日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PH

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PH027] 放物運動における水平方向の慣性の理解の促進

安永正夫 (早稲田大学)

キーワード:慣性の法則, 誤概念, 大学生

問題と目的 等速で進む飛行機から落とした物がどこに落ちるかを問う問題で,直落信念が生じる理由として,鉛直方向に重力が働いているため,水平方向の慣性が失われてしまうと考えている可能性がある。水平な床の上では慣性を認めやすいと考えられるため,鉛直方向と水平方向を分けて,水平方向の慣性が落下中でも床の上と同じように変わらず働き続けるということを学習者に教授することによって,特に落下中の物体に関する水平方向の慣性の理解が促進されるかを検討する。
方法 対象は私立大学の教育学部生45名で,心理学関係の講義の中で実施した。A4判の用紙3枚(2枚目はA3判折込)に問題や説明が書かれていた(Figure参照)。1枚目は事前問題で,問1~問3が書かれていた。2枚目は教授セッションであった。実験者が冊子の内容を一部パワーポイントを用いて読み進めた。また,学習後に練習問題として,等速で飛ぶ飛行機が荷物を落とすとどこに落ちるかを問う問題があった。学習者はまず初見でどこに落ちるかをア~オから選択した(2枚目⑧)。次に,落下中の荷物に鉛直方向や水平方向の力が加わっているか,その結果それぞれの方向へ進む単位時間当たりの距離はどうなるかを選択して,再度ア~オのどこに落ちるかを別欄に書き入れた。その後,実験者によって答え合わせと解説が行われた。3枚目は事後問題で,問4~6があった。問5は2枚目の練習問題と類似であり,問6は応用問題だった。それぞれの内容とその結果はFigureの中に示した。
結果と考察 事前問題では水平な床の上の慣性はほぼ全員が認め(問1),崖に差し掛かった時も放物線の軌跡で落下することはほぼ理解されている(問2)が,落下している物体の水平方向の慣性は弱まる,あるいはなくなると考える者が多かった(問3)。よって,床の上と落下中を結び付けて学習することは意味があることであろう。しかし,教授セッションを経ても練習問題の正答率はあまり高くならず,単位時間に水平方向に進む距離が変わらないことがわかっても,未だに直落信念を持っている者も見られた。事後問題では,練習問題と類似の問題(問5)は正解できるが,未だ落下中に水平方向にも力が働いていると考えるものが多く(問4),応用問題(問6)も充分に正答できないことが示された。今回の方法では,落下している物体の水平方向に働く慣性についての理解は表面的なものに留まってしまった可能性が高い。