[PH040] 現代の子どもをめぐる言説の検証
教師を対象とした調査から
キーワード:言説, 教師
問題と目的
近年、子どもの人間関係の希薄化や子どものコミュニケーション能力や規範意識の著しい低下が叫ばれている。しかし、子どもの人間関係の希薄化については、関係の多様化・流動化に伴い、求められるコミュニケーションが変わったことが指摘されている(浅野, 1999; 辻, 1999)。子どものコミュニケーション能力については、特に過去と比較して特に低下していないということが指摘されている(大久保・澤邉・赤塚, 印刷中)。子どもの規範意識については、過去と比較しても低下してことが明らかとなっている(栃木県総合教育センター, 2011)。
こうした言説とは逆の結果があるにもかかわらず、教育現場ではこうした言説が流布しており、教育政策にも影響を与えている。今回は、教師がこうした言説をどのようにとらえているのかについて焦点を当てることとする。
そこで、本研究では、教師を対象として、子どもの人間関係、子どものコミュニケーション能力、子どもの規範意識という現代の子どもをめぐる言説の検討を行うことを目的とする。
方法
調査対象者
学校教員291名(男性131名、女性160名)を対象とした質問紙調査を実施した。
手続き
①子どもの人間関係について持つイメージと根拠:子どもの人間関係について、「希薄化した」、「変わらない」、「濃密化した」の3件法で回答を求めた。さらに、その根拠について自由記述で回答を求めた。
②子どものコミュニケーション能力について持つイメージと根拠:子どものコミュニケーション能力について、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」の3件法で回答を求めた。さらに、その根拠について自由記述で回答を求めた。
③子どもの規範意識について持つイメージと根拠子どもの規範意識はについて、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」の3件法で回答を求めた。さらに、その根拠について自由記述で回答を求めた。
結果と考察
人間関係についてのイメージ
まず、「希薄化した」、「変わらない」、「濃密化した」と考える者の割合を算出した。その結果、「希薄化した」と答えた教師が最も多かった。次に、「希薄化した」、「変わらない」、「濃密化した」と考える根拠について検討するために、心理学を専攻する大学生3名と大学教員1名で自由記述をもとにカテゴリーを作成し、それぞれのカテゴリーの人数と割合を算出し、カイ二乗検定を行った。その結果、「希薄化した」では、「子どもの関係志向の変化」、「家族関係の変化」、「地域との関係の変化」の割合が高く、「自身の子ども時代との比較」の割合が低かった。「変わらない・濃密化した」では、「子ども関係志向の変化」、「家族関係の変化」、「地域との関係の変化」の割合が低く、「自身の子ども時代との比較」の割合が高かった。
コミュニケーション能力についてのイメージ
まず、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」と考える者の割合を算出した。その結果、「低くなった」と答えた教師が最も多かった。次に、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」と考える根拠について検討するために、同様にカテゴリーを作成し、それぞれのカテゴリーの人数と割合を算出し、カイ二乗検定を行った。その結果、「低くなった」では、「会話量の変化」の割合が高かった。「変わらない・高くなった」では、「会話量の変化」の割合が低かった。
規範意識についてのイメージ
まず、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」と考える者の割合を算出した。その結果、「低くなった」と答えた教師が最も多かった。次に、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」と考える根拠について明らかにするために、同様にカテゴリーを作成し、それぞれのカテゴリーの人数と割合を算出し、カイ二乗検定を行った。その結果、「低くなった」では、「保護者の教育による影響」の割合が高く、「自身の子ども時代との比較」の割合が低かった。「変わらない・高くなった」では、「保護者の教育による影響」の割合が低く、「自身の子ども時代との比較」の割合が高かった。
まとめ
本研究の結果から、子どもの人間関係、子どものコミュニケーション能力、子どもの規範意識、それぞれネガティブにとらえる教師が多いことが明らかとなった。また、ポジティブにとらえている教師は自らの子ども時代との比較から考えていることが示唆された。さらに、ベテランの教師ほどネガティブにとらえていることが明らかとなった。こうした結果は、教師は言説を普及させる側でもあり、教師はまた言説に影響されている側であることからも多角的に解釈することが必要であるといえる。
近年、子どもの人間関係の希薄化や子どものコミュニケーション能力や規範意識の著しい低下が叫ばれている。しかし、子どもの人間関係の希薄化については、関係の多様化・流動化に伴い、求められるコミュニケーションが変わったことが指摘されている(浅野, 1999; 辻, 1999)。子どものコミュニケーション能力については、特に過去と比較して特に低下していないということが指摘されている(大久保・澤邉・赤塚, 印刷中)。子どもの規範意識については、過去と比較しても低下してことが明らかとなっている(栃木県総合教育センター, 2011)。
こうした言説とは逆の結果があるにもかかわらず、教育現場ではこうした言説が流布しており、教育政策にも影響を与えている。今回は、教師がこうした言説をどのようにとらえているのかについて焦点を当てることとする。
そこで、本研究では、教師を対象として、子どもの人間関係、子どものコミュニケーション能力、子どもの規範意識という現代の子どもをめぐる言説の検討を行うことを目的とする。
方法
調査対象者
学校教員291名(男性131名、女性160名)を対象とした質問紙調査を実施した。
手続き
①子どもの人間関係について持つイメージと根拠:子どもの人間関係について、「希薄化した」、「変わらない」、「濃密化した」の3件法で回答を求めた。さらに、その根拠について自由記述で回答を求めた。
②子どものコミュニケーション能力について持つイメージと根拠:子どものコミュニケーション能力について、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」の3件法で回答を求めた。さらに、その根拠について自由記述で回答を求めた。
③子どもの規範意識について持つイメージと根拠子どもの規範意識はについて、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」の3件法で回答を求めた。さらに、その根拠について自由記述で回答を求めた。
結果と考察
人間関係についてのイメージ
まず、「希薄化した」、「変わらない」、「濃密化した」と考える者の割合を算出した。その結果、「希薄化した」と答えた教師が最も多かった。次に、「希薄化した」、「変わらない」、「濃密化した」と考える根拠について検討するために、心理学を専攻する大学生3名と大学教員1名で自由記述をもとにカテゴリーを作成し、それぞれのカテゴリーの人数と割合を算出し、カイ二乗検定を行った。その結果、「希薄化した」では、「子どもの関係志向の変化」、「家族関係の変化」、「地域との関係の変化」の割合が高く、「自身の子ども時代との比較」の割合が低かった。「変わらない・濃密化した」では、「子ども関係志向の変化」、「家族関係の変化」、「地域との関係の変化」の割合が低く、「自身の子ども時代との比較」の割合が高かった。
コミュニケーション能力についてのイメージ
まず、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」と考える者の割合を算出した。その結果、「低くなった」と答えた教師が最も多かった。次に、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」と考える根拠について検討するために、同様にカテゴリーを作成し、それぞれのカテゴリーの人数と割合を算出し、カイ二乗検定を行った。その結果、「低くなった」では、「会話量の変化」の割合が高かった。「変わらない・高くなった」では、「会話量の変化」の割合が低かった。
規範意識についてのイメージ
まず、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」と考える者の割合を算出した。その結果、「低くなった」と答えた教師が最も多かった。次に、「低くなった」、「変わらない」、「高くなった」と考える根拠について明らかにするために、同様にカテゴリーを作成し、それぞれのカテゴリーの人数と割合を算出し、カイ二乗検定を行った。その結果、「低くなった」では、「保護者の教育による影響」の割合が高く、「自身の子ども時代との比較」の割合が低かった。「変わらない・高くなった」では、「保護者の教育による影響」の割合が低く、「自身の子ども時代との比較」の割合が高かった。
まとめ
本研究の結果から、子どもの人間関係、子どものコミュニケーション能力、子どもの規範意識、それぞれネガティブにとらえる教師が多いことが明らかとなった。また、ポジティブにとらえている教師は自らの子ども時代との比較から考えていることが示唆された。さらに、ベテランの教師ほどネガティブにとらえていることが明らかとなった。こうした結果は、教師は言説を普及させる側でもあり、教師はまた言説に影響されている側であることからも多角的に解釈することが必要であるといえる。