[PH056] 日本語版強みの自覚尺度の作成の試み
キーワード:強みの自覚, 強み, 自尊感情
【問題・目的】
心理学的な強み/長所(以下,強みとする)がもたらす影響について一連の研究が注目されている(Wood, Linley, Maltby, Kashdan, & Hurling, 2011)。近年,そのような強みを自覚することが精神的健康等に影響することが知られている。
Govindji & Linley(2007)は,“自分が保有している強みを自覚している程度”に関して“Strength Knowledge Scale(以下,SKSとする)”を開発した。SKSは,キャッテルのスクリーテストで1因子構造が妥当と判断され,主成分分析の結果,8項目が採用され,十分な内的整合性が確認されている(Govindji & Linley, 2007)。SKSは,ウェルビーイングや自尊感情,全般的な自己効力感と有意な関連がみられている(Govindji & Linley, 2007)。
だが,日本には強みの自覚に関する尺度は作成されていなかった。本研究は,自らの強みについて自覚している度合を測定するStrength Knowledge Scale(Govindji & Linley, 2007)の日本語版の作成,ならびに信頼性と妥当性を検討することを目的とした。
【方法】
調査時期及び調査協力者 首都圏内の複数の大学の学生429名を対象とした。そのうち,回答に不備がある協力者を除いた423名(男性147名,女性273名,不明3名:平均年齢19.27,SD=2.23)を分析の対象とした。
日本語版強み自覚尺度 Govindji & Linley (2007) が作成したSKSをバックトランスレーションしたものを用いた。バックトランスレーションの手続きは以下の通りであった。まず,原著者(Linley)から日本語版使用の許可を得た。続いて日本語を母語とする研究者により日本語訳を行った。次に,筆者らにより日本語版の項目を英語に再翻訳を行った。最後に英語を母語とする研究者に再英語訳版と原版の語彙的な同義性の検討を依頼した。その結果,語彙的な同義性が確認された8項目を使用した。手続きを経て邦訳した8項目を使用した(以下,日本語版SKSとする)。
併存的妥当性検討のための調査票 強みの活用尺度,自尊感情,人格特性的自己効力感,主観的幸福感,抑うつ感に関する尺度を使用した。
【結果・考察】
日本語版SKS 8項目(n=423)について,探索的因子分析(最尤法)を行った。固有値の減衰状況と因子の解釈可能性から1因子構造を採用した。因子負荷量の検討を行った結果,全ての項目が採用された。内的整合性を検討するために,Cronbachのα係数を算出したところ,十分な内的整合性を有していると思われた。
日本語版SKSの併存的妥当性を検討するために使用した各尺度の平均値,標準偏差,信頼性係数を算出した。各尺度は十分な内的整合性を有していたため,以降の妥当性の検証に用いることができると判断した。日本語版SKSと各尺度間の相関係数を検討したところ,SWLS,自尊感情,人格特性的自己効力感との強い正の関連が認められた。また,CES-Dとの弱い負の関連が確認された。
日本語版SKSは原版尺度とほぼ同様の妥当性を持つことが確認できた。だが,本研究では日本人のみを対象とした知見であり,SKSの文化的な得点差を明確に検討するためには,欧米と我が国の被験者間の得点の差異に関しても検討する必要があるだろう。
(Makoto TAKAHASHI・Yoshiyuki MORIMOTO)
心理学的な強み/長所(以下,強みとする)がもたらす影響について一連の研究が注目されている(Wood, Linley, Maltby, Kashdan, & Hurling, 2011)。近年,そのような強みを自覚することが精神的健康等に影響することが知られている。
Govindji & Linley(2007)は,“自分が保有している強みを自覚している程度”に関して“Strength Knowledge Scale(以下,SKSとする)”を開発した。SKSは,キャッテルのスクリーテストで1因子構造が妥当と判断され,主成分分析の結果,8項目が採用され,十分な内的整合性が確認されている(Govindji & Linley, 2007)。SKSは,ウェルビーイングや自尊感情,全般的な自己効力感と有意な関連がみられている(Govindji & Linley, 2007)。
だが,日本には強みの自覚に関する尺度は作成されていなかった。本研究は,自らの強みについて自覚している度合を測定するStrength Knowledge Scale(Govindji & Linley, 2007)の日本語版の作成,ならびに信頼性と妥当性を検討することを目的とした。
【方法】
調査時期及び調査協力者 首都圏内の複数の大学の学生429名を対象とした。そのうち,回答に不備がある協力者を除いた423名(男性147名,女性273名,不明3名:平均年齢19.27,SD=2.23)を分析の対象とした。
日本語版強み自覚尺度 Govindji & Linley (2007) が作成したSKSをバックトランスレーションしたものを用いた。バックトランスレーションの手続きは以下の通りであった。まず,原著者(Linley)から日本語版使用の許可を得た。続いて日本語を母語とする研究者により日本語訳を行った。次に,筆者らにより日本語版の項目を英語に再翻訳を行った。最後に英語を母語とする研究者に再英語訳版と原版の語彙的な同義性の検討を依頼した。その結果,語彙的な同義性が確認された8項目を使用した。手続きを経て邦訳した8項目を使用した(以下,日本語版SKSとする)。
併存的妥当性検討のための調査票 強みの活用尺度,自尊感情,人格特性的自己効力感,主観的幸福感,抑うつ感に関する尺度を使用した。
【結果・考察】
日本語版SKS 8項目(n=423)について,探索的因子分析(最尤法)を行った。固有値の減衰状況と因子の解釈可能性から1因子構造を採用した。因子負荷量の検討を行った結果,全ての項目が採用された。内的整合性を検討するために,Cronbachのα係数を算出したところ,十分な内的整合性を有していると思われた。
日本語版SKSの併存的妥当性を検討するために使用した各尺度の平均値,標準偏差,信頼性係数を算出した。各尺度は十分な内的整合性を有していたため,以降の妥当性の検証に用いることができると判断した。日本語版SKSと各尺度間の相関係数を検討したところ,SWLS,自尊感情,人格特性的自己効力感との強い正の関連が認められた。また,CES-Dとの弱い負の関連が確認された。
日本語版SKSは原版尺度とほぼ同様の妥当性を持つことが確認できた。だが,本研究では日本人のみを対象とした知見であり,SKSの文化的な得点差を明確に検討するためには,欧米と我が国の被験者間の得点の差異に関しても検討する必要があるだろう。
(Makoto TAKAHASHI・Yoshiyuki MORIMOTO)