[PH030] 幼児の引き算―求差型―数操作に関する教授学習的考察
キーワード:幼児, 引き算, 求差型
【問題と目的】引き算には,求残,求補,求差の3種類あり,就学前の幼児では,求残は容易に答えられるが,求差は難しい。「余る・足らない」という表現が,「多い・少ない」という表現よりも,幼児にとって容易であり,求差型の難しさの理由の1つに「意味的要因」が挙げられている。また,「求差」は「二集合間における真に多い部分を想定する」操作を必要としており,「求補」にあたる「二集合間の要素数を同一にする」操作とは異なっている。求補的操作に固執する段階では,求差課題は難しく,「余る」と「足りない」を比較した場合,前者は求差に相当し,求補に相当する後者よりも解答が困難なのではないかと指摘もある。そこで本研究は,引き算未学習の幼児を対象に以下のことを調べることとする。1.モノの異同で求差・難易度の差はあるか。2.意味論的整合性のある文脈で「余る」「足らない」で正答率に差はあるのか。3.「余から多転移」方略(+「一対一対応づけの誘導」方略)と「不足から少転移」方略(+「一対一対応づけの誘導」方略)は効果を持つのか。
【方法】1.実験の概要:個別検査で,一人あたり15分程度。2.被験児:N市保育園年長36名。3.手続き:(1)比べる二つの量が同じ(アメ)場合;"5-3=2"。1)数確認。2)数の多・質問。3)求差(多)質問。4)"余る"質問。5)再度求差質問。6)「余から多転移」後求差質問。7)数の少・質問。8)求差(少)質問。9)"不足"質問。10)再度求差質問。11)「不足から少転移」後求差質問。(2)比べる二つの量が異なる(コップとストロー)場合;〔1求差(多)〕"7-4=3"〔2求差(少)〕"6-4=2":手順は(1)と同じ。
【結果と考察】1.数の確認・多少:全ての幼児が正答した。2.求差問題:(1)同・異種の正答率;異種の方が正答率が高いが,全体的に正答率は低い。(2)"多・少"正答率;"多・少"問題で同種と異種で正答率に違いが見られる。(3)誤答分析;同種の場合「多い数・少ない数の方」を,異種の場合「わからない」と答える傾向が見られる。3.求差と"余る・不足"との関係:同種では「余る(足りない)?」と聞く方が正答率は高い。"余る"問題と"不足"問題で比べると,後者の方が正答率は高く,より正答率の上昇が見られる。異種では両問題の正答率にあまり差は見られない。異種・求差(多)と"余る"との比較では,両方とも正答した幼児は9割であり,同・異種-求差(少)と"不足"との比較では,"不足"問題で誤答の幼児は求差問題でも誤答で,"不足"問題で正答の幼児でも求差問題は間違えていた。異種・求差(多・少)で誤答の幼児を見ると,求差問題は間違えるが,"余る・不足"問題では正答できるという幼児は半数程度である。4.方略の効果:2方略とも,明白な効果は見られなかった。5.求差問題における同種,異種の関係:同種で正答ならば異種でも正答している傾向があり,逆に同種で正答できない幼児は異種でも正答することはできていない。6."余る・不足"問題における同種,異種の関係:同種"余る"問題で誤答の幼児の約6割(9/14)が"不足"問題では正答し,異種"余る"問題で誤答の幼児の4割(4/10)が"不足"問題で正答している。また同種"不足"問題で誤答の幼児の約3割(2/7)が"余る"問題で正答し,また,異種"不足"問題で誤答の幼児の約3割(2/8)が"余る"問題で正答している。"不足"問題の方が理解しやすいということが分かる。
【方法】1.実験の概要:個別検査で,一人あたり15分程度。2.被験児:N市保育園年長36名。3.手続き:(1)比べる二つの量が同じ(アメ)場合;"5-3=2"。1)数確認。2)数の多・質問。3)求差(多)質問。4)"余る"質問。5)再度求差質問。6)「余から多転移」後求差質問。7)数の少・質問。8)求差(少)質問。9)"不足"質問。10)再度求差質問。11)「不足から少転移」後求差質問。(2)比べる二つの量が異なる(コップとストロー)場合;〔1求差(多)〕"7-4=3"〔2求差(少)〕"6-4=2":手順は(1)と同じ。
【結果と考察】1.数の確認・多少:全ての幼児が正答した。2.求差問題:(1)同・異種の正答率;異種の方が正答率が高いが,全体的に正答率は低い。(2)"多・少"正答率;"多・少"問題で同種と異種で正答率に違いが見られる。(3)誤答分析;同種の場合「多い数・少ない数の方」を,異種の場合「わからない」と答える傾向が見られる。3.求差と"余る・不足"との関係:同種では「余る(足りない)?」と聞く方が正答率は高い。"余る"問題と"不足"問題で比べると,後者の方が正答率は高く,より正答率の上昇が見られる。異種では両問題の正答率にあまり差は見られない。異種・求差(多)と"余る"との比較では,両方とも正答した幼児は9割であり,同・異種-求差(少)と"不足"との比較では,"不足"問題で誤答の幼児は求差問題でも誤答で,"不足"問題で正答の幼児でも求差問題は間違えていた。異種・求差(多・少)で誤答の幼児を見ると,求差問題は間違えるが,"余る・不足"問題では正答できるという幼児は半数程度である。4.方略の効果:2方略とも,明白な効果は見られなかった。5.求差問題における同種,異種の関係:同種で正答ならば異種でも正答している傾向があり,逆に同種で正答できない幼児は異種でも正答することはできていない。6."余る・不足"問題における同種,異種の関係:同種"余る"問題で誤答の幼児の約6割(9/14)が"不足"問題では正答し,異種"余る"問題で誤答の幼児の4割(4/10)が"不足"問題で正答している。また同種"不足"問題で誤答の幼児の約3割(2/7)が"余る"問題で正答し,また,異種"不足"問題で誤答の幼児の約3割(2/8)が"余る"問題で正答している。"不足"問題の方が理解しやすいということが分かる。