The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(501)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PH097] 精神的困難状態からの回復過程と友達の役割

山口孔丹子1, 菅野純2 (1.四国学院大学, 2.早稲田大学)

Keywords:青年期, 友達

目 的
精神的困難状態からの回復過程を明らかにし,回復のために役立ったことを調査する。考察では,回復過程における友達の役割,青年への教師やカウンセラーが行う支援について検討する。

方 法
対象者:精神的困難状態から回復した青年7名(男性4名女性3名)調査材料:逐語録,ICレコーダー,調査方法:学校不適応状態からの回復過程について回想していただき,インタビュー項目に沿って半構造化面接を行った。分析方法:コードマトリックスによる質的データ分析(佐藤,2008)

結 果
表1:属性と精神的困難状態
属性時期精神的困難状態
A男性 30歳16~20歳心身症。アイデンティティの悩み。
B男性 20歳17~18歳劣等感。うつ状態。進路が決まった友達への妬み。
C男性 22歳18歳くやしさ。無力感。学校をさぼりがちになる。
D男性 24歳20歳うつ状態。一人でいられない。ネガティブな思考。
E女性 22歳18歳大学になじめない。学校に居場所がないと感じる。
F女性 23歳19歳明日が来なければいいと思う。自分は何者か悩む。
G女性 21歳17歳目立っては,いけないとう考えにとらわれる。

表2:回復過程と回復過程で役立ったこと
回復過程役立ったこと
A・進路決定して勉強する。
・自分を相対化できる友達と出会う。
高校の友達,進路決定,大学の友達
B・友達についての誤解がとける。
本,音楽,姉,友達
C・友達と話す。
・ラジオに投稿する。
友達,お笑い,ラジオ
D・母,相談員に話す。
・友達,彼女ができる
母,相談員,友達,彼女
E・両親と暮らす。
・友達ができる。
両親,友達,ボランティア活動
F・中学時代の友達に会う。
中学時代の友達
G・小学校時代の先生,友達と話す。
小学校時代の先生,小学校時代の友達

考 察
1.回復過程における友達の役割
①アイデンティティの確立のための助けを得る
Aさんは,自分を相対化できる友と出会い,Fさんは友達の言葉を通して「これが私なんだ」と思うことができた。友達から,アイデンティティの確立のための助けを得たと考えられた。
②思い込みを解消する
Bさん,Gさんは「悪口をいわれているんじゃないか」のような思い込みがあり,友達と距離を感じていた。友達と話し,間違っていた思い込みを解消したと推察された。
③ありのままの自分を受け入れてもらう
Dさんは友達を「落ち着ついて自分が素でいられる所」,Eさんは「ありがたい存在」と語った。友達にありのままの自分を受け入れられることが回復に役立ったと考えられた。
④気持ちを楽にする
Cさんは友達と話して気持ちが楽になった。普段の友達との交流が重要であることが推測された。
2.教師やカウンセラーが行う支援
精神的困難状態からの回復のために,「友達」が役立ったことが共通していた。教師やカウンセラーは,自らの精神的困難状態からの回復過程や成長過程を示すことで,友達のような身近なモデルとなるという支援もできることが示唆された。