[PH059] 外向性・内向性の性格特性が競争状況に与える影響について
キーワード:外向性/内向性, 競争状況, 手段型競争心
■問題
教育現場に限らず企業など競争状況が用いられる場面は少なくはない。塩見(1978)は外向群が罰によって課題の反応速度が速くなるのに対して内向群は反応速度が遅くなると報告した。この結果から潜在的に賞罰の要因を競争状況では外向性/内向性という性格特性により,課題成績に差が生じると予想されこれを検討することが本研究の目的である。なお,仮説は競争条件において内向群の課題成績は外向群よりも低くなると考えられた。
研究1
■方法
大学生229人に対してMPIを実施し外向性得点が平均より0.5SD以上高い外向群20名,平均より0.5SD以上低い内向群23名に実験参加を求めた。参加者は実験協力者が参加者のふりをして並行して課題を実施する競争条件と, 参加者が一人で課題を実施する統制条件に分けられ,かなひろい課題の課題遂行量と正答率を比較した。実験協力者は実験刺激を一定にするため非常に早いスピードで課題をこなした。
■結果と考察
課題遂行量について, 性格特性(2)×条件(2)の分散分析を行い, 交互作用は有意傾向(F(1, 39)=3.43,p=.071),競争条件と外向条件の主効果がともに有意であった(F(1, 39)=5.37,p<.05)(F(1, 39)=10.95,p<.05)。このことから, 競争状況において内向群は課題処理数が低下することが示唆された。正答率についても同様に分散分析を行ったが有意差は見られなかった。このような結果の違いから, 外向性/内向性という性格傾向によって競争に対する態度に相違があると考えられた。よって,各性格傾向がどのように競争を捉えているかを検討する目的で研究2を行った。
研究2
■方法
大学生84名に対してMPIと太田(2010)の多面的競争尺度を実施した。
■結果と考察
外向・内向群の性格特性を独立変数とし, 各下位尺度を従属変数としたt検定を行った。 研究1と同様の方法で群分けを行ったところ外向群28名,内向群29名であった。下位尺度の「手段的競争心」「負けず嫌い」「社会的承認」「競争回避」の4つの得点を比較し, 手段型競争心(t= 2.70, p<.05)と社会的承認(t= 2.61, p<.05)に有意差が認められ,外向群は競争において内向群よりも, 競争を通した自らの成長, 競争相手との交流などに付加価値を持ちながら競争に参加していると考えられた。
■総合考察
本研究から内向群が競争において成績が低下する傾向があること,外向群と内向群で競争に対する態度に大きな差があることが理解された。外向群は競争に自己成長の可能性や相手との交流などの付加価値を見出す傾向が見られた。このような付加価値に着目することで外向群は競争状況を適度な刺激量で対応しているようにも考えられた。それに対して内向群は競争刺激に集中するため,競争状況が過度な刺激となった可能性が高い。もっとも,本研究では実験協力者が非常に早いスピードで課題をこなす不利な状況での競争のため,全ての競争場面で内向群の成績が低下するとは限らない。ただ,不利な状況,苦手な課題で彼らに競争を強いることが傷つきとなる可能性は高いだろう。今後の研究では,より広い場面における外向性/内向性と競争状況の理解を深めたい。
教育現場に限らず企業など競争状況が用いられる場面は少なくはない。塩見(1978)は外向群が罰によって課題の反応速度が速くなるのに対して内向群は反応速度が遅くなると報告した。この結果から潜在的に賞罰の要因を競争状況では外向性/内向性という性格特性により,課題成績に差が生じると予想されこれを検討することが本研究の目的である。なお,仮説は競争条件において内向群の課題成績は外向群よりも低くなると考えられた。
研究1
■方法
大学生229人に対してMPIを実施し外向性得点が平均より0.5SD以上高い外向群20名,平均より0.5SD以上低い内向群23名に実験参加を求めた。参加者は実験協力者が参加者のふりをして並行して課題を実施する競争条件と, 参加者が一人で課題を実施する統制条件に分けられ,かなひろい課題の課題遂行量と正答率を比較した。実験協力者は実験刺激を一定にするため非常に早いスピードで課題をこなした。
■結果と考察
課題遂行量について, 性格特性(2)×条件(2)の分散分析を行い, 交互作用は有意傾向(F(1, 39)=3.43,p=.071),競争条件と外向条件の主効果がともに有意であった(F(1, 39)=5.37,p<.05)(F(1, 39)=10.95,p<.05)。このことから, 競争状況において内向群は課題処理数が低下することが示唆された。正答率についても同様に分散分析を行ったが有意差は見られなかった。このような結果の違いから, 外向性/内向性という性格傾向によって競争に対する態度に相違があると考えられた。よって,各性格傾向がどのように競争を捉えているかを検討する目的で研究2を行った。
研究2
■方法
大学生84名に対してMPIと太田(2010)の多面的競争尺度を実施した。
■結果と考察
外向・内向群の性格特性を独立変数とし, 各下位尺度を従属変数としたt検定を行った。 研究1と同様の方法で群分けを行ったところ外向群28名,内向群29名であった。下位尺度の「手段的競争心」「負けず嫌い」「社会的承認」「競争回避」の4つの得点を比較し, 手段型競争心(t= 2.70, p<.05)と社会的承認(t= 2.61, p<.05)に有意差が認められ,外向群は競争において内向群よりも, 競争を通した自らの成長, 競争相手との交流などに付加価値を持ちながら競争に参加していると考えられた。
■総合考察
本研究から内向群が競争において成績が低下する傾向があること,外向群と内向群で競争に対する態度に大きな差があることが理解された。外向群は競争に自己成長の可能性や相手との交流などの付加価値を見出す傾向が見られた。このような付加価値に着目することで外向群は競争状況を適度な刺激量で対応しているようにも考えられた。それに対して内向群は競争刺激に集中するため,競争状況が過度な刺激となった可能性が高い。もっとも,本研究では実験協力者が非常に早いスピードで課題をこなす不利な状況での競争のため,全ての競争場面で内向群の成績が低下するとは限らない。ただ,不利な状況,苦手な課題で彼らに競争を強いることが傷つきとなる可能性は高いだろう。今後の研究では,より広い場面における外向性/内向性と競争状況の理解を深めたい。