であった。下位分析の結果,経験年数20年以上群が他の群よりも有意に高い得点を示すことがわかった。また,準備へのきまじめさ得点については,被災地群の得点が非被災地群の得点を有意に上回っていた(Table2参照)。
カウンセリング態度の涵養得点について,被災の有無及び経験年数を独立変数とする2要因分散分析の結果からは,地域による得点の有意差は認められないこと,経験年数20年以上群が有意に高得点であることが明らかとなった。また,被災の有無と現任校勤務年数を独立変数とした2要因分散分析の結果では現任校勤務年3年未満群が現任校勤務3年以上5年未満群よりも,当該得点が有意に低いこともわかった。これらの事実は,養護教諭経験年数20年以上のベテランの養護教諭群では,カウンセリング的な態度が定着していることを示唆するものであろう(Table3参照)。
被災の有無と現任校勤務年数を独立変数とする2要因分散分析では,カウンセリング態度の涵養において,これら両要因の交互作用が有意であった。非被災地の現任校勤務3年未満群より被災地の3年未満群の養護教諭は得点が顕著に高くなっていた。非被災地群では,当該得点は現任校勤務3年以上5年未満群の方が有意に高いが,被災地群では顕著な差異は認められなかった。被災地の学校では,災害後も子どもたちの心理的ケアに注意が払われていたため,このことが影響したことと思われた。
「準備へのきまじめさ」得点について
上記と同様の分析を行ったが,養護教諭経験年数と現任校勤務年数のいずれにおいても,非被災地の養護教諭群よりも被災地の養護教諭群の当該得点が有意に高いことが明らかであった。これは,被災後の児童生徒の健康状態を経年的にみていこうとする被災地の養護教諭の意識が表れた結果であったと考えられた。
佐藤・井上・小松代・浅川(2013)によれば,養護教諭の有する資質には,「教師の社交性」,「カウンセリング態度の涵養」,「児童生徒への指示・指導」,「準備へのきまじめさ」,「受容‐共感的態度」が含まれるとされる。2011年3月に東日本各地域は,激甚の災害に見舞われた。本研究では,この被災が養護教諭の資質に及ぼす影響を検討することを主たる目的とした。
方法
被災地及び非被災地の学校に勤務する養護教諭119名が本研究に参加した(被災地79名,非被災地40名)。佐藤他(2013年)で用いられた養護教諭資質尺度が用いられ,その5つの下位領域ごとの得点が整理された。反応は4件法により,フェイスシートにおいて,勤務地や被災の有無,そして勤務年数などが尋ねられた。
結果 及び 考察
養護教諭資質尺度の5下位尺度別の被災の有無による平均得点と標準偏差をTable1に示した。
「カウンセリング態度の涵養」得点について
この表に基づき,各下位尺度得点について,2(被災の有無)×3(養護教諭経験年数)の2要因分散分析を行ったところ,カウンセリング態度の涵養得点において,経験年数の主効果が有意であった。下位分析の結果,経験年数20年以上群が他の群よりも有意に高い得点を示すことがわかった。また,準備へのきまじめさ得点については,被災地群の得点が非被災地群の得点を有意に上回っていた(Table2参照)。
カウンセリング態度の涵養得点について,被災の有無及び経験年数を独立変数とする2要因分散分析の結果からは,地域による得点の有意差は認められないこと,経験年数20年以上群が有意に高得点であることが明らかとなった。また,被災の有無と現任校勤務年数を独立変数とした2要因分散分析の結果では現任校勤務年3年未満群が現任校勤務3年以上5年未満群よりも,当該得点が有意に低いこともわかった。これらの事実は,養護教諭経験年数20年以上のベテランの養護教諭群では,カウンセリング的な態度が定着していることを示唆するものであろう(Table3参照)。
被災の有無と現任校勤務年数を独立変数とする2要因分散分析では,カウンセリング態度の涵養において,これら両要因の交互作用が有意であった。非被災地の現任校勤務3年未満群より被災地の3年未満群の養護教諭は得点が顕著に高くなっていた。非被災地群では,当該得点は現任校勤務3年以上5年未満群の方が有意に高いが,被災地群では顕著な差異は認められなかった。被災地の学校では,災害後も子どもたちの心理的ケアに注意が払われていたため,このことが影響したことと思われた。
「準備へのきまじめさ」得点について
上記と同様の分析を行ったが,養護教諭経験年数と現任校勤務年数のいずれにおいても,非被災地の養護教諭群よりも被災地の養護教諭群の当該得点が有意に高いことが明らかであった。これは,被災後の児童生徒の健康状態を経年的にみていこうとする被災地の養護教諭の意識が表れた結果であったと考えられた。