[PH039] 総合的な学習の時間を活用した視覚障害理解教育の実践3
小学5年生を対象に
キーワード:障害理解, 視覚障害, 総合的な学習の時間
1.はじめに
水野・徳田(2014)は,障害理解教育の内容は段階的に提供されるべきであるとし,身体障害については「自分と異なる特徴のある人がいること」「障害の永続性」「使用するアイテムに関すること」「障害者は健常者と同じように生活できること」「日常生活で困ること」「生活上の工夫」「援助方法」「同じ社会の一員として尊重し合う必要があること」の順で伝えていくことを提案している。
著者は一昨年に2コマ,昨年に2コマの視覚障害理解を目的とした授業を同一対象に行ってきた(西館・永田・石田・松井,2012;西館・阿久津・萩中,2013)。一昨年には第3学年であった子どもに,目隠しをしての触察体験を通して,目が見えなくてもわかる,できることを伝えた。昨年には第4学年になった子どもに,視覚障害児の一日の生活の様子を伝え,さまざまな工夫によって障害のない人と同じように生活できることを伝えた。
本研究では,一昨年と昨年に授業を受けた子どもたちを対象に,障害者が外出において困ること,その困難を解消するための工夫を知ることを目的とした授業の実践を行い,子どもたちの認識が授業後にどのように変化したかを明らかにするための質問紙調査を実施した。
2.授業の実践
(1)対象児と時間
2013年12月にT県内の小学校に通う第5学年2クラスの子ども78名に対し,総合的な学習の時間2コマ(1コマ45分)を用いて,1クラスずつ,教室内で大学教員1名が授業を行った。
(2)授業の概要
1コマ目の授業のねらいは「視覚障害者が外を歩く時に困る場面や場所を知る」であった。子どもたちは,視覚障害者が屋外を歩行している様子を撮影した映像を見た後に,町の様子を描いた絵を見ながら,視覚障害者が困る場所について話し合った。町の絵には,点字ブロック上の駐輪自転車や人,駐車車両,歩道の工事現場,歩道に突き出した枝,段差などが描かれていた。
2コマ目の授業のねらいは「ひとによる援助の必要性に気づく」「援助される視覚障害者の気持ちをふまえて,援助のあり方や方法についての理解を深める」であった。子どもたちはまず,いつも手伝ってくれる人が傍についている状態をどう感じるかを話し合った。また,そのことをふまえて,「視覚障害者は一人で歩かずに,いつも手伝ってくれる人と一緒に歩けばよい」という考えをどう思うかについて話し合った。さらに,バリアフリー施設・設備の整備には限界があること,施設・設備があれば視覚障害者は安全に歩けるというわけではないことについて事前の説明を受けた後で,子どもたちはバリアフリー施設・設備の整備以外に必要なことは何かを話し合った。最後に,子どもたちは視覚障害者の援助方法を解説したビデオを視聴し,数名の子どもが手引きの実演を行った。
3.子どもの認識の変化
(1)方法
授業を受けた第5学年2クラスの子ども78名に対し,自記式の質問紙調査を授業の前日と翌日に行った。授業前後の回答について個の対応を図るため,質問紙には好きな食物と動物を記入させた。
(2)結果
視覚障害者が安心して外を歩くために必要なことを自由記述式で尋ね,子どもの回答を「情報・物理的バリアフリー化」「市民の障害理解」「移動補助等の活用」「その他」に分けた。授業後の記述を分類した結果,項目数が授業前より増えた子どもは24%,減った子どもが14%いた。各項目についてみると,情報・物理的バリアフリー化については授業後に記述が現れたケース(12%)より記述が無くなるケース(28%)が上回り,市民の障害理解については授業後に記述が現れたケース(32%)が無くなるケース(9%)を上回った。
「視覚障害者の外出には,いつも援助者がついた方がよい」という考えをどう思うかについて選択式で尋ねた結果,前後とも「よいと思う」と答えた子どもは35%,「よいと思う」から「よいと思わない」に回答が変化した子どもは38%,前後とも「よいと思わない」が18%であった。
視覚障害者に手伝いを申し出た際に断られた場面を示して,その理由を選択式で尋ねた。授業前には約9割の子どもが「(視覚障害者は)遠慮している」(65%),「自力ですべきと考えている」(24%)と答えていた。授業後はこのうちの29%が「その時は援助の必要がなかった」と答えており,これと逆方向へ回答を変化させた子どもはいなかった。
水野・徳田(2014)は,障害理解教育の内容は段階的に提供されるべきであるとし,身体障害については「自分と異なる特徴のある人がいること」「障害の永続性」「使用するアイテムに関すること」「障害者は健常者と同じように生活できること」「日常生活で困ること」「生活上の工夫」「援助方法」「同じ社会の一員として尊重し合う必要があること」の順で伝えていくことを提案している。
著者は一昨年に2コマ,昨年に2コマの視覚障害理解を目的とした授業を同一対象に行ってきた(西館・永田・石田・松井,2012;西館・阿久津・萩中,2013)。一昨年には第3学年であった子どもに,目隠しをしての触察体験を通して,目が見えなくてもわかる,できることを伝えた。昨年には第4学年になった子どもに,視覚障害児の一日の生活の様子を伝え,さまざまな工夫によって障害のない人と同じように生活できることを伝えた。
本研究では,一昨年と昨年に授業を受けた子どもたちを対象に,障害者が外出において困ること,その困難を解消するための工夫を知ることを目的とした授業の実践を行い,子どもたちの認識が授業後にどのように変化したかを明らかにするための質問紙調査を実施した。
2.授業の実践
(1)対象児と時間
2013年12月にT県内の小学校に通う第5学年2クラスの子ども78名に対し,総合的な学習の時間2コマ(1コマ45分)を用いて,1クラスずつ,教室内で大学教員1名が授業を行った。
(2)授業の概要
1コマ目の授業のねらいは「視覚障害者が外を歩く時に困る場面や場所を知る」であった。子どもたちは,視覚障害者が屋外を歩行している様子を撮影した映像を見た後に,町の様子を描いた絵を見ながら,視覚障害者が困る場所について話し合った。町の絵には,点字ブロック上の駐輪自転車や人,駐車車両,歩道の工事現場,歩道に突き出した枝,段差などが描かれていた。
2コマ目の授業のねらいは「ひとによる援助の必要性に気づく」「援助される視覚障害者の気持ちをふまえて,援助のあり方や方法についての理解を深める」であった。子どもたちはまず,いつも手伝ってくれる人が傍についている状態をどう感じるかを話し合った。また,そのことをふまえて,「視覚障害者は一人で歩かずに,いつも手伝ってくれる人と一緒に歩けばよい」という考えをどう思うかについて話し合った。さらに,バリアフリー施設・設備の整備には限界があること,施設・設備があれば視覚障害者は安全に歩けるというわけではないことについて事前の説明を受けた後で,子どもたちはバリアフリー施設・設備の整備以外に必要なことは何かを話し合った。最後に,子どもたちは視覚障害者の援助方法を解説したビデオを視聴し,数名の子どもが手引きの実演を行った。
3.子どもの認識の変化
(1)方法
授業を受けた第5学年2クラスの子ども78名に対し,自記式の質問紙調査を授業の前日と翌日に行った。授業前後の回答について個の対応を図るため,質問紙には好きな食物と動物を記入させた。
(2)結果
視覚障害者が安心して外を歩くために必要なことを自由記述式で尋ね,子どもの回答を「情報・物理的バリアフリー化」「市民の障害理解」「移動補助等の活用」「その他」に分けた。授業後の記述を分類した結果,項目数が授業前より増えた子どもは24%,減った子どもが14%いた。各項目についてみると,情報・物理的バリアフリー化については授業後に記述が現れたケース(12%)より記述が無くなるケース(28%)が上回り,市民の障害理解については授業後に記述が現れたケース(32%)が無くなるケース(9%)を上回った。
「視覚障害者の外出には,いつも援助者がついた方がよい」という考えをどう思うかについて選択式で尋ねた結果,前後とも「よいと思う」と答えた子どもは35%,「よいと思う」から「よいと思わない」に回答が変化した子どもは38%,前後とも「よいと思わない」が18%であった。
視覚障害者に手伝いを申し出た際に断られた場面を示して,その理由を選択式で尋ねた。授業前には約9割の子どもが「(視覚障害者は)遠慮している」(65%),「自力ですべきと考えている」(24%)と答えていた。授業後はこのうちの29%が「その時は援助の必要がなかった」と答えており,これと逆方向へ回答を変化させた子どもはいなかった。