[PA001] 中学校における環境教育の実践と評価
ライフサイクル思考を取り入れた環境教育の実践
Keywords:中学校, 環境教育, 実践評価
ライフサイクル思考とは,持続可能な社会の構築を目指し,「生産・流通・消費・廃棄」のサイクルから環境問題を捉えようとする考え方である(国立教育政策研究所,2007)。ライフサイクル思考を取り入れた環境教育では,環境問題の解決に向けて,自ら考え行動する人材を育成することを目的としている(本藤ら,2008)。本研究では,中学2年生を対象に実施したライフサイクル思考を取り入れた環境教育の実践について,その有効性を検証することを目的とする。
【実 践】
対象;A中学校2年生5クラス
本実践での環境教育の目的は,緑のカーテンを育てることを通して,生徒の①エコ活動の環境への負荷量の理解(ライフサイクル思考の育成)と,②環境問題について自ら考え行動する態度の育成であった。実践内容は,表1に示すとおりである。
緑のカーテンを育てる苗植えは,クラスの代表者が実施し,苗植えから完成(写真撮影)まで,生徒が水やりを実施した。また,緑のカーテンを撤収する根切もクラス代表者のみが実施した。
授業は学年全体を対象に体育館にて「緑のカーテンから考える本当のエコ」というテーマで大学教員が2コマ(100分)実施した。授業はまず,A中学校での緑のカーテンによる教室の温度変化について実際の観測データを示した。次に,ライフサイクル思考や環境負荷について,エコバックとレジ袋の例や緑のカーテンの実測値から算出したCO2排出量など,科学的データをふまえて生徒に説明した。最後に,「緑のカーテンで効率よくCO2を削減するにはどうしたらよいのか」について,グループで話し合った。授業後の生徒の感想からは,「CO2を削減するのに必要なコストのことも考えなくてはいけない」「緑のカーテンができあがるまでにお金と排出されるCO2の量は多いことを知りびっくりしたけど,プランターやネットなどはまだ使えるので来年も続けていったほうがよい」といった意見が得られた。
【評 価】
本実践の効果を検証するために,授業実践の前後で質問紙調査を実施した。
方法
対象者:中学校2年生146名
実施時期:事前―2014年10月初旬,事後―12月初旬
手続き:以下の項目から構成される質問紙調査を実施した。
⑴ 中学生用批判的思考力尺度(前田ら,2010)
⑵ 学校生活スキル尺度・進路選択スキル(飯田・石隈,2002)
結果(表2)
⑴ 中学生用批判的思考力尺度
先行研究(平山・楠見,2011;前田ら,2010) と同様に,「論理的思考」「探求心」「客観性」「証拠の重視」の因子別に平均得点を算出し,対応のあるt検定を実施したところ,「客観性」のみで有意な結果が得られた(t (145)=2.04,p<.05)。実践前と比べて実践後の得点が有意に高くなっていた。
⑵ 学校生活スキル尺度・進路選択スキル
全12項目を合計し,平均得点を算出し,対応のあるt検定を実施したところ,有意な結果が得られた(t (145)=2.10,p<.05)。実践前と比べて実践後の得点が有意に高くなっていた。
【考 察】
本実践後に,批判的思考力尺度「客観性」,学校生活スキル・進路選択スキルが有意に向上していた。これらの結果から,本実践の効果は見られたといえる。批判的思考力は,ライフサイクル思考を取り入れた環境教育の目的である「環境問題の解決に向けて自ら考え行動する人材の育成」に関連するスキルだと考えられる。環境教育の実践が,生徒の批判的思考スキルや進路選択スキルの向上・維持につながるプログラムや教材の検討が今後の課題である。
【実 践】
対象;A中学校2年生5クラス
本実践での環境教育の目的は,緑のカーテンを育てることを通して,生徒の①エコ活動の環境への負荷量の理解(ライフサイクル思考の育成)と,②環境問題について自ら考え行動する態度の育成であった。実践内容は,表1に示すとおりである。
緑のカーテンを育てる苗植えは,クラスの代表者が実施し,苗植えから完成(写真撮影)まで,生徒が水やりを実施した。また,緑のカーテンを撤収する根切もクラス代表者のみが実施した。
授業は学年全体を対象に体育館にて「緑のカーテンから考える本当のエコ」というテーマで大学教員が2コマ(100分)実施した。授業はまず,A中学校での緑のカーテンによる教室の温度変化について実際の観測データを示した。次に,ライフサイクル思考や環境負荷について,エコバックとレジ袋の例や緑のカーテンの実測値から算出したCO2排出量など,科学的データをふまえて生徒に説明した。最後に,「緑のカーテンで効率よくCO2を削減するにはどうしたらよいのか」について,グループで話し合った。授業後の生徒の感想からは,「CO2を削減するのに必要なコストのことも考えなくてはいけない」「緑のカーテンができあがるまでにお金と排出されるCO2の量は多いことを知りびっくりしたけど,プランターやネットなどはまだ使えるので来年も続けていったほうがよい」といった意見が得られた。
【評 価】
本実践の効果を検証するために,授業実践の前後で質問紙調査を実施した。
方法
対象者:中学校2年生146名
実施時期:事前―2014年10月初旬,事後―12月初旬
手続き:以下の項目から構成される質問紙調査を実施した。
⑴ 中学生用批判的思考力尺度(前田ら,2010)
⑵ 学校生活スキル尺度・進路選択スキル(飯田・石隈,2002)
結果(表2)
⑴ 中学生用批判的思考力尺度
先行研究(平山・楠見,2011;前田ら,2010) と同様に,「論理的思考」「探求心」「客観性」「証拠の重視」の因子別に平均得点を算出し,対応のあるt検定を実施したところ,「客観性」のみで有意な結果が得られた(t (145)=2.04,p<.05)。実践前と比べて実践後の得点が有意に高くなっていた。
⑵ 学校生活スキル尺度・進路選択スキル
全12項目を合計し,平均得点を算出し,対応のあるt検定を実施したところ,有意な結果が得られた(t (145)=2.10,p<.05)。実践前と比べて実践後の得点が有意に高くなっていた。
【考 察】
本実践後に,批判的思考力尺度「客観性」,学校生活スキル・進路選択スキルが有意に向上していた。これらの結果から,本実践の効果は見られたといえる。批判的思考力は,ライフサイクル思考を取り入れた環境教育の目的である「環境問題の解決に向けて自ら考え行動する人材の育成」に関連するスキルだと考えられる。環境教育の実践が,生徒の批判的思考スキルや進路選択スキルの向上・維持につながるプログラムや教材の検討が今後の課題である。