日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PH

(501)

2014年11月9日(日) 13:30 〜 15:30 501 (5階)

[PH077] 幼稚園での里山自然活動を保護者はどうとらえているか2

B幼稚園の分析から

滝口圭子 (金沢大学)

キーワード:幼児, 保育内容, ESD

「森のようちえん」や持続可能な社会のための幼児を対象とする環境教育(井上,2012)の広まりの中,「金沢大学里山ゾーンを活用した幼児向け自然教育プログラムの開発」を受け,2013(平成25)年度に5歳児クラスを対象とした「融合型森のようちえん(日々の生活を園舎で行い,年間を通じて月に数回から10回程度,森へと出かけて活動を行うタイプ)」(今村,2011)が実施された(滝口,2014a)。本研究の目的は,K幼稚園(滝口,2014b)に続き,前期活動を経てのB幼稚園の子ども及び保護者の変容を明らかにすることである。
方 法
調査対象:金沢市内私立B幼稚園5歳児クラス保護者41名を対象に調査票を配布し,34名から回答を得た(回収率83%)。
調査期間:2013(平成25)年7月
結果と考察
① 里山活動を経験しての変容
1)里山活動について(「全くよくなかった」~「とてもよかった」5件法):平均値4.6
2)子どもが里山活動について家庭で話をした程度(「全くなかった」~「よくあった」5件法):平均値4.2
3)家庭での自然活動の程度(「全くなかった」~「よくあった」5件法):活動参加前平均値3.1 活動参加後平均値3.0
4)子どもの変化:「あった」(74%),「なかった」(3%),「わからない」(23%)であり,「自然にある植物や色々な音,季節の変化に興味が出てきた。通園途中で見たり聞こえてきたりしたものが,どんなものなのか知りたい気持ちが旺盛で,調べたりするようになった」「虫やカエルなど生物に興味を持って,自分で捕まえたり触ったりできるようになった。月が昼間に見えたり,虹がかかっていたり,たんぽぽの花が綿毛に変わったりするような身の回りの自然に気づけるようになった」という自由記述回答が得られた。
5)保護者の変化:「あった」(41%),「なかった」(24%),「わからない」(35%)であり,「遊具がなければ自転車やボールなど遊び道具を持参しないと子どもが満足できないのではないかと気になっていたが,何もなくても自然があれば子どもたちは様々な遊びを見つけて楽しむことができるのだと知ることができ,遊びの幅を広げることができた」「大人の認識が正解ではなく,子どもの感じていることに目を向けたいと思った。自分は幼少期に自然の中でよく遊び,泥まみれになっていた。それなのに,自分の子どもへは“危ない”“汚い”“触らない”と声をかけていて,矛盾していると気づかされた」「前は利便性を生活に求めていたが,自分の生活に自然を思う気持ちが出て,共存してもという心が芽生えてきた」という自由記述回答が得られた。
② 保護者の変容と遊び観との関連性
西尾(2012)の保護者の遊び観尺度(4因子23項目)を実施した。保護者の変化3(変化あり,変化なし,不明)×遊び観因子4(教育観,効力,負担感,受容・共感)の分散分析を実施した結果,変化あり群は遊びに対する負担感(「子どもとの遊びは疲れるものである」等)が低かった(図1)。子どもとの遊びに比較的負担を感じない保護者は,前期活動を経て,自身の変容を認めていたようだ。
Keiko TAKIGUCHI
引用文献
今村光章 2011 森のようちえん:自然のなかで子育てを 解放出版社
井上美智子 2012 幼児期からの環境教育:持続可能な社会にむけて環境観を育てる 昭和堂
西尾和歌子 2012 母親のもつ「遊び観」と「遊び場面でのかかわり方」が「母親が楽しさを感じる場面」に与える影響 三重大学教育学部2011年度卒業論文
滝口圭子 2014a 幼児を対象とした里山ゾーンにおける自然活動:前期(4~7月)の取り組みから 金沢大学人間社会学域学校教育学類紀要,6,35-48.
滝口圭子 2014b 幼稚園での里山自然活動を保護者はどうとらえているか:K幼稚園の分析から 日本保育学会大会発表論文集,67,288.