日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PH

(501)

2014年11月9日(日) 13:30 〜 15:30 501 (5階)

[PH093] 東日本大震災後に福島県内の仮設住宅で生活する子どものメンタルヘルス(4)

小学生における遊びおよび学習の状況

三浦文華1, 岡安孝弘2, 三浦正江3 (1.銀座山崎メンタルクリニック, 2.明治大学, 3.東京家政大学)

キーワード:仮設住宅在住の子ども, 生活状況

【問題と目的】
東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故から3年以上が経過したが,未だ事故原因や収束に向けての見通しは定かではない。この状況は,原発地域から避難して仮設住宅に居住している小中学生に多大な影響を及ぼしていると推察される。しかし,これまでに被災した子どもの心身状態に関する研究は行なわれているものの(斉藤・西田,2001),原発事故環境下の子ども,あるいは仮設住宅在住の子どもを対象としたものは数少ない。そこで本研究では,福島県内の仮設住宅在住の小学生を対象とした生活状況の実態調査を行なうことを目的とした。
【方法】
調査対象 1.原発地域から避難し福島県内の仮設住宅,借上げ住宅に在住の小学4―6年生28名(男子17名,女子10名,不明1名)。
2.福島県内小学校に在籍する自宅在住の小学4―5年生106名(男子587名,女子45名,不明3名)。
3.埼玉県内の小学校に在籍する小学4―6年生321名(男子156名,女子163名,不明2名)。
調査内容 服部・山田(2011)を参考に,最近1ヶ月の生活状況として,1.遊び場所(家,広場・公園,友だちの家,学校,その他から複数回答),2.遊びの満足度(4件法),3.学習時間,4.自宅学習での集中(4件法),5.家族に心配事を話したか(4件法)について測定した。
調査時期・手続き 東京家政大学倫理委員会の承認を受けた手続きに基づき,2013年11月中旬から2014年2月下旬に無記名式で実施した。
【結果と考察】
1.遊び場所 いずれの居住地でも,家で遊ぶ子どもの割合が6~7割と最も高かった。広場・公園で遊ぶ子どもについては,埼玉県内で約55.14%に対し,仮設在住では39.29%,福島県内では31.96%と少ない傾向にあった。
2.遊びの満足度 福島県内の子どもの82.48%が「わりと」あるいは「とても」満足している一方で,仮設住宅および埼玉県内で同様に回答したのはそれぞれ60.71%,61.99%であった。さらに,仮設住宅在住の子どもの28.57%が「全然満足していない」と回答していた(Figure 1)。仮設住宅在住の子どもの遊びの満足度は低い傾向にあるといえる。その要因については,住環境が影響している可能性が考えられる。
3.学習時間 居住地による差異はみられず,いずれにおいて最も多かったのが30―60分,次いで30分以内であった。
4.自宅学習での集中 福島県内および埼玉県内の子どもは「わりと」あるいは「とても」集中できたとの回答が6割以上だった一方で,仮設住宅では同様の解答は4割程度で,2割以上の子どもが「全然集中できなかった」と回答した(Figure 2)。
5.家族と話す時間 福島県内や埼玉県内では「わりと」あるいは「とても」話したとの回答がそれぞれ57.74%,57.01%だったのに対し,仮設住宅在住の子どもで同様に回答したのは28.58%と少ない傾向にあった。
本研究の限界として,仮設住宅在住の調査対象者が少ないことが挙げられる。さまざまな仮設住宅に在住の子どもを対象に調査を行ない,生活状況を踏まえた支援を検討することが今後の課題である。