The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH

(501)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PH099] 保育士の母親への指示的・受容的な関わり方が母親の受けとめや育児ストレスに与える影響

大内善広1, 野澤義隆2, 萩原康仁3 (1.城西国際大学, 2.立正大学, 3.国立教育政策研究所)

Keywords:育児ストレス, 指示的・受容的関わり, マルチレベルモデリング

目 的
本研究では,正規雇用の就労形態で働く母親に着目し,保育士の母親への指示的・受容的な関わり方が母親にどのように受けとめられ,その結果,育児ストレスにどのような影響を与えるのかを検討する。その際,配偶者のサポートを調整変数として加え,育児ストレスがマルトリートメントにどのように影響するのかも同時に検討する。
方 法
調査方法 調査は2013年7月から8月にかけてT県内の保育所を対象に行われた。各保育所の以上児クラスと未満児クラスの1クラスずつを対象に母親および保育士に対して質問紙の配布・回収した。104箇所の保育所より母親2883件,保育士630件データが得られた。そのうち,正規雇用で働いている母親1237名のデータを使用した。
調査項目 全て5件法にて回答を求めた。
1.母親:配偶者からのサポート(配偶者の育児への協力状況について;2項目),指示的関わりの受けとめ(2項目;保育士が母親に望ましい育児をするよう指導していると受けとめているか),受容的関わりの受けとめ(保育士が母親に様々な育児のあり方を肯定していると受けとめているか;2項目),育児ストレス(負担感,時間のなさ,不安感;それぞれ3項目),マルトリートメント(子どもへの不適切な関わりをしてしまっているか;3項目)を質問した。
2.保育士:指示的関わり(母親に望ましい育児をするよう指導しているか;2項目),受容的関わり(母親に様々な育児のあり方を肯定しているか;2項目)を質問した。
結果と考察
Figure 1のモデルで,以上児クラスと未満児クラスの2つの母集団を想定したマルチレベルモデリングによる分析を行った。適合度を上げるため,適宜モデルに制約を加えた結果,最終的なモデルの適合度は,CFI=.900,RMSEA=.035であった。なお,今回の分析ではbetweenレベルで当初想定していたパスは全て有意ではなかったため,今回の報告ではwithinレベルの結果を報告する。
未満児クラスでは,保育士の指示的関わりが母親の指示的関わりの受けとめに正の影響(p<.10)が見られた。次に,育児ストレスへの影響については,指示的関わりの受けとめが時間のなさに負の影響(p<.10)が見られた。受容的関わりの受けとめが時間のなさに正の影響(p<.10),負担感に負の影響(p<.05)が見られた。時間のなさは負担感と不安感にそれぞれ正の影響(p<.05),配偶者サポートは時間のなさ,負担感,不安感全てに負の影響(p<.05)を与えていた。また,マルトリートメントに対して,負担感(p<.10)と不安感(p<.05)は正の影響,配偶者サポートは負の影響(p<.05)を与えていた。
以上児クラスでは,保育士の関わりの母親の受けとめに対する影響に有意なものは見られなかった。次に,育児ストレスへの影響については,負担感,時間のなさ,不安感に対して,指示的関わりの受けとめはそれぞれ負の影響(p<.05),受容的関わりの受けとめはそれぞれ正の影響(p<.05)が見られた。また,時間のなさは,負担感と不安感に対してそれぞれ正の影響(p<.05),配偶者サポートは時間のなさと負担感に対して負の影響(p<.05)が見られた。また,マルトリートメントに対して,負担感と不安感が正の影響(p<.05)を与えていた。
以上の結果から,保育士の関わりは必ずしも適切に母親に受けとめられていないこと,指示的な関わりと受容的な関わりが子どもの年齢によって影響が異なることが示された。特に指示的な関わりの受けとめは,時間のなさを軽減する一方,以上児クラスにおいて負担感を高める傾向が見られた。また,受容的な関わりの受けとめは,負担感や不安感を軽減する一方,未満児クラスにおいて時間のなさを高める傾向が見られた。