[PH101] 大学英語教育における協同学習の実践研究(2)
キーワード:協同学習, 創作活動, 読み聞かせ
目 的
発表者はこれまで大学英語教育における協同学習の実践研究をいくつか行ってきたが,それらは主に英語リーディングを中心とした枠組みの中でのものであった。英語文章の読解を中心とする協同学習で学生たちは,自分一人で学習する場合よりも英文の内容的かつ構造的な深い理解にまで達することができたという実感を得て、協同学習そのものに対しても好意的にとらえる様子が示された。英語文章の読解という比較的“静的/受信的”な活動からさらに前進し,グループで何かを創作するというような“動的/発信的”な活動が課された場合,学生たちの協同学習に対する意識はこれまでの発表者が行ってきた実践研究が示唆するものとは異なってくるのだろうか。そこで本研究の目的は,大学英語レベルで好意的に受け入れられる協同学習のバリエーションを広げようという目論見の下,グループでの創作活動がどのような反応を持って迎えられるかを調べることである。
方 法
北海道の国立大学(教員養成系)で教養英語を受講する大学1年生44名に対し,半期の授業のうち5週にわたって,通常のテキストに基づいた授業形式の他に4名単位のグループを中心とした協同学習に取り組ませ,その後アンケート調査を行った。協同学習の内容は以下のとおりである。
【準備段階】1)教材となる絵本2種(John Patrick Norman McHennessy ? the boy who was always late/ by J. BurninghamとThe Teacher from the Black Lagoon/ by M. Thaler)をクラス全体で内容確認を行った。2)これらどちらか一方の絵本について,絵本特有の繰り返し部分にグループで創作した新たなエピソードを挿入し,最終的にはクラス全体の前で創作部分を含む物語全体の読み聞かせを行うという課題が発表され,同時に細かな条件や評価の観点などが伝えられた。
【協同学習】3)グループを決定した後,グループとしてどちらの教材を用いるかを決めて活動を開始した。4)大半の時間は創作部分の作成と最終英文原稿を提出することに費やされたが,読み聞かせ発表時の具体的パフォーマンスの詳細も計画されなくてはならなかった。5)一通りの準備が整った後は,音読練習などは主に各グループの自主活動に任されたが,発表までの毎回の授業内でもグループで読み合わせができる程度の時間が与えられた。
【発表とフィードバック】6)2週にわたって発表会が行われ,自分たちの発表時以外は各グループの発表を評価シートに沿って評価した。これらの評価は教師によってまとめられ,翌週全員に配布された。
アンケート調査は「グループでの準備段階について」「グループ発表本番について」「グループ発表後について」の3部門30項目からなり,主に,活動の各場面での意識を問うものであった(選択肢と自由記述あり)。
結果と考察
以下,今回の協同学習に学生たちがどのような意識を持って臨んだかの概要を,アンケート結果をもとに述べる。「『英語の』グループ活動に苦手意識がある(31.8%)」学生を含む集団が,「グループの話し合いに積極的に参加(84.1%)」し,「自分の英語力のなさを感じ(72.7%)」,「仲間の英語力に『すごい!』と感じ(70.5%)」つつ,自分たちが大変な困難だと思う英語での創作課題(困難だった項目の45.9%を占める)に取り組んだ。仲間の発表の出来よりも,「自分の発表の出来がグループの評価にかかわることを気にしながら(77.3%)」,「自分たちの発表をより良いものにしようという意気込みを持って臨み(86.4%)」,最終的には「自己のグループへの貢献度を認め(68.2%)」,「この活動をやって良かった(70.1%)」と達成感を抱いた。自由記述の回答には,「協力して作り上げていく過程が楽しかった」,「同じ絵本からグループによって全く発想の違う作品が見られて楽しかった」,「一人では英語での創作作業はほぼ不可能だったかもしれない」,「仲間の英語力や音読のうまさに触発され自分も英語学習を頑張ろうと思うようになった」など,課題が難しかった分,グループのありがたみを述べるコメントが多く見られた。その一方,(課題が難しい分)準備のための時間確保に苦慮し,もっと時間があればもっと良い発表ができたのに」という恨みも多々見られたが,これは活動に対する意欲の表れとも解釈できる。以上、大学英語の協同学習の一つのバリエーションとして,よりチャレンジングな活動を与えていくことで今後さらに協同学習の可能性が広がっていくものと考える。
発表者はこれまで大学英語教育における協同学習の実践研究をいくつか行ってきたが,それらは主に英語リーディングを中心とした枠組みの中でのものであった。英語文章の読解を中心とする協同学習で学生たちは,自分一人で学習する場合よりも英文の内容的かつ構造的な深い理解にまで達することができたという実感を得て、協同学習そのものに対しても好意的にとらえる様子が示された。英語文章の読解という比較的“静的/受信的”な活動からさらに前進し,グループで何かを創作するというような“動的/発信的”な活動が課された場合,学生たちの協同学習に対する意識はこれまでの発表者が行ってきた実践研究が示唆するものとは異なってくるのだろうか。そこで本研究の目的は,大学英語レベルで好意的に受け入れられる協同学習のバリエーションを広げようという目論見の下,グループでの創作活動がどのような反応を持って迎えられるかを調べることである。
方 法
北海道の国立大学(教員養成系)で教養英語を受講する大学1年生44名に対し,半期の授業のうち5週にわたって,通常のテキストに基づいた授業形式の他に4名単位のグループを中心とした協同学習に取り組ませ,その後アンケート調査を行った。協同学習の内容は以下のとおりである。
【準備段階】1)教材となる絵本2種(John Patrick Norman McHennessy ? the boy who was always late/ by J. BurninghamとThe Teacher from the Black Lagoon/ by M. Thaler)をクラス全体で内容確認を行った。2)これらどちらか一方の絵本について,絵本特有の繰り返し部分にグループで創作した新たなエピソードを挿入し,最終的にはクラス全体の前で創作部分を含む物語全体の読み聞かせを行うという課題が発表され,同時に細かな条件や評価の観点などが伝えられた。
【協同学習】3)グループを決定した後,グループとしてどちらの教材を用いるかを決めて活動を開始した。4)大半の時間は創作部分の作成と最終英文原稿を提出することに費やされたが,読み聞かせ発表時の具体的パフォーマンスの詳細も計画されなくてはならなかった。5)一通りの準備が整った後は,音読練習などは主に各グループの自主活動に任されたが,発表までの毎回の授業内でもグループで読み合わせができる程度の時間が与えられた。
【発表とフィードバック】6)2週にわたって発表会が行われ,自分たちの発表時以外は各グループの発表を評価シートに沿って評価した。これらの評価は教師によってまとめられ,翌週全員に配布された。
アンケート調査は「グループでの準備段階について」「グループ発表本番について」「グループ発表後について」の3部門30項目からなり,主に,活動の各場面での意識を問うものであった(選択肢と自由記述あり)。
結果と考察
以下,今回の協同学習に学生たちがどのような意識を持って臨んだかの概要を,アンケート結果をもとに述べる。「『英語の』グループ活動に苦手意識がある(31.8%)」学生を含む集団が,「グループの話し合いに積極的に参加(84.1%)」し,「自分の英語力のなさを感じ(72.7%)」,「仲間の英語力に『すごい!』と感じ(70.5%)」つつ,自分たちが大変な困難だと思う英語での創作課題(困難だった項目の45.9%を占める)に取り組んだ。仲間の発表の出来よりも,「自分の発表の出来がグループの評価にかかわることを気にしながら(77.3%)」,「自分たちの発表をより良いものにしようという意気込みを持って臨み(86.4%)」,最終的には「自己のグループへの貢献度を認め(68.2%)」,「この活動をやって良かった(70.1%)」と達成感を抱いた。自由記述の回答には,「協力して作り上げていく過程が楽しかった」,「同じ絵本からグループによって全く発想の違う作品が見られて楽しかった」,「一人では英語での創作作業はほぼ不可能だったかもしれない」,「仲間の英語力や音読のうまさに触発され自分も英語学習を頑張ろうと思うようになった」など,課題が難しかった分,グループのありがたみを述べるコメントが多く見られた。その一方,(課題が難しい分)準備のための時間確保に苦慮し,もっと時間があればもっと良い発表ができたのに」という恨みも多々見られたが,これは活動に対する意欲の表れとも解釈できる。以上、大学英語の協同学習の一つのバリエーションとして,よりチャレンジングな活動を与えていくことで今後さらに協同学習の可能性が広がっていくものと考える。