The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 » ポスター発表 PH

ポスター発表 PH

(501)

Sun. Nov 9, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PH100] 関係機関と連携した発達障害のある生徒への支援

水越香奈子1, 鳥居深雪2 (1.神戸大学大学院, 2.神戸大学)

Keywords:発達障害, 連携, 学校

【問題と目的】
平成24年文部科学省の調査によると,公立小中学校の担任教員が回答した内容から,通常の学級において,知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合は6.5%に及ぶ。このような児童・生徒に対しては,生活上で困難が生じた時に,支援に出会えなかった場合,自尊心が低下し,二次障害が生じやすくなる。そのため,学校,家庭,医療,心理の専門家など,児童生徒を取り巻く様々な視点から,早期からの情報収集,連携・サポートが必要とされる。しかし,子どもを外部の専門機関につないだ後のヴィジョンが学校側にないことが多く,また外部の専門機関では子どもとの個別対応が基本であり,集団活動を基本とした学校生活に適応するためのノウハウを専門機関に求めることは難しい(近藤,2013)。そのため,連携をとることに滞りを生じることがある。
当大学院では,授業の一環で,保護者から依頼のあった発達障害をもつ小中高生に対し,その児童生徒の特性に応じた個別・グループでの心理教育的援助を行っている。今回著者が院生として心理教育的援助に関わった,学校生活に適応できず,葛藤を抱えていた生徒に対し,心理相談機関,医療機関,進学先の高校と連携をとり,情報を共有し,ネットワークを構築することができたケースについて報告する。
【概要】
1.主訴
保護者が進学先への情報提供を希望され,他機関から発達障害の中学3年生女生徒の紹介を受けた。
2.アセスメント
WISC-Ⅳを実施した所,全般的な知的発達は平均レベルであったが,WMIが有意に低かった。またインテーク時のやりとりから,二次的な障害をきたしていることがわかり,心理的援助が必要であると判断した。
3.関係機関との連携
心理的援助に重点を置くため,心理相談機関と提携し,生徒が抱える心の問題について情報を提供した。医療機関に対しては,治療の参考としてもらうため,報告書を送付した。進学先へは,①スクールカウンセラーへ関わってもらうこと,②ワーキングメモリーの弱さがあるので,情報を視覚化するなどの配慮をしてほしいこと,③相貌失認があるので,挨拶することが困難である可能性があることについて意見書を送った。その結果,高校では,生徒はスクールカウンセラー,教育相談担当教諭,担任と面接。また,障害特性に配慮し,ノイズキャンセラー使用,板書をアイホンで写真撮影の許可が下り,連絡事項はメールで行われるようになった。当大学院関係者,高校の担任,教育相談担当教諭,スクールカウンセラーとの話し合いを行い,大学院側からは生徒の障害特性,さらにそこから考えられる指導法を,学校側からは生徒の普段の生活の様子について情報交換した。
【考察】
生徒の状態に合わせて心理的援助に重点を置き,心理相談機関を紹介したことは,早期の情緒的安定に繋がったことが考えられる。専門的立場から考えられる指導方法について大学院側から学校に情報提供することで,教師は適切な心理教育的援助を行え,また個別の関わりの中での生徒の姿しか知り得ない大学院側にとっては,学校での集団生活の様子という新たな側面を知ることは,生徒の全体像が浮き彫りになることで,心理教育的援助にもより適切な視点が加えられたことが考えられる。