The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(501)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PH098] 不登校生徒を取りまく女子中学生の心理理解と変化に関する集団コラージュ作成からの検討

中島千加子 (白百合女子大学)

Keywords:スクールカウンセリング, 思春期, コラージュ

<問題>
不登校生徒の存在は,その生徒に関わった個々の生徒や,クラス内の人間関係に様々な影響を及ぼすことが多い。本研究の目的は,不登校の中学生女子に対し,小学校時代から関わりのあった中学生女子の心理状態と変化を,スクールカウンセリングの現場で,集団コラージュの作成という非言語的な手法を用いて,検討,考察することである。
<手続>
1.対象 X中学校の相談室に訪れた中学1年生女子5~10名(以下A~Jとする)。
2.実施期間 Y年4月からその年度末まで約1年間のうちのスクールカウンセラー(以下SCとする)の勤務日(35日)。
3.方法 (1)ピクチャー・ボックス法:思春期女子に人気の雑誌やチラシ,パンフレットの切り抜き,動物,食べ物,自然,風景等,女子の興味・関心となるような写真と絵の切り抜きをSCが準備し,四つ切画用紙を相談室にある黒板にマグネットで貼りつけ,「みんなで切り抜きを好きなように貼って一つの作品を作りましょう」と教示した。(2)実施上のルール:①自由に好きな切り抜きを貼る。切り抜きをさらに自分の好きな形に切ってもよい。②強制参加ではない。見ているだけでもよい。③誰かが貼った切り抜きの上に重ねて貼りたくなった場合には,「ここにこうして貼ってもよいか」と相手に尋ねる。もしも貼った本人がその場にいないときには,貼った人の気持ちを考えて,どうするかを決める。④ハサミとノリは2セットずつ,全員分の準備はないので,互いに交代しながら,使用する。⑤できあがりはみんなで決める。⑥A~J以外でも,来室して関心を持った人は,参加OK。一人占めはしない。
<結果と考察>
「見る生徒」も加え,平均参加者は約7人。A~Jのコラージュ作成の経過と言動についてTable 1に示した。心理変化プロセスは,概ねⅠ~Ⅳの4つの段階にまとめられるであろうことが示唆された。コラージュ作成開始のⅡ期では,グループのまとまりが強く,何をするにも,他者を容易く入れないようなA~Jの心理がコラージュに表れている可能性がうかがわれた。Ⅲ期のコラージュからは,Ⅱ期のような感情が落ち着きを見せ始め,喜びを分けようとする心理変化が表れ,さらには,Ⅳ期には,それぞれがおいしいもの(喜び・楽しみ)を同じ場所(台紙)で楽しんでおり,他者(不登校女子とも言えよう)との「共有・共存」ばかりではなく,「個性の認め合いの始まり」という心理的成長もコラージュに示唆されていると受け取れた。不登校生徒と同じクラスであるA~Jに,個別にではなく,集団で一つのコラージュを作成することで,それぞれが感情を整理し,心理的に成長することに,良好な効果をもたらしている可能性があると言えよう。